ジャパンナレッジNEWS

辞書に関係あることも ないことも ごった煮でお届けする 公式だけどオフィシャル感のない スタッフブログ的サイト。登録いただければ メールでもお送りします。
ジャパンナレッジ会員ならナレッジサーチャー(ジャパンナレッジ簡易検索)使えます。

行列文化

2011-09-13

夏休み気分もすっかり抜け、朝晩の電車にも活況(?)が戻ってきた。ところでホームで電車を待つ列で、なぜみなピターッとくっついて並ぶのだろうか? あれは気持ち悪い。コンビニでレジに並ぶときも、ピターッである。個人的には、前の人とは最低でも50センチ、できれば80センチくらい離れて並びたい。が、そのような間隔を開けていようものなら、そのすき間めがけて、おばさんが割り込んでくるのである。

そんな行列の「行」の字は、ジャパンナレッジ版「字通」によると十字路の形からできたものらしい。なるほど、意味とイメージが合う感じだ。一方「列」はというと「頭部を切りとった形」だと書いてある。「断首してこれを列すること」を列というんだとか。意外とコワイ字である。「列」の偏部の「夕」が頭の形で、その上の横棒がかつて温泉マークのような形をしていて、頭髪を表しているという。右側の「りっとう」は刀。ちょっとした怪談の趣すらある。

と、もっともらしく書いてきたが、行列といって書きたかったのは、じつはエクセルのことだ。そう、細長いシューの中にクリームが詰まった……それはエクレア。ではなく、エクセルはパソコンで使う表計算ソフト。泣く子も黙るマイクロソフト社の人気ソフトだ。

さて、そのエクセルだが、こんな場面に出くわしたことはないだろうか?

「こちらの表をご覧ください。3行目の……、」「3行目? 縦?横?どっち!?」

ってな具合に、縦と横、どっちが行でどっちが列なのかが混乱するのである。これは、おもにおじさん。確認のために書いておくと、エクセルの場合、行が横で、列が縦である。

このような本題(会議の議事など)と関係ないところでつまづくと、双方わだかまりを持ったまま会議を進めることになり、話の本質に身が入らなくなってしまう。「行と列から説明しなくちゃいけないのかよ、ちぇっ!」「いかん! パソコンがわからない前世紀の人間と思われてしまう!」等々。これ、決しておじさんを責め立てているわけではない。すべてエクセルが悪いのである。

もともと縦書きの日本語では、文章を右から順に数えていくときに「行」を使っていたはず。そこへ、エクセルという黒船がやってきたのである。パソコン普及による横書きの定着と相まって、「行」の概念が混乱。そしてとうとう、「行=横」という正反対の意味になってしまったのだ。

しかしながら、電車や飛行機の席番号となるとどうだろうか? たとえば17Eならば普通、17列目のE席と読むだろうから、ここでは列を横として認識しているといえる。武道館などの会場の席番号も、やはり列は横らしい。

ここはぜひエクセルのヘルプに、いやワークシートのすぐ近くに「こっちが行」「こっちが列」という表示をしてもらいたいものだ。

2011-09-13 written by テツマザキ
会議といえば、テツマザキは一時期「ホワイトボード恐怖症」に陥ったことがあります。そう、漢字間違いを指摘されるからです! いかにして難しい漢字を書かなくて済むように話を進めるとは、これぞ究極の本末転倒。