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夏休み気分もすっかり抜け、朝晩の電車にも活況(?)が戻ってきた。ところでホームで電車を待つ列で、なぜみなピターッとくっついて並ぶのだろうか? あれは気持ち悪い。コンビニでレジに並ぶときも、ピターッである。個人的には、前の人とは最低でも50センチ、できれば80センチくらい離れて並びたい。が、そのような間隔を開けていようものなら、そのすき間めがけて、おばさんが割り込んでくるのである。
そんな行列の「行」の字は、ジャパンナレッジ版「字通」によると十字路の形からできたものらしい。なるほど、意味とイメージが合う感じだ。一方「列」はというと「頭部を切りとった形」だと書いてある。「断首してこれを列すること」を列というんだとか。意外とコワイ字である。「列」の偏部の「夕」が頭の形で、その上の横棒がかつて温泉マークのような形をしていて、頭髪を表しているという。右側の「りっとう」は刀。ちょっとした怪談の趣すらある。
と、もっともらしく書いてきたが、行列といって書きたかったのは、じつはエクセルのことだ。そう、細長いシューの中にクリームが詰まった……それはエクレア。ではなく、エクセルはパソコンで使う表計算ソフト。泣く子も黙るマイクロソフト社の人気ソフトだ。
さて、そのエクセルだが、こんな場面に出くわしたことはないだろうか?
「こちらの表をご覧ください。3行目の……、」「3行目? 縦?横?どっち!?」
ってな具合に、縦と横、どっちが行でどっちが列なのかが混乱するのである。これは、おもにおじさん。確認のために書いておくと、エクセルの場合、行が横で、列が縦である。
このような本題(会議の議事など)と関係ないところでつまづくと、双方わだかまりを持ったまま会議を進めることになり、話の本質に身が入らなくなってしまう。「行と列から説明しなくちゃいけないのかよ、ちぇっ!」「いかん! パソコンがわからない前世紀の人間と思われてしまう!」等々。これ、決しておじさんを責め立てているわけではない。すべてエクセルが悪いのである。
もともと縦書きの日本語では、文章を右から順に数えていくときに「行」を使っていたはず。そこへ、エクセルという黒船がやってきたのである。パソコン普及による横書きの定着と相まって、「行」の概念が混乱。そしてとうとう、「行=横」という正反対の意味になってしまったのだ。
しかしながら、電車や飛行機の席番号となるとどうだろうか? たとえば17Eならば普通、17列目のE席と読むだろうから、ここでは列を横として認識しているといえる。武道館などの会場の席番号も、やはり列は横らしい。
ここはぜひエクセルのヘルプに、いやワークシートのすぐ近くに「こっちが行」「こっちが列」という表示をしてもらいたいものだ。