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おいしいパンの正体

2014-11-12

先日同僚と飲んでいたとき耳栓で盛り上がった。昔の耳栓というものは見たことないのだが、いまどきの耳栓は優秀だ。

人先指の第一関節から先ほどの大きさで銃弾(これまた実物は見たことない)のような形をしたウレタン製。つまむとブニョブニョしている。装着するときは3分の1ほどの細さにまで潰して素早く耳の穴に押し込む。耳の中でウレタンが元の大きさに戻ろうとして耳の穴にフィットするという寸法だ。

潰してから耳の穴に入れるまでにちょっとしたコツがいる。ウレタンの先がそこそこ奥まで入らないと、膨れる勢いで耳から飛び出してしまうのだ。あるいは飛び出さないまでも半身ほどが出っ張り、見た目(見たことないが)もさることながら、その遮音性能が大きく低下する。

そんな耳栓に最近強敵が現れた。パン焼き器である。ホームベーカリーといったほうが通りがいいのだろうか。いずれにせよ炊飯器のパン版ぐらいだろうとたかをくくっていた。夜のうちに材料を入れ、仕上がり時間をセットすれば、朝には香ばしいできたてパンが……。

それは丑三つ時。モーター音が唸りはじめた。けっこうな音量である。洗濯機のそれをくぐもらせたような音質だ。それもそのはず、まずは材料を捏ねているからだ。鍋底にある一本羽根を使い、粘り気のある材料を力強く捏ねている。20分ほど経ったところで捏ねが終わる。が、しばらくすると2回目がはじまった。1回目より周期が長い。

毎晩こいつが動くとなると、なにか対策を考えなければならない。そこで登場するのが耳栓というわけだ。普段は気分転換程度にしか使っていないのだが、今回は真剣勝負。念入りに潰したウレタン弾をすばやく耳に詰める。運が良ければ捏ねの前に熟睡に入れるかもしれないなどと考えていると……。

聞き覚えのある周期的な唸り音が遠くのほうで聞こえる。耳を澄まして音を探すような、少し気をそらすと聞こえなくなるような音だ。体感的には90%程度削減されたように感じる。これならなんとか眠れそう。予備の耳栓を買っておかないと。予想以上の静寂のなか、眠りについた。

2014-11-12 written by テツマザキ
できたパンはおいしいんですよ。パンに罪はありません。念のため。史上初連投のテツマザキがお送りしました。