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ALSの夫からの贈りもの

2018-02-08

2017年7月に閉店するまでよく利用させてもらった神保町の大衆割烹「なにわ」は、昭和51年に開店した地元の老舗。僕なんぞは常連さんの末席を汚す程度だが、一度朗読会を企画させてもらったこともあり、女将さんとも仲良くさせてもらっていた。

その女将さんから、本を書いたという案内が届いた。

本のタイトルは『ALSの夫からの贈りもの』。ご主人を亡くしてから、女手ひとつで切り盛りしていることは知っていたが、詳しい事情は知らなかった。

ALS(筋萎縮性側索硬化症)は、アイス・バケツ・チャレンジで知る人も多くなったかと思うが(僕もそのクチ)、神経が侵されることで筋肉が徐々に衰え動かなくなる、治療法が確立していない病気である。

そのALSを発症したご主人の闘病記、と想像できるタイトルだが、内容としては闘病記が第一章となっている。

こう言っては失礼だが、お店では従業員に怒られるくらいいつもお客さんと談笑する、聡明で、好奇心のつよい、かわいらしい、あの女将さんがすごい! 文章じょうず!というのが第一印象。 ご主人とのやり取りはまるで、昨今人気の胸キュンドラマよりも甘い甘いラブストーリーのよう。

闘病中はまだ、親しくさせていただくほど通ってはいなかったが、そんなことよりも、ご主人のケアで一杯一杯だったことがよくわかった。

第二章は「なにわ」の歴史。さまざまな常連さんが紹介されたり、東日本大震災時のできごとなどは書かれているのだが、そんなにもラブラブなご主人との出会いなど、なにか肝心な部分が抜けているような印象がある。その穴を埋めるように、第三章に女将さん自身の半生が描かれる。

ネタバレになりますから書きませんが、一言でいえば「ザ・波乱万丈」。繰り返しになりますが、あの女将さんがぁ!!です。 幼少期の事件を乗り越え、楽しい学生時代を過ごすと思いきや、いきおいで上京したあとの過酷な生活、そしてご主人との出会い...。

というわけで、ご興味のある方は、出版元の敬文舎 電話03-6302-0699 までお問い合わせを。

2018-02-08 written by テツマザキ
「なにわ」の女将さん、じつは現在お店を再開できないかと店舗さがしに奔走中。神保町で新装開店のあかつきには、ぜひご贔屓くださいませ。