「おとふ(豆腐)」がおいしい京都は、むろん「おあげ(油揚げ)」もおいしい。いろんなうどんや丼物、甘味などを提供する食事処では、豆腐店で特別に厚めに揚げてもらった「おあげ」を仕入れている店が多く、「おあげ」に出汁やカレーを吸わせたり、煮込んで「甘きつね」に仕上げたりして、じゅわっと肉感のある「おあげ」を献立の主役として扱っている。

 そのような「おあげ」自慢の京都で発祥した、といわれる独特の丼物が「衣笠丼」である。やや甘味を付けて炊いた「おあげ」を短冊に切り、刻んだ九条ねぎをたっぷり載せて卵でとじ、どんぶり飯のうえに載せてある。丼といえば、関西人は卵とじが本当に大好きで、一般的な親子丼やカツ丼をはじめ、薄く切った蒲鉾と九条ねぎを卵でとじた「木の葉丼」、出汁で溶いた卵だけの玉子丼などと種類が多い。どの丼にも、山椒をたっぷりかけて食べるが特徴だ。そういえば、卓上に用意されている薬味や調味料には、七味唐辛子ではなく、山椒だけが常備されている店も少なくないはずだ。

 「おあげ」とネギに卵が絡み合っている「衣笠丼」。一風変わった「衣笠」という名称は、こんもりとして淡い黄色の色合いが、衣笠山(北区)に由来する、といわれている。衣笠山とは、麓に金閣寺(北区)と龍安寺(右京区)などの名所旧跡を抱える標高202メートルほどの小山で、そのほとんどは松の木に覆われている。山の名は、平安期(899年)に出家して仁和寺に入った宇多法皇が、真夏の雪見を思い立ち、山全体に素絹(そけん、練っていない絹織物)をかけたという伝説に由来し、「絹笠山」や「衣掛山」とも呼ばれている。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 9月16日(土曜日)発売の『週刊ポスト』(9/29号、以下『ポスト』)は、巻頭に「安倍『火事場泥棒10・22解散総選挙』へ!」と報じた。

 大メディアが臨時国会冒頭解散を報じたのは17日になってからである。締め切りを考えれば、『ポスト』のこの特集はスクープと言ってもいいだろう。

 『ポスト』によれば、9月10日夜、麻生太郎は渋谷区神山町の自宅からすぐ近くの富ヶ谷にある安倍晋三の私邸を訪れたという。

 麻生を安倍のところへ走らせたのは、民進党の山尾志桜里(しおり)の不倫報道による離党であった。

 「これで麻生氏の目の色が変わった」(『ポスト』)という。

 民進党は離党者が続出してこれからもっとボロボロの状態になっていく。

 「麻生さんは絶好のチャンスと判断して『今なら勝てる』と総理に早期の解散・総選挙を強く進言したのです」(麻生氏側近)

 だが、危機管理の責任者である菅官房長官は、北朝鮮情勢が緊迫している時に解散するべきではないと反対していたという。

 11月にはトランプ米大統領が来日するといわれている。そんなタイトなスケジュールの中で解散・総選挙はするべきではない。

 そんな菅の考えを知っている麻生は、菅のいない安倍の私邸に押しかけたのである。

 安倍にも解散をためらう大きな理由があった。憲法改正をやりたいのだが、解散すれば改憲発議に必要な現有3分の1以上の勢力を失うリスクがあるからだ。

 麻生ら解散推進派が説得材料に使っていたのは、安倍の大叔父・佐藤栄作がやった「『黒い霧』解散」(66年)だという。

 自民党議員がからんだ贈収賄事件や国有地売却の不透明な取引が相次ぎ、「黒い霧」だと批判を浴びた。

 そこで佐藤首相は、綱紀粛正を発表すると、意表を突いて66年12月の国会冒頭で解散に踏み切ったのである。

 苦戦が予想されたが、自民党はほとんど議席を減らさなかった。落選中だった安倍の父・安倍晋太郎もこの選挙で返り咲いた。

 中曽根の「死んだふり解散」、小泉純一郎の「郵政解散」など、佐藤以外にも突然解散したケースはあるが、そのいずれも自民党が勝っているというデータもある。

 そうした入れ知恵に、優柔不断な安倍の心は揺れ動いた。そして、決断したらしい。

 安倍ポチ新聞といわれる産経新聞と読売新聞がともに社説でこう書いた。

 「安倍晋三首相は、北朝鮮危機の下で、衆院を解散する道を選択した」(産経、9月20日付)「安倍晋三首相が、衆院解散・総選挙に踏み切る意向を固めた。『10月10日公示-22日投開票』の日程を軸に調整している」(読売、9月19日付)

 だが、朝日新聞(9月20付)が社説で言っているように、

 「安倍首相による、安倍首相のための、大義なき解散である。(中略)
 重ねて記す。野党は6月、憲法53条に基づく正当な手続きを踏んで、臨時国会の早期召集を要求した。これを3か月以上もたなざらしにした揚げ句、やっと迎えるはずだった国会論戦の場を消し去ってしまう。
 まさに国会軽視である。そればかりか、憲法をないがしろにする行為でもある」

 自民党の中からも少なからず、大義がない、改憲のための論議が尽くされていない、北朝鮮危機がどうなるかわからないのに政治空白をつくっていいのか、などの批判の声が出て、日増しに大きくなっている。

 また、連立与党の公明党は、憲法改正、特に9条の改正には慎重な姿勢を表明しているのである。

 総選挙をやれば現有勢力から減るのは100%間違いない。

 一部報道では、安倍はトランプから、北朝鮮危機が本格化するのは来年だと聞いているから、その前にやってしまえと決断したという。

 だが、それが本当なら、国民にその根拠を明らかにすべきこと、いうまでもない。

 アメリカや日本、韓国の動きを注視している北朝鮮が、日本の政治空白の隙を突いて何かを仕掛けてくることは十分に考えられる。なぜそのような危険な「賭け」をする必要があるのだろう。

 森友・加計学園問題で下がった支持率が、内閣改造以来少し上向いているからだという、いい加減な根拠を上げる評論家もいる。

 その理由は簡単だ。国会を閉会して3か月以上、野党の国会開会要求にも応えず、逃げ回っていたからである。

 しかも加計学園問題で開かれた7月24日の閉会中審査で、大串博志(ひろし)民進党議員の質疑に対して「(加計学園のことは)申請が正式に認められた国家戦略特区の諮問会議、2017年1月20日に初めて知った」と致命的な失言をしてしまったのである。

 そのうえ、腹心の友の加計孝太郎理事長とは16年中も何度もゴルフや食事をして、おごられたりおごったりしていたと「白状」したのである。

 コメンテーターの中には、加計学園問題は犯罪ではないのだから、そこまで首相を追い詰める必要はないというバカな輩がいる。

 一国の宰相が、一私大のために便宜供与したという重大な疑惑があるのだ。しかも安倍は、「森友や加計学園問題にもし、私や妻が関わっていたら辞職する」とまで言い切っているのだ。

 この問題でこれ以上追及されれば、安倍は総理の座も危うい、そう考えたに違いない。

 安倍はこの件についての「うしろめたさ」、否、「総理の犯罪」を構成する何かがあるから怯えているのだ。

 そう考えなくては、3か月以上の政治空白の末、なおも2か月近く国会を開かず、有権者への丁寧な説明もせず、ひたすら時間稼ぎする理由が全く理解できない。

 8月29日にビジネス情報誌『エルネオス』で、自由党の森ゆうこと対談した。森は、加計学園問題は贈収賄事件に発展するかもしれないと言っている。

 「森 安倍さんはもはや権力の作法というのを忘れてしまっている。権力を長期にわたって持ち続け、しかも野党が弱いという状況の中で、自制をしなければいけないというようなことを、もう忘れてしまっていますよ。
 野党をバカにして、何でも自分の思い通りになると思ったから、危機感がなく加計孝太郎さんと去年も、頻繁に会って飲み食いしていた。
 しょせん野党は追及できないだろうし、マスコミも俺の言いなりだという思い上がりがあったと思います。(中略)
 (加計学園問題では=筆者注)設計書の話が出てきて、坪単価一五〇万円という法外な値段になっていることが明らかになりました。
 資金計画を出した銀行の分析によると、あの土地は坪単価八〇万円ぐらいなんです。森友学園補助金詐欺事件(籠池理事長夫妻が逮捕)と同じように、補助金を高く取るために不正に水増ししたんじゃないかという話になってきています。

元木 加計孝太郎理事長と何度も食事やゴルフをして、奢られる時もあると答弁しましたね。

森 あれはしまったと思っているんじゃないかな。しょっちゅう奢り奢られていて、それが何の問題もないと思って答弁している。そんなことを国会で言ってはいけない話ですよ。
 それに加計さんは、複数のマスコミに対して、安倍さんには一億使ったと豪語していたそうです。そうなると贈収賄事件にまで発展する可能性があります。

元木 そうやってウソが次々にばれて、つじつま合わせに加計学園が特区に申請しているのを知ったのは1月20日だったという問題発言をしてしまった。

森 あれは命とりでしたね。それ以外にも総辞職すべき理由は山ほどあるんです。中でも稲田(朋美前防衛大臣)さんの問題は決定的でしたけど、国会閉会中で野党は追い込めなかった。

元木 加計学園問題で辞任に追い込めますか。

森 私たちは諦めない。(中略)本人もそうとう焦っていると思います。あの閉会中審査の七月二十五日の安倍総理は、完全に混乱していましたからね。
 現在、北朝鮮の脅威が増していることは確かです。だったら防衛大臣を早く代えて対応すればいいのに、加計問題や森友問題から国民の目をそらそうとしていると思われてしまいますよ」

 今度の衆院選は、安倍の森友・加計学園についての説明責任を有権者が求める選挙にしなければいけない。

 メディアは、野党の足並みがそろわない、自民党に代わる受け皿がない、したがって安倍自民は負けようがないと無責任に報じるが、私はそうは思わない。

 森友・加計学園問題もある、稲田朋美の防衛相辞任の追及もうやむや、アベノミクスも失敗と、戦争のできる国にしてしまった以外に安倍は何をしたのか。

 特に、年金、医療、介護費の引き上げで「下流老人」や「破産老人」が増えている。高齢者の怒りが爆発寸前である。

 安倍自民だけは心から嫌だ。投票する理由はそれだけでいい。

 今度の解散は「バカヤロー解散」である。だが、吉田茂の時とは真逆である。今回は安倍首相に国民から「バカヤロー」と大声を上げる選挙なのだ。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 今週は『ポスト』の政府や役人の年金謀略政策や小泉進次郎批判がさえている。この国は、政治屋やシロアリ役人どもの失敗のツケを、高齢者から搾取することで穴埋めしようと考えているに違いない。だがこれを見逃せば、これから年寄りになる若い世代にもしわ寄せがいくこと間違いない。豊かな老後など夢のまた夢。ひどい国である。

第1位 「拝啓 小泉進次郎殿『年金を正当に受け取ることは、そんなに悪いことですか?』」(『週刊ポスト』9/29号)/「この秋から『年金受給者狩り』が始まる」(『週刊ポスト』9/29号)
第2位 「次は『佳子さま』お婿さん情報の暗雲」(『週刊新潮』9/21号)
第3位 「JAL機体の3割は『中国の工場』で整備されていた」(『週刊ポスト』9/29号)

 第3位。このところ航空機の「間一髪」、事故寸前という事態が多いようである。
 ひとつは今月5日のJAL機エンジン火災事故であった。午前11時過ぎに羽田空港を離陸したJAL6便が、2つある主翼エンジンの1つから出火し、約1時間後羽田に緊急着陸したのだ。
 エンジン内部では、タービンにある222枚もの羽が破損していた。
 国土交通省の担当記者がこう振り返る。

 「国土交通省は翌日、《発動機の破損に準じる事態》として重大インシデントに認定しました。つまりは乗員・乗客248人とともに『墜落の危機にあった』といっているに等しい」

 『ポスト』は、そうした深刻な「整備不良」は、中国の下請け企業に任せているからではないかと危惧している。

 「とりわけ日本や米国の航空会社からの需要を取り込んで急速に規模を拡大してきたのが、中国福建省に本社を置く『TAECO社』とシンガポールの『SASCO社』という2社の整備専門会社(MRO企業)だ」

 ここでは1年に一度行なわれる「C整備」と呼ばれる比較的軽度なメンテナンスと、もうひとつは約5年に一度行なう「M整備」は「飛行機の人間ドック」と呼ばれ、点検・整備は広範囲に及ぶという。

 「日本航空乗員組合」の『乗員速報』(06年10月8日号)には、機体トラブルが続いたことを問題視、後の『乗員速報』では、07年だけで実に10件もの『TAECO社』がらみの不具合が発生したことが大きく取り上げられているそうである。
 海外MRO企業への委託はANAでも同様に行なわれており、やはり整備ミスが発生している。
 09年にANAで起きたトラブルは、国土交通省から異例の厳重注意が下った。同社保有の3機で、非常用酸素マスクの一部が落下しない状態のまま、2600回も飛行していたことが発覚したのである。
 整備を担当したのはシンガポールの『SASCO社』。
 海外MRO企業への整備委託が3割程度(16年は約5割)ある。
 それに気がかりなのは、工場の整備資格を認定している国交省が「整備は各社が責任を持って行なうもの」というスタンスでいることだと『ポスト』は指摘している。

 「個別の機材の整備履歴を当局が把握する仕組みにはなっていません。したがって、海外の整備に伴うトラブル事例がどれだけあるかといわれても、そのような記録は持ち合わせていないのです」(航空事業安全室)

 これで空の安全を守れるのか? そう言いたくなるのはもっともだろう。

 第2位。「佳子さまお婿さん情報」と言うから、新潮砲が大スクープかと思って読んだら、話の中心はそこではなかった。
 以前から流れているが、先日短期留学でイギリスへ旅立った佳子さんの「恋人」は、富士急行・堀内光一郎代表取締役、妻は堀内詔子(のりこ)自民党代議士の息子・堀内基光ではないかといわれている。
 申し分ない家柄で、基光も中学時代まで学習院にいて、高校から慶應に転じ、法学部を卒業後みずほ銀行に入行している。
 基光は学習院時代に眞子さんと同級生で、その縁で佳子さんと知り合ったのではないかと言われているようだ。
 だが、2人が交際しているという話が出たため、「基光くんの両親が当時の(林信秀)頭取に相談し、行員が1200人もいて東南アジアのハブ的な存在であるシンガポール支店へ異動させることになったと聞きました」(慶應の関係者)
 表向きは、みずほに入った慶應の同級生と交際中ということになっているという。
 だが、『新潮』の問いかけに、母親の詔子代議士は「いや、あの~。私はないと、思って……ないです」
 父親の光一郎社長も「私が知っているかぎり佳子さまには一度もお目にかかったことはないし、本人もそのように言っています」と、なにやら密会がばれた芸能人か、政治家の答弁のようである。
 話はここから変わる。富士急行が山梨県から借りている広大な山中湖畔の土地が、原野として借りているため法外に安いが、別荘地として再評価すべきだと住民監査請求が出されている話になる。
 もしそれが認められると、莫大な借地代になり、富士急行の屋台骨を揺るがしかねない。そうなると2人の交際に暗雲が立ち込めるという、風が吹けば桶屋が儲かる式の記事作りである。
 アイドルをしのぐ人気のある佳子さんだから、致し方ないのかもしれないが。

 第1位。安倍首相は、自分の森友・加計学園問題を追及されるのが余程イヤだと見える。
 それが臨時国会冒頭解散をする理由だと、有権者の大半が見抜いているため、安倍の思うとおりに選挙結果が出るとは到底思えない。
 だがもっとけしからんのは、『ポスト』が毎号追及している高齢者搾取の汚いやり方である。
 こうした追及が他誌でも始まれば、高齢者の圧倒的多数が反安倍晋三で結集するはずだ。『ポスト』がんばれ!
 『ポスト』によれば、宮沢洋一・自民党税制調査会長は新聞各社のインタビューに、「高額な年金をもらっている人に今と同じ控除をする必要があるか」(日経新聞、9月8日付)という暴言を吐いたというのである。
 最大の問題は、ここでいう「高額な年金をもらっている」とは誰のことかということであり、年金の少ない高齢者からも、控除を縮小してしまえというのだからとんでもないことである。
 『ポスト』によると、年金月額15万円、年間180万円の65歳以上の高齢者の場合、公的年金等控除が廃止されれば、所得税・住民税が合わせて年間18万円もの増税になるという。
 そのうえ、国民健康保険料や介護保険料も月に数千円アップする。これまでは年金収入が約200万円までなら実質非課税だったのにである。
 こんな政権がこのまま続けば、高齢者は死に絶える。
 日弁連の調査(14年)によると、自己破産者に占める70歳以上の割合は05年の3.05%から急増し、全体の8.63%を占めるまでに至っている。
 みずほ中央法律事務所の代表・三平聡史弁護士がこう言う。

 「70代の高齢者から“自己破産を申請しようと悩んでいる”という相談が数多く寄せられています。自己破産の全相談件数の1割は70代という印象です。“定年後に収入が激減したのに現役時代と同じ生活レベルを維持しようとして年金も貯蓄も使い果たしてしまった”という相談が非常に多い」

 今年6月時点で164万519の生活保護世帯のうち、65歳以上の世帯はその過半数を占め、過去最多を更新したという。
 日本総合研究所の星貴子・調査部副主任研究員が今年5月に発表した論文は、収入が生活保護水準を下回ったり、預貯金を切り崩しても生活保護水準が維持できない「生活困窮高齢者世帯」は、その予備軍も合わせて2020年には531万世帯に、2035年には562万世帯に上ると予測している。
 これは実に高齢者世帯全体の27.8%に及ぶ数字である。この数字は、高齢者は年金をもらい過ぎだという政府の主張と大きな乖離があると経済ジャーナリストの荻原博子が言う。
 まさに「国家的犯罪」である。
 そうした事実を知ってか知らずか、小泉進次郎という議員は、年金を返上して、子育てや若いやつらの起業資金に充てようと主張している。
 これに『ポスト』が噛みついた。
 年金だけではない。安倍政権になって後期高齢者医療制度の窓口負担や医療費が上がり、一定額を超えた場合に患者の負担が軽減される「高額療養費制度」の限度額が引き上げられ、介護保険料もどんどん引き上げられているのだ。

 「新しい『高齢社会対策大綱』には、高齢者が老後のために守ってきた退職金や貯金など虎の子の個人金融資産1000兆円を、若い世代の『起業資金』に使わせようという仕組み作りまで検討されている。
 どこまで高齢者のカネをあてにするのか」(『ポスト』)

 そこで『ポスト』は小泉進次郎あてに手紙を書く。

 「拝啓 小泉進次郎殿
 改めて、やはり親子だな、と思いました。
 『年金はこの先、100年安心だ』と断言した貴殿の父上、小泉純一郎・総理が、年金法大改正を実行したのは2004年のことです。その時の約束はこういうものでした。
〈年金保険料は2017年まで毎年上げ続ける。支給額はカットする。その代わり、100年安心の制度にする〉
 約束通りなら私たち国民にとって今年は、ようやく保険料アップの時代が終わり、額は減ったにせよ、安心して年金を受け取れる『元年』になるはずでした。
 ところが、今度は息子の進次郎殿がいきなり、『年金を返上してもらおう』と言い出したのですから、心の底から驚きました──」

 年金を自主的に返上する仕組みなどどこにあるのか? 『ポスト』がそこで調べてみると、日本年金機構のホームページから、「老齢・障害・遺族給付支給停止申出書」という書類がダウンロードできることがわかる。これが《年金返上届》だという。

 「進次郎殿、驚きました。
 全くといっていいほど存在を知られていない、この年金返上制度の創設が決まったのは、04年の年金大改正の時でした(施行は07年)。父親が総理の時にひっそりと仕組みを作っておいて、10年以上経ってから息子が、“せっかく仕組みがあるのだから、活用しよう”と言い出したわけですね──。

 進次郎殿
 働く高齢者には、収入が多くなると自動的に年金をカットされる『在職支給停止』の制度があります。いってみれば、今でも強制的に年金を“返上”させられているのです。毎年、125万人から総額約1兆円が召し上げられています。
 70歳以上への『在職支給停止』の適用が決まったのは、お父上による04年の年金法大改正の時のことです。
 親子して、どれだけ国民から年金を奪うつもりなのでしょうか──。   敬具」

 『ポスト』万歳である。今のように世の中が悪くなったのは小泉純一郎時代からであり、それをもっと悪くしたのが安倍晋三である。
 このことだけはしっかり頭の中に叩きこんでおこうではないか!
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 2020年東京オリンピックがいよいよ近付いてきた。その前に、来年は韓国での平昌(ピョンチャン)冬季オリンピックを控えている。が、計画の遅れなどが報道され、どうもマイナスのニュアンスでとらえられることも多い。加えて北朝鮮情勢も厄介になってきた。2022年には北京でも冬季五輪が開催される。韓・日・中という五輪アジアリレーの先陣を切る韓国、その成否がアジア全体に及ぼす影響は大きいのだが。

 そんな平昌大会のマスコットキャラクターが、白虎の「スホラン」。白虎は現地では「守護」の象徴とされている。名前の「スホ」もその意味だ。加えて、トラを意味する「ホランイ」、開催自治体の江原道(カンウォンド)民謡「旌善(チョンソン)アリラン」から来た名前を持つ。そのデザインは、筆者の主観では、小つぶな目の癒やし系といった愛らしさがある。パラリンピックのマスコットであるツキノワグマの「バンダビ」とともに、五輪を盛り上げる……はずだった。

 古くはロス五輪の「イーグルサム」など、毎回、それなりに話題を集める五輪のマスコット。だが、今回は心なしかマスコミへの露出が少ないように思える。情報が少ないが、スホランを巡って組織内での協議が遅れ、この期に及んでも立ちゆかなくなっているらしい。ここはキャラクター活用をゴリゴリと推し進めるべきタイミングで、運営面での熱意のなさが残念といえよう。不安は大きいが、いまからの盛り上げに期待したいところだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 9月3日、北朝鮮による核実験を受け、広島平和記念資料館(原爆資料館)に設置されている「地球平和監視時計」がリセットされた。

 地球平和監視時計は、原爆による悲劇を知ってもなお、繰り返される核実験の実施を牽制するために、NPO法人「広島からの地球平和監視を考える会」が建立したもので、2001年8月6日から時を刻み始めた。

 設計者は広島市出身の彫刻家・岡本敦夫氏で、時計は高さ3.1m、幅0.8m、奥行き0.4mの御影石で作られている。その細長い形状の最上段には現在の時刻を示す丸い時計があり、その下に2つのデジタル表示板がある。いちばん下にあるのは縦に15個並んだ歯車装置で、このまま核を保有し続ければ人類が破滅への道に突き進むことを暗示的に警告している。

 デジタル表示板の上段は、「広島への原爆投下からの日数」。下段は「最後の核実験からの日数」が表示されており、新たな核実験が行なわれるたびにゼロにリセットされる。

 「最後の核実験からの日数」のデジタル表示は、2016年9月9日の北朝鮮の核実験から359日を刻んでいたが、2017年9月3日に原爆資料館の志賀賢治館長の手でゼロにリセットされた。

 地球平和監視時計がリセットされるのは、2001年に設置されてから24回目(本館リニューアル工事で操作できなかった2回を含む)。世界が、なかなか核廃絶への道に歩みだせない現実を突きつけている。

 北朝鮮に対して、国際社会は再三にわたり、核やミサイル開発の中止を求めている。しかし、金正恩(キム・ジョンウン)体制の維持をかけている北朝鮮は、制止をふりきって今回の核実験も強行した。

 制止のきかない一党独裁体制の北朝鮮が核を保有することは、世界にとって脅威であることは間違いない。国際社会は、今後も北朝鮮の核・ミサイル開発を止めるための努力をしていかなければならない。

 だが、核兵器を保有しているのは北朝鮮だけではない。アメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国の5大国のほか、インド、パキスタンも保有を表明している(イスラエルは正式表明していないが、保有国とみなされている)。

 自らも核を保有しているのに、北朝鮮の核保有を認めないというのは道理が通らない。アメリカの核の傘の下にいる日本も同様だ。北朝鮮の核開発を止めるためには、これらの国々が核を手放すための勇気ある一歩を踏み出すことが必要だ。誰かが、その一歩を踏み出さなければ、核なき世界は永遠にやってこない。

 地球平和監視時計の下層に縦に並んだ歯車は、一番上の歯車の回転数(毎分100回転)が、核を手放せない地球の危機的状況の深刻化によって回転が早まり、固定されている一番下の歯車に達したときに、装置そのものが自壊するという発想で作られている。

 今後も「最後の核実験からの日数」がリセットされ続ければ、地球平和監視時計の歯車が暗示する世界が現実のものにはならないとも限らない。歯車の回転を止めるために、今こそ勇気ある一歩を踏み出したい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 「もったいない」という美しい日本語を、いま一度思い返したい。農水省によると、平成27年度の食品の食べ残し量は、食堂・レストランが3.6%であるのに対し、宴会では14.2%にも及ぶ(調査範囲は東京・大阪)。我々は、宴会のあとに料理が放っておかれた光景を、あまりに見慣れてしまったのではないだろうか。

 しかし、上司にお酌したり、会社の愚痴をがなっていたりするあいだに、食べるタイミングを失うことはままある。そこで2011年から長野県松本市が始めた取り組みが「30・10運動」だ。宴会の最初の30分間は席から離れずに料理を楽しむ、シメの前の10分間は席に戻って残りの料理をたいらげる。この「30分・10分」を、幹事などがコントロールして徹底しようというものだ。同様の発想の取り組みは他でも見られたが、ゴロもよく明快で、全国的に波及している。

 日本の食品ロス(年間約500~800万トン)は、世界全体の食料援助量の約2倍だ(消費者庁)。宴会のみならず、本来は食べられてしかるべきだった、家庭からの生ゴミの量も著しく多い。そこで松本市では、「おうちで残さず食べよう!30・10運動」も設定している。毎月30日は、賞味期限が近い食品などを使い切る「冷蔵庫クリーンアップデー」。毎月10日は、野菜の茎や葉など本来は食べられる部分を調理に用いる「もったいないクッキングデー」。これらの取り組みに注目が集まる。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 少子高齢化が進む中、安倍政権は2017年6月下旬、国家公務員と地方公務員の定年延長を目指す検討会議を設置した。国家公務員と地方公務員の定年を、早ければ2019年度から段階的に、65歳まで引き延ばすことを視野に置く。2017年度中にも対策をまとめ、2018年の通常国会に関連法案を提出する。

 公務員の定年は現在、原則として60歳である。しかし、年金の受給開始年齢は2025年度には65歳までに引き上げられる。65歳までの延長は、年金も給与も受け取れない無収入の高齢者が出てくることを防ぐ狙いがある。

 また、定年延長は、団塊世代のリタイアが進み、国内の労働人口の減少が加速することから、人手不足を補う側面もある。

 課題は、公務員の総人件費をどう抑えるかだ。

 定年延長だけでは公務員の総人数が増えて、当然だが、その分、総人件費も膨れ上がる。そのため、政府の検討会では、人件費の抑制策も話し合う。

 人件費抑制のポイントは、中高年層の給与の減額だ。例えば50歳代の給与水準を全体として抑制、また60歳以降を管理職から外す「役職定年制」の導入も検討する。

 ただ、50歳以降は子どもの大学進学などで、教育費の負担が大きく増す時期と重なっている。最近は晩婚化で、子どもが大学に進学する時点で親が60歳をすぎているケースも少なくない。そうした家庭からは「子どもを大学に出せない」といった悲鳴が聞こえてきそうだ。

 一方、公務員の定年延長には、民間企業の定年延長を後押しする狙いもある。

 民間企業などに対しては「高齢者雇用安定法」が、65歳までの雇用確保を念頭に(1)定年制の廃止、(2)定年延長、(3)再雇用など3つの対応を求めているが、再雇用を選択する企業がほとんど。定年延長が進んでいないのが実情だ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 2012年、ポプラ社より発刊されて以降、幼児から小学校低学年を中心に絶大な人気を誇り、シリーズ累計150万部を超える大ヒットとなっている児童書のこと。漢字で表記すれば「お尻探偵」。

 臀部に似ている顔をもつ名探偵「おしりたんてい」は「フーム、においますね」が決め台詞。ユーモアたっぷりの見かけによらず、とても上品、かつレディーに優しい紳士で、そのうえ、難事件をププッと解決しちゃうほど推理はキレキレの人気探偵……なのだそう。

 あまりの話題沸騰ぶりにアニメ化プロジェクトまでが今年5月末からスタートしており、すでにYouTubeから全世界に向けて「3分でププッとわかる!『おしりたんてい』予告編」が無料配信されているらしい。

 それにしても、『おしりたんてい』にせよ『うんこ漢字ドリル』にせよ、子どもはなぜこうも「お尻まわり」が好きなのか──を考える前に、児童書とは元来「子ども本人が買うものではなく、大人が買い与えるものである」という点に筆者は注目したい。

 もしかすると、子どもは内心、お尻より「お○んちん」とかのほうが、もっともっと好きなのかもしれない。が、“そこ”にはやはり、大人の検閲の目が光り、結果として“それ”よりは多少無難な、しかし子ども受けする「お下劣」の許容ラインギリギリ、すなわち「お尻まわり」へと、ヒットのコンセプトがおのずと行き着いたのではなかろうか? 単純に言葉尻が可愛いというのも売れている要因の、間違いない一つではあると思うが……?
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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