この辞書の各項目は、次の要素から成り立っている。
見出し/漢字欄/品詞欄/語釈/使用地域名/方言の例文/出典番号/文献例/補助注記
見出しについて
親見出し(画面左上に太字で表示)…自立語・付属語・接辞および連語
子見出し(語釈の後に「成句等」欄を設け、まとめて表示)…成句の類
本見出し…語釈・使用地域名・出典番号など、すべてを記述する項目
参照見出し…別の見出しに語釈・使用地域名・出典番号などの解説を委ねた見出し。詳細は 「参照見出しについて」 を参照。
・かこいずけ【囲漬】
・くー【食】 〔動詞〕
・けーせーぐさ【傾城草】
・とぅんちうーつぃー【殿内移】
見出しの配列について
この場合、長音記号「ー」は、直前のかなの母音と同じとして考えるが、同音の母音と並んだ場合には長音記号「ー」が同音の母音に先立つ。
参照見出しについて
参照すべき本見出しが子見出しで、その子見出しのうち親見出しに該当する部分がその子見出しの属する親見出しと異なる場合には、検索の便のためにその親見出しを( )内に示した。
また、方言地図中の見出しは、「→」の先にその参照すべき方言地図の表題を示した。
漢字欄について
・さびしない【寂―】 〔形容詞〕
・ほーたらぬるい【―温】 〔形容詞〕
品詞欄について
| 書籍版 | ジャパンナレッジ版 |
|---|---|
[代] | 〔代名詞〕 |
| [動] | 〔動詞〕 |
| [形] | 〔形容詞〕 |
| [連体] | 〔連体詞〕 |
| [接続] | 〔接続詞〕 |
| [感動] | 〔感動詞〕 |
| [助] | 〔助詞〕 |
| [助動] | 〔助動詞〕 |
| [接頭] | 〔接頭語〕 |
| [接尾] | 〔接尾語〕 |
| [語素] | 〔語素〕 |
語釈について
特定の地域の資料に、語の位相や用法など、特別の記述がある場合は、その使用地域名と出典番号との間に( )を付して注記した。
(一)(二)…根本的な語義が大きく展開するとき
(1)(2)…一般的に語義を分けるとき
(ア)(イ)…同一語釈の中で、特に位相や用法の違いなどによってさらに分けるとき
動物の名 | 動物 |
| 鳥の名 | 鳥 |
| 虫の名 | 虫 |
| 貝の名 | 貝 |
| 植物の名 | 植物 |
| 茸の名 | 茸 |
| 藻の名 | 藻 |
使用地域名について
方言の例文について
出典番号について
文献例について
| ・宴曲 | ・歌謡 | ・狂歌 | ・狂言 | ・狂言記 |
| ・狂詩 | ・狂文 | ・幸若 | ・雑俳 | ・謡曲 |
| 書籍版 | ジャパンナレッジ版 |
|---|---|
浮 | 浮世草子 |
| 伽 | 御伽草子 |
| 仮 | 仮名草子 |
| 伎 | 歌舞伎 |
| 黄 | 黄表紙 |
| 滑 | 滑稽本 |
| 洒 | 洒落本 |
| 浄 | 浄瑠璃 |
| 随 | 随筆 |
| 説 | 説経節 |
| 談 | 談義本 |
| 人情 | 人情本 |
| 俳 | 俳諧 |
| 咄 | 咄本 |
| 評 | 評判記 |
| 読 | 読本 |
補助注記について
項目の末尾に「補注」欄を設け、次のような事項を取り扱った。
よりどころとした原資料名を〔 〕内に示した。
異形等について
〔動詞〕
〔感動詞〕
琉球諸方言の表記について
琉球諸方言、つまり鹿児島県奄美地方および沖縄県下の島々で使われてきた伝統的な方言は、全国的視野のもとで、特に異彩を放っている。また、その内部の方言差も、津軽方言と薩摩方言の違いと同じく、あるいはそれ以上に甚しい。音声上の特色も、まことに著しい。
この辞典の見出しの表記は検索の便宜を考えて「かな」によっている。しかし琉球諸方言を代表として、「かな」によって各方言語形の厳密な表音的表記を期待することは、理論的に困難である。資料とした文献の表記の方針もまちまちであった。したがって「かな」による表記は、ほぼ原音を正確に伝えているとはいうものの、近似的なものにとどまっていることをことわっておかねばならない。
琉球諸方言に関する表記それぞれが、たとえば下表に示したような音声を代表している(場合のある)ことをみてほしい。
例示からもわかるように、元来は同一方言内で区別のある音声を、「かな」では区別して表記できない場合がある。
他方、別方言間でほとんど同一の音声なのに、もとの資料の表記に影響されたりして、音声を粗く示した「かな」にもかかわらず、ことさら区別して表記しているようにみえる場合も考えうるので注意してほしい。
つまり、「かな」表記の内容は矛盾を含みうるものなのである。
この辞典が資料として用いた琉球諸方言関係のおもな文献は、次の通りである。
975 採訪南島語彙稿
993 沖縄語辞典
996 八重山語彙
このうち「南島方言資料」と「八重山語彙」は、それぞれ独特の「かな」表記によっている。ここではいったんそれぞれの表記から実際の音声をできるだけ推定復原して、その音声を近似的に示すと考えられる「かな」表記に改めて表示することにした。
「採訪南島語彙稿」は、正確な音声表記をめざしているから特に問題はなさそうにみえるが、その多彩な変異は、「かな」表記の困難さをひしひしと体験させてくれた。
「沖縄語辞典」はいわゆる音韻表記によっているので、いったん実際の音声を復原して、その音声を近似的に示すと考えられる「かな」表記に改めて示すことにした。
方言地図について
この辞典に収録した一七八枚の方言地図は、国立国語研究所編『日本言語地図』全六巻(一九六六~一九七四)の中から、本辞典と関わりの深い項目を選び、略図として新たに作図したものである。作図は『日本言語地図』編集当時のスタッフ、および、その後の担当研究室員が中心となって行った。
『日本言語地図』はわが国最初の、かつ、現行唯一の語彙項目を中心とする全国方言地図集である。同書には北海道から琉球列島に至る全国二四〇〇箇所で現地調査を行った結果に基づいて製作した、二八五の項目に関する三〇〇枚の言語地図が収められている。調査は一九五七年度から一九六四年度にかけて、国立国語研究所員ならびに同地方研究員の手によって行われた。調査対象者は一九〇三年以前に出生した、その土地生え抜きの男性(各地点一名)であった。
『日本言語地図』所載の言語地図のうち、本辞典への収録を割愛した図は次のようなものである。
「カガミ(鏡)の―G―の音」「セナカ(背中)の―SE―の音」など。
「助詞〈が〉―〈雷が落ちる〉における」「〈いい天気だ〉の〈だ〉」など。
「鼻」「耳」「口」「綿」「竹」「雨」など。
「畑」「家屋」「襖障子」など。
「ほくろ―大きいもの」(「ほくろ―小さいもの」のみを収録)、「ゆげ―湯の場合」(「ゆげ―飯の場合」のみを収録)など。
「大きい―オオキイ類の詳細図」「大きい―デカイ・イカイ類の詳細図」など。
「〈大きい〉と〈太い〉と〈粗い〉との総合図」「〈あざ〉と〈ほくろ〉との総合図」など。
「まぶしい―前部分」「まぶしい―後部分」など。
なお、『日本言語地図』で、語形の種類がきわめて多いために複数の地図に分割されているものについては、本辞典ではそれらをまとめて一枚の略図として作図した。次に、この辞典に収録した略図と『日本言語地図』の原図との関係について述べる。
『日本言語地図』では、調査の結果得られた語形をいくつかのグループに大別し、それぞれのグループに一定の色を与えた上で、さらに、グループ内の諸語形に、語形の類似度を考慮しつつ一定の形の符号を与えている。たとえば、「カボチャ(南瓜)」の図(略図は図154)では、カボチャ類に水色、ボブラ類に赤色、ナンキン類に橙色、トーナス類に緑色、その他の類に紺色を与え、合計一〇〇の語形を見出しとして凡例に示している。
しかしながら、同書で、調査の結果得られたすべての語形(音声変種を含む)を見出しに立てているわけではないことに注意する必要がある。たとえば、「カボチャ」の図の凡例の最初にあるKABOCYAの見出し語形はカボチャのほか、カボツァ、カンボチャ、カボチャーなどの音声変種、語形変種をまとめたものであり、CYOOSENの中にはチョーセンのほか、オチョーセンも含まれている。語形のまとめ方(変種の出し方)の程度は項目の性格によって異なり、一般に、方言形の種類が多い項目ほど一つの見出し語形に含まれる変種の幅は大きくなる。たとえば「おてだま(御手玉)」の原図(略図は図32)には二四三種の見出し語形が示されているが、その中のZAKKUという見出し語形は、ザックのほか、ザク、ザグ、ザグブグロ、ザクザク、ザング、ザンゴの諸語形をまとめて示したものである。
このように『日本言語地図』では、得られた語形をある程度まとめて、それらの代表語形を見出しとして立てているわけであるが、この辞典の略図では原図の見出し語形のいくつかをさらにまとめて示し、また、勢力の著しく小さい語形(原則として原図における分布地点が一〇地点以下の語形)は略図への掲出を省略した。
「カボチャ(南瓜)」の図(図154)を例として、『日本言語地図』の原図と本書の略図との関係を示すと次のとおりである(以下、太字は略図の凡例に示した見出し語形であることを示し、〈 〉内の語形は太字の見出し語形としてまとめた諸語形であることを示す。また、*印を付した語形は略図への掲出を省略した弱小勢力語形であることを示す。なお、原図の見出しはローマ字表記であるが、ここでは仮名にあらためた)。
カボチャ〈カボチャ、カンボチャ、カボジャ、カブチャ〉、(
上に示したように、略図の凡例でボ(ー)ブラのように表示した見出し語形は、原図において、それぞれ一定の勢力で分布するボブラとボーブラとをまとめたものであることをあらわす。ただし、トーナスやユーゴーのように、いくつかの語形をまとめたものであっても、その中の最も原形に近い語形(トーナス=唐茄子、ユーゴー=夕顔の変化形)を代表形として示した場合もある。また、「おてだま(御手玉)」(図32)の図における「ナンゴ、ナンコ、ナンヨ」のように、まとめた語形を併記して見出しとしたケースや、「かたぐるま(肩車)」(図67)の図における「アブ~」「サル~」のように、同一の形態素をもつ異形をまとめて示したケースもある。たとえば、「アブ~」はアブ、アブコ、アブラコ、アブンド、アブノリなどを、「サル~」はサルボンボ、サルマッコ、サルオビ、サルカッカイ、サルコッケー、サルヤマンジュ、サルマンダなどをまとめたものである。
なお、原図で一〇地点以下しか見られない弱小勢力語形は、略図への掲出を原則として省略したが、その場合でも、方言分布の上で、あるいは国語史との関係などでとくに注目すべきと思われた語形については略図にも示した場合があった。たとえば、「カボチャ」の略図で秋田北部に見られるキントは『日本言語地図』における分布地点は五地点であり、奄美諸島の喜界島に見られるトゥッソー(TUSSOO)とトッピョーは原図でもそれぞれ一地点ずつしか見られない語形であった。
なお、『日本言語地図』の中には、具体的な語形をあげてそれを特定の意味で使うかどうか調べた地図があるが、その場合は凡例がきわめて単純であるので原図の見出しを略図にそのまま掲出した。たとえば「オドロクを〈目覚める〉の意味で使うか」(図39)における「使う」「古くは使った」「まれに使う」「使わない」の見出しがそれである。
『日本言語地図』では調査を行った二四〇〇地点のそれぞれに、なんらかの符号を押印してある。言いかえれば、どの地点でどのような語形が得られたかを地図上で検索することができる。しかし、本書の略図に押印されている符号はあくまでも見出し語形のおよその分布地域を示すものであって、その語形の分布する地点を示すものではないことに注意してほしい。たとえば、先に例示した秋田北部のキントは略図では三個の符号しか押印されていないが、『日本言語地図』における表示地点(分布地点)は五地点であった。
この辞典では、いくつかの方言形(異形)を代表見出し語形(本見出し)の下にまとめて示してあるが、方言地図は、それぞれの地図に示した見出し語形のうち、比較的分布領域の広い語形(原則として非標準語形)を一つ選び、その語形と同一、あるいは類似する代表見出し内に参照先項目として掲出してある。たとえば、「かまきり(蟷螂)」の図は「いぼむし」の見出し内に、また、「カボチャ(南瓜)」の図は「ぼーぶら」の見出し内にそれぞれ掲げた。
各図のページは、「方言地図目次」のリンクからも見ることができる。
これらの方言地図はあくまでも『日本言語地図』の略図であって、本辞典に収録された諸語形の分布を示すものではない。両者はその依拠する資料を異にしているから、現れる語形の種類や分布領域に相違が見られるのは当然である。とくに、『日本言語地図』では、一定の質問文によって意味分野を限定して資料を収集したことに留意すべきである。たとえば、「おそろしい(恐)」(図33)の図は「大きな犬が何匹もほえかかって、いまにもかみつきそうになる。そんな時の感じをどんなだと言いますか」という質問文によって得た結果であり、本辞典で「恐ろしい」「怖い」などの語釈の下にまとめられた諸語形との間に意味のずれがありうることに注意しなければならない。『日本言語地図』の分布と本辞典に収録された方言形の分布との関係は、今後の研究課題である。
索引巻の凡例
キーワードとして登場する標準語を以下のような分野に分類した。
[動物](哺乳類等・鳥・虫・魚・貝)
[植物](種子植物等・茸・藻)
[民俗語彙]
[一般語]には、[動物]以下の分類にはいらない、その他すべての言葉を収めた。
[動物]、[植物]には、原則として動植物名(和名などの名称)に限って収めて、それ以外の汎称、部位名、属性などの関連項目は[一般語]で扱った。[民俗語彙]には、民俗関係の言葉を収めた。
なお、[民俗語彙]に収録されている項目で[一般語]にも立てられているものは、一部をのぞき[民俗語彙]にまとめた。
一部の項目は参照見出しとしてかかげ、参照すべき先を矢印(→)で示した。
見出しの種類には、次の三種がある。
単語の見出し。平仮名見出しに漢字欄を付して、画面左上に太字で示した。親見出しの下には分野を示した。
親見出しに関連する方言は、見出しの下にグレーで囲んで表示した。
親見出しの単語を含む句の見出し。親見出しに関連する方言の下に太字でかかげ、親見出しと同じ部分は―によって省略して示した。配列は、―部分が最後にくる句、―が中ほどにくる句、―が頭にくる句の順である。
子見出しと文末が同じ形になるものを一括してまとめたもの。子見出しの次に一字さげてかかげ、子見出しと同じになる部分は―によって省略して示した。
これらの標準語によって掲出される見出しに相当、あるいは関連する方言をそれぞれの見出しの下に掲げた。
これを実例によって示すと、次のようになる。
(1)は五十音順の配列。(2)(3)は頭字が平仮名・片仮名のものを先に、漢字のものをあとにまとめた。そして、前者は五十音順の配列、後者は漢字の画数の少ないものから多いものへの順に並べた。
各見出しのもとに該当する方言が五十音順に並べられている。方言項目が太字になっているものは、本見出しとなっている方言項目、それ以外の普通の書体は、本見出し以外の項目である。
本索引はコンピュータを駆使することによって、本文の方言項目の解説文中の細部にわたるキーワードを抽出することができた。そのため、近い意の語が別々に立項されたきらいがある。よって、方言項目の最後に矢印(→)で参照すべき項目を示した。たとえば、「あやまち」「過失」「失敗」といった項目が、それぞれ別に立項されている場合があり、それらをも参照していただきたいという気持ちで付けられた指示である。もとより、すべてにわたって付けたわけではないので、各位の想像・連想において各種の関連項目を引いて利用していただきたいと思う。
Web版での見出し検索について
- 見出しは 《かな見出し【漢字】》 の形式で表示し、方言項目には [方言]、標準語引き索引項目には [標準語索引] のラベルを付けた。
- 見出しの【 】内の漢字表記は、同音で意味の違う語を区別するため、漢字が特定できるもののみに付与した。
そのため、方言項目、標準語引き索引項目ともにひらがなでの見出し検索を推奨する。