平野邦雄 著
道鏡を転落せしめた宇佐神託の一件から、かつて忠臣といわれ、または藤原氏の走狗ともいわれる。しかし最近の卓絶した歴史観では、果して清麻呂を如何に評価するか。本書は、備前の土豪から身を起し、宮廷政治の優れたオルガナイザーとして新時代の開拓者となった清麻呂の風貌と生涯とを、綿密な史料調査によって跡付けられた。
[奈良|平安][政治家|官人]
岸俊男 著
正一位太政大臣の身から一転して逆賊の汚名を受け、誅に伏した悲劇の宰相。その波瀾の生涯を時代と共に精彩に描く。藤原氏の嫡流に生まれ聰敏にして学を好んだ仲麻呂は、父の死後政界に乗出し、活躍期はまさに天平の盛時。中国好みの数々の施策を始め、その治績には史上重要なものが多く、奈良朝史解明の秘鍵を握る人物として必読。
[奈良][政治家|官人]
角田文衛 著
東大寺の造営に生涯を賭した今毛人は、大伴氏と並ぶ古代名族の出身ながら、その名を知る人は多くないが、当時の官人で彼ほど詳細に履歴のわかる人物は史上稀である。本書は奈良時代の政争史を背景に、その西大寺・怡土城の修築や長岡京造営の功績をもあわせて描き、偉大な人材の地味な生涯に始めて照明を与え全貌を活写した。
[奈良][官人]
宮田俊彦 著
学者であり政治家でもあった吉備真備は、奈良時代屈指の著名な人物でありながら、彼に関する直接史料はほとんどない。しかもその生涯には華々しい躍動はなかったけれども、穏健な人柄と、再度の入唐によって得られた該博な学識とは、権謀術数渦巻く平城政界にとって一服の清涼剤であった。厳正な史料分析によるすぐれた真備伝。
[奈良][政治家|学者|官人]
高島正人 著
国の将来をになう政治家となるため、父鎌足によって幼少のころより英才教育を受けた稀代の大政治家。大宝・養老律令の編纂をはじめ、銭貨の鋳造、年号の使用、文字・学問の普及など、その高邁な識見と卓越した指導力によって律令政治の実施に尽力する。また皇室との姻戚関係を深め、藤原氏繁栄の礎を築く。不比等の政治と生涯を描く本格的伝記。
[飛鳥|奈良][政治家|官人]
義江明子 著
奈良朝に政界で活躍した女官。少女の時より、天武から聖武までの歴代天皇に側近として仕える。特に元明女帝との強い絆と卓越した資質で比類ない政治力を培い、夫藤原不比等の政治基盤を固め、子の橘諸兄、光明子らの政治的地位を確立させた。女帝が即位し、貴族女性の政治的活躍が求められた時代、新興氏族の藤原・橘氏の繁栄の基盤を築いた生涯。
[飛鳥|奈良][官人|女性]
稲岡耕二 著
奈良時代の歌人。大宝の遣唐時、無位無姓にして遣唐少録(しようろく)に抜擢されるが、それ以前の経歴は分からない。帰国後、伯耆守(ほうきのかみ)、令侍東宮(れいじとうぐう)となるが、類稀な歌才を発揮するのは最晩年の筑前守任官後のことである。大宰帥(だざいのそち)大伴旅人(たびと)との短くも濃密な交流から生まれた『万葉集』の作品群を読み解き、人間の情や生老病死と向き合う独自の作風と貴き生涯を追う。
[飛鳥|奈良][官人|文化人]