奥野高広 著
戦国群雄中最も深謀に富んだ名将。失政の父を廃して自立し、信濃を経略して、しばしば謙信と角逐し、北条・今川の両氏を畏縮せしめた。更に信長と雌雄を決すべく大挙上洛の途上、家康を三方ヶ原に破った直後に陣歿した。本書はこの豪雄活気に満ちた生涯に合わせて、特にその戦力基盤、すなわちその領国制をも解明した労作。
[戦国][武将・将軍]
笠原一男 著
親鸞の開創した真宗は、戦国期に及び多くの異端の繁栄をみたが、御文の作成と名号の頒布によって異端を超克し、盛んな布教活動を起し、真宗王国の基礎を築いた中興の傑僧蓮如。本書は蓮如研究の第一人者たる著者が、宗教界の現状をかえりみつつ当時の社会情勢をえぐり、蓮如の生涯を御文の巧みな操作によって見事に描き出した。
[室町|戦国][宗教者]
田中健夫 著
島井宗室は博多を代表する豪商であり、織豊政権をめぐる大名・商人・農民などの人間関係の曼陀羅模様の中でも、その生涯は異彩を放っている。商人的才腕と茶人的天分とを発揮して遠く海外にまで活躍した行動記録は、広く新しい史料蒐集とその綿密な検討とによってはじめて正確に描き出されたもの。本叢書中には特異な人物である。
[戦国|安土桃山|江戸][商人|文化人]
芳賀幸四郎 著
〝茶聖〟千利休の生涯を厳密な史料批判と、鋭い洞察とをもって、時代背景の中に描き出しているばかりでなく、古来のなぞとされる利休切腹の真相に対して、俗説を排し独創的な解釈を施した。歴史家であり茶人でありかつ禅者である著者の、多年にわたる研究成果であり、利休伝の決定版というべきもの。茶道関係者にも必読の書である。
[戦国|安土桃山][文化人|商人]
水藤眞 著
戦国時代の百年間、北陸越前に君臨した朝倉氏が、信長の天下統一の中で滅亡していく様を明らかにする。関係史料を博捜し、義景の領国統治・信長との戦い、外交等の史実を探り、かつその人間性や教養をも究め、発掘調査による新知見を加えて描く。従来知られなかった一戦国大名の生涯を、総体的に把握した義景の本格的な伝記。
[戦国][武将・将軍]
芳賀幸四郎 著
戦国動乱の渦中にありながら刻明につづられたその日記『実隆公記』をはじめ、数々の史料を駆使していわゆる雲上人の生活を丹念に描く。近世の曙を告げる戦乱の世に、室町の幕府も、公家の社会も、斜陽の命運に追われ、その窮迫した生活は想像も及ばないものがあった。夫人の機嫌を伺いつつしかも世間体を繕ろう赤裸の人間像。
[室町|戦国][官人|学者|文化人]
山本大 著
戦国争乱の中で南国土佐の一僻村から起り、四国制覇を成し遂げた元親は、中央への進出を望んだがならず、秀吉の麾下に属してからは近世封建体制確立への努力を傾けた。戦乱の中にも文化的教養を身につけたが、その伝記は軍記物に伝えられる以外あまり知られていない。『百箇条』『地検帳』など正確な史料に基づく元親の生涯。
[戦国|安土桃山][武将・将軍]
吉田小五郎 著
東洋伝道の使徒として始めてインドに至り、同地およびマラッカに、ついで日本に来ってキリスト教を伝え、一旦帰印後、さらに中国に伝道を志し、入国のまぎわに熱病に斃れた偉大なる聖職者。日本における苦難に満ちた二年余の伝道は、わが国の歴史の上に画期的意義を有する。本書は、その全生涯の正確・克明な素描である。
[戦国][宗教者]
岩沢愿彦 著
加賀百万石の藩祖前田利家の実録。信長・秀吉政権の成立と展開に密着しつつ、幸運に乗って自らを開拓する勇気と才能、誠実と機智とを具え、変転する動乱の世に、順調な境遇を保って生涯を閉じる。本書は稗史や巷説に惑わされず、あくまで基礎史料を忠実に踏まえ、豊臣政権の側面を叙して、利家の真面目を描き出す。新装版は、新史料により加筆し、異説の多いその出生年次を解きあかした。
[戦国|安土桃山][武将・将軍]
外山幹夫 著
北九州地方の雄族、大友氏は宗麟の時代には領国が六ヵ国に及ぶ有力な戦国大名であり、有馬・大村氏とともに、わが国最初の遣欧使節をローマ法王に派遣したキリシタン大名としても著名である。本書は、その領国支配体制、キリスト教保護、対外貿易などを解明するとともに、島津氏に攻略されて衰微した、宗麟波瀾の生涯を豊富な史料を駆使して描く。
[戦国|安土桃山][武将・将軍|文化人]
長江正一 著
将軍義輝および主家細川氏を実力を以て抑え、巧みにこれを操りつつ畿内を制圧して天下の権を専らにしたが、晩年家臣松永久秀に実権を奪われて顚落す。まさに戦国末期の象徴的武将ながら、その身には教養を備え、風流を解し連歌をよくし、また禅に傾倒しキリシタンを保護する等、多彩な面をもつ生涯を激動の時勢と共にリアルに描いた伝記。
[戦国][武将・将軍]
福尾猛市郎 著
戦国武将中たぐい稀れなる文化愛好者であり、高い教養と、貿易による富力とによって、当時比類なき「山口王国」を築き上げながら、ついに謀臣の叛逆にあって非業の最後をとげた大内義隆。本書はこの文事を愛しながらも武備を怠ったその運命を描いた異色ある伝記で、悲劇の顚末に至っては読者をしてひとしおの感慨を抱かしめずにはおかない。
[戦国][武将・将軍]
奥野高広 著
義昭は室町幕府最後の、しかも織田信長に擁立されのち追われた悲劇の将軍である。古いものと新しいものとが交替した変革の時代に、陋固としてその伝統を墨守しようとあせりつつも、ついに時代の波に押し流されて諸国を流浪する。本書は封建制度と、室町幕府の沿革から説き起し、巧みな筆致で、義昭とその周辺を追求する迫力のある好著。
[室町|戦国|安土桃山][武将・将軍]
柴辻俊六 著
安土桃山時代の深謀に富んだ智将。初め信玄に仕えたが、武田氏滅亡後は徳川家康に属し、信濃国小県郡・上野国沼田領を勢力下に収めて大名となった。家康と対立後は次男幸村と共に豊臣秀吉に仕え、「表裏比興の者」と評されながら、織豊期を必死に生き抜く。その処世術と事跡を検証し、領主権力の拡大と闘争過程を解明して実像に迫る、初の伝記。
[戦国|安土桃山|江戸][武将・将軍]
中川徳之助 著
室町末期の臨済宗一山派の禅僧。五山文芸の後期に活躍した悲運の文人で、漢詩文集『梅花無尽蔵』を残す。近江に生まれ相国寺で修業、旺盛な文学活動を始めるが、応仁の乱で美濃に逃れ、還俗して妻帯し、荒廃した世相に堪えて文学に対する執心を堅持した。太田道灌の招きで江戸を訪ねるなど、幅広い足跡と波瀾に富む生涯を禅林文芸を交え活写する。
[室町|戦国][宗教者|文化人]
宮島敬一 著
北近江を舞台に、亮政(すけまさ)・久政(ひさまさ)・長政(ながまさ)と三代にわたる繁栄を誇った戦国大名浅井(あさい)氏。「国衆(くにしゆう)」から下剋上して領国支配を展開。小さな戦国大名でありながら織田信長と互角に戦い、軍事的に敗れはしたが、畿内近国ゆえに中央政治史に大きな影響を与えた。北近江の地域社会が生んだ戦国大名浅井氏の足跡から浮かび上がる、新たな戦国大名像とその時代を描く。
[戦国][大名|武将・将軍]
有光友學 著
駿河(するが)・遠江(とおとうみ)・三河(みかわ)の三ヵ国を治めた戦国大名。桶狭間(おけはざま)の戦で信長に敗れ、あえない最期を遂げた暗愚の将として語られてきた義元だが、謎に包まれた家督争いに勝利して当主の座に就き、巧みな領国経営と法治主義をめざした武将であった。通説を見直しつつ、京都との交流で芽生えた今川文化にも迫るなど、知られざる実像を浮き彫りにした義元伝の決定版。
[戦国][武将・将軍]
池上裕子 著
桶狭間の戦いから本能寺の変まで、一生涯みずからの支配領域(分国)拡大の戦争に明け暮れる。強い主従意識のもとに家臣を指揮・統制し、抵抗勢力には残虐な殺戮に走り鬱憤を散じた。天下統一に邁進した革命家のごとく英雄視する後世の評価を再考。「天下布武」の意味を問い直し、『信長公記(しんちょうこうき)』や信長発給文書などから浮かび上がる等身大の姿を描く。
[戦国|安土桃山][武将・将軍]