小林清治 著
奥羽の覇者“独眼竜”として、その勇名は世間周知のところ。それだけに伝説は伝説を生んで、政宗の正しい伝記は極めて少ない。本書は厳密な史料批判と透徹した理論構成とによって、その70年の生涯を余すところなく論述している。秀吉・家康との外交折衝、仙台藩の経営、南蛮への遣使など彼の生涯は多端にして多彩である。
[安土桃山|江戸][武将・将軍|大名]
吉田常吉 著
大老井伊直弼ほど毀誉褒貶のはなはだしい人物も史上にまれであろう。井伊家は従来永く大老関係の史料を秘してきたが、戦後これを公開した。著者はこれらの新史料を縦横に駆使して、条約調印・将軍継嗣の問題、安政の大獄はもとより、学問・修養から若き日の悲恋まで、直弼の人間性を追求し、渦中の人物を美事に描き出している。
[江戸][政治家|大名]
若林喜三郎 著
加賀百万石の領主であり、加賀藩の制度・文物万般にわたる完成者であった松雲公前田綱紀は、世に名君と呼ばれている。しかしその治績が模範的であればあるほど、封建政治の矛盾をはらんでいる。本書は藩政史料を厳密に調査し、社会経済史的立場から、彼の幾多の業績に検討を加え、そこに彫りの深い封建領主像を描き出した。
[江戸][大名|文化人]
平尾道雄 著
明治維新の先覚者として推称される土佐藩主山内容堂は、他面では詩酒奔放の行状で世の非難をも受けた。しかし混迷する維新前後の舞台に立って革新的役割を負った容堂は、優れた知性と情熱の持主であるとともに、封建大名という宿命的な地位から、時代に悩む赤裸々な一人間でもあった。見事な史料駆使による人物追求の正伝。
[江戸|明治][政治家|大名]
谷口澄夫 著
明敏な素質とひたむきな学問に裏付された理想をもって岡山藩の基礎をきずいた池田光政は、世に名君と称せられる。その逸話や俗説を巧みにおりまぜながらも、多年にわたり岡山藩の藩政史研究に研鑽を積む著者が、自筆日記などの新史料を駆使して、藩政全般から、光政の業績とその典型的人間像とを、史上に正しく位置づけた名君伝。
[江戸][大名]
横山昭男 著
財政改革・産業開発・倹約奨励・文教刷新等、藩政改革にすぐれた業績あげた米沢藩主上杉鷹山は、江戸時代における名君の一人としてその名を謳われる模範的封建領主である。本書は、戦後目ざましい発展をとげた藩政史研究の成果をふまえ、多年にわたる基礎史料の精査をもとに、この典型的名君の人と生涯に新たな照明をあてた斬新な伝記。
[江戸][大名]
北島正元 著
十九歳の青年藩主として唐津藩の藩政改革に取り組み、のち幕府の要職につき累進して老中首座となる。“天保改革”を断行して幕府の危機打開に挺身し一世を震撼させたが、時勢の波に抗しえず、遂に士民怨嗟のうちに失脚して幕閣を追われた。本書はこの“悲劇の改革者”の波瀾に富んだ苦闘の生涯と、その人間像を浮彫りにして余すところがない。
[江戸][大名]
芳即正 著
典型的な開化大名にして蘭学の大の庇護者島津重豪初めての伝記。中世的体質を強く残した薩摩藩の、後進性克服を生涯の課題とした重豪は、積極的に開化政策を展開。そのために五百万両という巨額の藩債を造出した元兇と伝えられる。新史料によってその原因を究明、多彩な重豪の業績とともに、薩摩藩天保財政改革前夜の姿を描く。
[江戸][大名]
川端太平 著
幕末維新の動乱期に、親藩の福井藩主ながら開国論を推進しつつ朝幕関係を調停、紛糾を防止した松平春嶽(慶永)の裏面工作は絶大であった。その日記・著作・往復書翰・詩歌など未刊史料をも精査して、維新史上重要な位置をなす春嶽の波瀾多き生涯を、回天動地のめまぐるしい政情とともに見事に描く。
[江戸|明治][大名]
芳即正 著
幕末の薩摩藩主島津斉彬は、曽祖父重豪の薫陶により吸収した洋学知識と、琉球を通して知り得た外国情報により、世界に目を向けた開明的な視野で施政を行った。国政においては一橋派を支持して幕政改革を企図し、藩政においては殖産興業・富国強兵の道を進んだ。人格・識見に優れた斉彬の影響のもと、薩摩から明治維新に活躍した輝かしい人材を輩出する。
[江戸][大名]
福田千鶴 著
徳川4代将軍家綱期の老中・大老。「下馬将軍」と称され、権勢をふるった専制政治家と評されるが、意外にもその素顔は、小柄で端正な顔立ちのよく笑う人物で、芸能を好み、また大変な早口で有名であったという。譜代の名門、酒井雅楽頭家に生まれ、政治的資質にも恵まれながら、なぜ後世に悪者として描かれたのか。その生涯と時代に迫る初の伝記。
[江戸][大名]
中野等 著
九州柳川藩の祖。大友宗麟配下の一武将から豊臣秀吉によって大名に取り立てられる。関ヶ原の敗戦で浪人となるが、徳川秀忠の下、再び大名として返り咲き、晩年家光に重用された。従来、軍記による武勇伝が流布してきたが、一次史料を駆使し生涯を描いた初の伝記。戦国大名島津氏らとの抗争、加藤清正や細川氏との交流なども浮き彫りにする。
[安土桃山|江戸][武将・将軍|大名]
小川國治 著
江戸時代中期の萩藩主。兄の死後11歳で長府(ちようふ)藩主の座に就き、さらに萩藩主として藩政改革を断行。検地で得た増収分を別途会計として保管・運営する「撫育方(ぶいくかた)」を設け、干拓・製糖などの事業を推進。後世、維新動乱期の長州藩軍資金ともなる資銀を、豊富に蓄える基礎を築いた名君と謳われた。萩藩「中興の祖」の事績と実像を描く、初の本格的伝記。
[江戸][大名]
鈴木暎一 著
「水戸黄門(みとこうもん)」で知られる2代水戸藩主。少年期には非行で家臣にまで不安を与えたが、18歳のとき『史記』伯夷(はくい)伝を読み発奮、学問を志す。『大日本史』編纂をはじめ多くの文化事業を主宰する一方、徹底した寺社改革や蝦夷地(えぞち)探検も断行。文武兼備の武将たらんとの強固な意志を貫き通した起伏に富む生涯を活写。従来の光圀(みつくに)像を捉え直した本格的伝記。
[江戸][大名]
大石学 著
「大岡越前」として名高い江戸中期の幕臣・大名。将軍吉宗の信頼の下、若くして江戸の町奉行に抜擢され、防火対策や物価政策など、首都江戸の機能を強化。また、地方(じかた)御用・寺社奉行を歴任し、幕府最高の司法・立法機関である評定所一座に加わり、各地の紛争を裁定する。全国各地の史料を博捜(はくそう)し、享保(きようほう)改革を支えたその実像に鋭く迫る、本格的伝記。
[江戸][大名|政治家]
大野瑞男 著
江戸前期の老中。将軍家光に仕え、知才溢れる忠勤により小姓から老中に出世する。島原の乱を鎮圧し、家光の死や由比正雪の乱・明暦の大火などの危機を乗り切り、幼君家綱を助けて幕府の確立に尽力した。川越藩主としても城下町を復興、農政にも意を用い、「小江戸」川越の基盤を築いた。その才知から多くの逸話が残る「知恵伊豆」の実像に迫る。
[江戸][大名]
高澤憲治 著
寛政の改革を断行した江戸後期の老中。徳川吉宗の孫という血脈に加え、奥州白河の藩政改革を評価され、幕閣に登壇。将軍補佐としてあらゆる分野に及ぶ改革政治を展開する一方、ロシアの脅威に直面し、幕末までの基軸となる対外方針を策定。山積する難問に挑む。多数の著述を残し、書画・作庭等の才から文化人として高く評価された希代の生涯を追う。
[江戸][大名|文化人]