多賀宗隼 著
明庵栄西は日本禅宗の開祖であり、また一方茶祖としても仰がれる。再度宋に渡って新仏教を伝え、公家・武家に接近して日本の桧舞台に縦横に活躍し、史密禅の一致、新旧両教の調和を計るかたわら、社会事業家としての面目をも示した。──本書は基礎文献の緻密な精査の上に立って、栄西の全伝とその業績ならびに思想を解明した。
[平安|鎌倉][宗教者]
平林盛得 著
平安中期に活躍した第十八代天台座主。奈良期に行基が任じられて以来の大僧正に昇進、『往生要集』の源信や覚超ら高僧を育成、叡山の中興事業を完成しながら、僧兵の創始や権門の子弟を優遇し、山上を世俗化した張本人ともいわれる。その光と影の生涯を解明し、現代にいたる広汎な元三大師信仰に説きおよぶ。正確な史実によるはじめての伝記。
[平安][宗教者]
田村晃祐 著
日本天台宗の開祖・最澄の伝記は、まだ学界で論争中のことも多く、一定するに至ってはいない。本書は、それらの諸説を掲げて著者の見解を示し、最澄の全体像の把握に迫る。特に根幹となる思想については、その形成と内容を述べて、行動との関連性を考え、主要著作を解明し、国家に対する仏教の自立をめざした教団づくりの意図と努力を概観した。
[平安][宗教者]
田村圓澄 著
浄土宗の開祖法然は、日本仏教史の転回点に立つ聖者でもある。宗祖の立場は常に苦難の道であって、彼もまた例外ではない。しかし法然の門流が多くなるにつれて、法然像もまた神秘化され来った。本書はこの意味から法然像のヴェールをはがし、あるがままの人間法然を描き、執拗な弾圧に抗する苦悩と実践とを如実に追求する。
[平安|鎌倉][宗教者]
多賀宗隼 著
平氏から源氏へ、そして北条氏へとめまぐるしい転変を続ける平安末~鎌倉初頭の動乱期に、四たび天台座主となって仏教界・思想界に君臨し、新古今歌壇の雄として六千首の歌什を残す。摂籙九条家の出で深く政治をも解し、名著『愚管抄』により史家としてまた不朽の名を伝える。本書は慈円研究の権威によるそのすぐれた伝記。
[平安|鎌倉][宗教者|文化人]
速水侑 著
一天の下、一法の中、みな仏弟子。誹謗のものも讃歎のものも、ともに往生極楽の縁を結ばん! 『往生要集』の著者源信は、国境を越え、身分の上下を問わず、すべての人々と手を携えて浄土に往生しようと願った。その誠実真摯な七十六年の生涯を、転換期の歴史を背景に生き生きと描く。『往生要集』遣宋一千年を期して成る、初の本格的源信伝。
[平安][宗教者]
佐伯有清 著
日本天台宗の開創者である最澄のあとを継ぎ、その教義を顕揚し、また新たに天台密教を根づかせた円仁。入唐して揚州・五台山・長安における修学と書籍の求得に、ひたむきに心をかたむけたその真摯な姿、会昌の破仏という未曽有な出来事に際会し、幾多の辛酸を嘗め、強靱な精神に支えられた足掛け10年におよぶ苦難の旅。その生涯を克明に描いた伝記。
[平安][宗教者]
目崎徳衛 著
中世的人間の典型“数奇の遁世者”西行。草庵閑居と廻国修行を多彩に織りまぜつつ、宗教・文学・政治・芸能・故実など、当代文化の全領域に活躍し、古代末期の波瀾の時代に独自の生き方を貫いたその生涯を鮮やかに描写。多くの史実を明らかにした『西行の思想史的研究』の著者が、一般読書人のために平易に興味深く紹介した好伝記。
[平安|鎌倉][宗教者|文化人]
佐伯有清 著
天台座主智証大師円珍の生涯を克明にたどった初の詳細な伝記。当時の政治情況の中で多くの人びととかかわって行動する円珍の姿や唐での留学僧円載との相克を新たな視点から描く興味あふれる叙述。率直、かつ強烈に諸宗派や僧侶の動向を諸著述で批判する姿勢と終生経典の蒐集と校勘につとめたひたむきな人間像に魅せられないではいられないであろう。
[平安][宗教者]
佐伯有清 著
聖徳太子の後身として崇められていた理源大師聖宝。山林修行につとめ、京都の醍醐寺を開創した聖宝の生涯は、空海の創始した真言宗を、身をもって実践し、大成させたことにつきている。時の権力者との結びつきを極力さけ、けっして名聞を求めない聖宝の姿は、魅力的である。説話の世界に生きる聖宝を歴史の世界に蘇らせ、活写した新たな聖宝伝。
[平安][宗教者]
山田昭全 著
鎌倉前期の真言僧。流配地伊豆で源頼朝と親密な関係を築き、後白河院との連携を工作して平家打倒に奔走。動乱の仕掛人として荘園の寄進を受け、神護寺や東寺等の復興に努めた。過激な言動で三度の流刑となるが、その根源には鎮護国家の理想をめざす宗教的使命感があった。鎌倉期の仏教文化と政治に大きな足跡を残した荒法師の波乱の生涯を描く。
[平安|鎌倉][宗教者]