日本大百科全書(ニッポニカ)

医療的ケア
いりょうてきけあ

経管栄養の注入、痰(たん)の吸引、導尿など、病院などの医療機関で医療職により行われると医療行為とされるもので、家族が家庭で、あるいは教員が学校で日常的に介助として行うもののこと。
 医療行為は医師や医師の指示のもとに医療職が行うものであり、その他の者には行うことが禁止されているが、家庭では家族が行う必要があることから、同じ行為であっても「医療的ケア」ということばで表されるようになった。したがって、行為の具体的な内容については、当事者が必要としていることにより異なる。より重症な状態でも家庭で過ごさざるをえない、または家庭で過ごすほうが本人にとって環境として好ましいとされる状況は時代により変化しているため、医療的ケアの範囲も変化していく。従来は経管栄養の注入、痰の吸引、導尿がおもなものとされていたが、さらに人工呼吸器、気管切開部、鼻咽頭(びいんとう)エアウェイ、陽圧換気の管理、酸素飽和度測定と酸素吸入、ネブライザー(噴霧吸入器)吸入、経口摂取介助、経鼻胃管・胃瘻(いろう)・腸瘻の管理、持続注入ポンプの使用、中心静脈栄養の管理、継続的な透析(腹膜透析を含む)の管理、人工肛門管理、体位交換など広範囲にわたっており、明確な定義はない。
 これらの介助は家庭だけでなく、介護や教育の場でも行う必要が生じてきた。介護の場では介護福祉士が、教育の場では看護師が配置された特別支援学校で教員が、一部の医療的ケアを行えるようになっている。また、これらの医療的ケアを必要とする人は医療機関にも長期間滞在しており、医療機関で行われるものも「医療的ケア」ということばで表されるようにもなっている。したがって、「医療的ケア」の概念は、生きるために日常生活上必須となる行為について、行われる場所や行う人がだれなのかにはかかわらず、広くしめすことばともなっている。その場合、通常の医療行為との区別として、長期間(たとえば6か月以上)継続される、または継続が予測されるもの、とすることもある。
[高増哲也]2019年5月21日