働く意欲と能力のある高齢者を雇用すること。日本では急速な少子・高齢化の進展、人口減少に伴う働き手の不足、年金支給年齢の引上げなどに対応するため、高齢者雇用が重要な政策課題となっている。高年齢者雇用安定法(旧、中高年齢者雇用促進法、昭和46年法律第68号)に基づき、2013年(平成25)から、企業などの事業主には原則、希望者全員を65歳まで雇用する義務が生じた。このため、(1)定年の廃止、(2)定年年齢の65歳以上への引上げ、(3)定年後に改めて65歳まで雇用する継続雇用、のいずれかを事業主は選択しなくてはならない。違反した場合には、厚生労働大臣の勧告を受け、従わないと事業所名を公表される。2017年の厚生労働省調査によると、もっとも多い企業の対応策は人件費を抑制できる(3)で全体の80%を占める。2025年度には、継続雇用対象者を限定する基準を労使協定で設けていた企業を含め、65歳までの雇用確保が完全に義務化される。さらに日本政府は70歳雇用を企業の努力目標とし、希望すれば原則70歳まで働けるように、雇用・年金関係法制の改正を検討している。
日本では人口構造の変化、医療の進歩、栄養状態の改善、社会保障制度の充実などにより、時代によって高齢者の定義は変遷してきた。雇用法制上、明確に高齢者雇用に配慮がなされたのは1966年(昭和41)成立の雇用対策法においてである。同法では、中高年齢者(35歳以上)の雇用促進のため、事業主の努力義務としての雇用率制度(従業員の一定割合を中高年齢者とする制度)を導入。1971年には中高年齢者雇用促進法を制定し、中高年齢者(45歳以上65歳未満)を対象とした職種別の雇用率が設定され、雇用率達成を努力義務とした。1976年には高齢者(55歳以上)の雇用率制度を創設し、職種に関係なく、一律6%以上の雇用率を設定した。定年の引上げでは、1973年の雇用対策法改正で、定年引上げを後押しする施策の充実を明記。1986年に中高年齢者雇用促進法を改正してできた高年齢者雇用安定法で60歳定年を努力義務とし、1994年(平成6)の同法改正で60歳定年が義務化(1998年実施)された。さらに2000年(平成12)の同法改正で、定年(65歳未満の場合)の引上げを努力義務とした。定年後の継続雇用は、1990年の高年齢者雇用安定法改正で、事業主に対し65歳までの継続雇用に努力すべきと規定。2004年の同法改正では、2006年度から雇用延長を義務づける上限年齢を段階的に引き上げ、2013年度以降は原則希望者全員に65歳までの雇用延長を義務化した。なお高齢者雇用を推進するため、60歳到達時点に比べて賃金が25%を超えて低下した高齢者に対し、60歳以後の賃金の一定割合(最大15%)を給付する高年齢雇用継続給付制度がある。
2019年5月21日