日本大百科全書(ニッポニカ)

第五世代コンピュータ
だいごせだいこんぴゅーた

電子技術総合研究所(現、産業技術総合研究所)の渕一博(ふちかずひろ)(1936―2006)らが立ち上げた国家プロジェクト。年間予算約50億円、10年間の予定で開始された。1982年(昭和57)に新世代コンピュータ開発機構(ICOT(アイコット):Institute for New Generation Computer Technology)が設立され、プロジェクト遂行の場となった。第五世代コンピュータの目標は「述語論理による推論を高速実行する並列推論マシンとそのオペレーティングシステムを構築する」というものであったが、プロジェクト途中に汎用(はんよう)マシンの性能が予想以上に高くなり、推論マシン開発の必要性が急激に低下した。その意味で、このプロジェクトは当初目標を完全には達成することなく終了した。
 しかしながら、プロジェクトが世界的に注目されたことで、世界中の有力な研究者がICOTを訪れるようになり、日本の研究者が世界的に活躍をする機会が生まれた。プロジェクト期間中に多くの人工知能(AI)関連の人材を育成した功績は大きい。このプロジェクトが進行していた時期は、これまでのAI研究の歴史上、日本が中心的役割を果たした唯一の時期といえる。
[中島秀之]2019年8月20日