品目、時間、場所をあらかじめ定め、一定の資格をもつ売り手と買い手が一定のルールのもとで売買を行う市場組織ないしその施設。もともとは実物取引の場として出現したが、現在では投機取引が原則である。投機取引とは、将来の相場(価格)の騰落を予想して売買する相場取引もしくは先物取引(さきものとりひき)として売買を行うことをいう。取引所の経済社会的機能は、公正な価格の形成、不正や悪質な取引の排除、商品や証券と資金との交換の促進、成長分野への資金供給、価格変動によるリスクヘッジ(危険回避)にある。リスクヘッジとは、価格変動から生じる損失を、反対売買(買ったものは売り、売ったものは買い戻す)によって埋め合わせることであり、つなぎ売買、保険つなぎともいわれ、先物取引で実施される。
取引所の取引は、競争売買が原則である。それは、多数の売り手と買い手が所定の時刻(立会時間)に所定の場所(立会場)に集合し、価格の上下による競争(せり)を行いながら売値と買値が合致したものを取引成立(約定)とするのである。このほかに一部では、ザラ場式とよぶ個別競争売買ないし相対売買も行われる。これは売り手と買い手が一対一で交渉し、まとまれば取引成立とするものである。近代化した取引所では、コンピュータによってこれらの売買を処理する。
取引所には、金融資産(株式のような現物と株価指数のような指数)の取引を扱う金融商品取引所、貴金属(金・白金・パラジウムなど)・工業品(ゴム、原油、電力など)・農産物(トウモロコシ、大豆、小豆(あずき)など)の商品取引を扱う商品取引所、金融と特定の商品の両方を一括して扱う総合取引所がある。世界では、投資家が一つの口座を通じて金融資産や商品に機動的に投資できる総合取引所が主流となっている。日本の金融商品取引所には、証券取引所と金融先物取引所がある。証券取引所は東京、名古屋、札幌、福岡の4か所にあり、金融先物取引所は東京金融取引所のみである。商品取引所は東京商品取引所、大阪堂島(どうじま)商品取引所の2か所である。総合取引所は大阪取引所のみである。取引所の組織には、会員組織のものと株式会社組織のものがある。日本では従来すべて会員制組織であったが、金融商品取引法(2007年改正)によって株式会社組織が認められ、東京、名古屋の両証券取引所、東京金融取引所、東京商品取引所、大阪取引所は株式会社である。
2020年12月11日