エボラウイルス(Ebola virus:EV)に感染することによって発症する急性ウイルス性感染症。エボラウイルスは空気感染することはなく、感染者の血液や体液および排泄(はいせつ)物などに直接触れたり、それらに汚染された注射針などを介して感染する。エボラ出血熱(Ebola hemorrhagic fever:EHF)は長い間使われてきた疾患名だが、出血症状を伴わないこともあるため、近年ではエボラウイルス病(Ebola virus disease:EVD)の呼称が使われることも多い。ラッサ熱、マールブルグ病(出血熱)、クリミア・コンゴ出血熱、南米出血熱などとともに、ウイルス性出血熱(Viral Hemorrhagic Fever:VHF)とよばれ、致死性の高い感染症の一つとされる。日本では感染症法において1類感染症に指定されている。
エボラウイルスはマールブルグウイルスと同じフィロウイルス科に属するウイルスで、名前の由来は、最初の患者が中部アフリカのコンゴ民主共和国(旧、ザイール)を流れるエボラ川流域の住民だったことによる。自然環境でのエボラウイルスの宿主はコウモリと考えられており、ウイルスを保有しているコウモリに触れたり食したりすることでヒトに感染する。コウモリからサルなどの野性動物に伝播(でんぱ)し、そこからヒトに感染することもあると考えられる。
1976年にコンゴと南スーダンで流行をみたのが最初で、その後もコンゴやスーダンおよびガボンなど中央アフリカを中心に流行がみられ、さらに東アフリカのウガンダや西アフリカのギニアなどでも流行が報告されている。アフリカに流行が多いのは、葬式の際に死者の体に直接触れる風習によるところも大きいと考えられている。近年では2014年に西アフリカのギニアを中心に集団発生し、翌2015年にかけて複数国にまたがって流行するアウトブレイクが起こり、1万1000人以上が死亡している。
症状は通常2~21日の潜伏期間を経て、一般に突発的な高熱および頭痛、極度の倦怠(けんたい)感、筋肉痛や咽頭(いんとう)痛に始まり、嘔吐(おうと)や下痢などの消化器症状、肝臓でのウイルス増殖による肝腫脹(しゅちょう)から右季肋(きろく)部の圧痛や叩打(こうだ)痛をきたし、腎(じん)機能障害が生じることもある。さらに悪化すると吐血や下血ほか全身の出血傾向を呈するようになり、重症となると死に至る。致死率は50~90%とされる。
エボラウイルスに対するワクチンは、現在開発が進められており、WHO(世界保健機関)は、カナダ政府が開発したワクチンが、高い確率でエボラ出血熱を予防するとした臨床試験の結果を発表している(2016年12月)。このワクチンが実用化されれば、エボラウイルスの感染を防ぐ初めてのワクチンとなる。
[編集部]