日本大百科全書(ニッポニカ)

産後ケア
さんごけあ

出産後の女性の心身両面に対して実施される包括的な支援(ケア)。
 出産からまもない時期は、女性が十分に身体を休ませ、育児に適応していくための大切な時期であり、日本においては出産前後に実家に帰って実母をはじめとした家族に身の回りの世話をしてもらう「里帰り」という習慣がある。しかし、近年の晩産化(出産時の女性の高年齢化)により、里帰りをしたくても親もまた同様に高齢となっていたり、さらに上の世代の介護を抱えていたりなど、従来家族が担ってきた産後のケア機能が十分に果たされなくなっている状況がある。加えて、産後の入院期間の短縮化や、地域づきあいの希薄化、子供に接する経験が少ないままに親になる状況なども重なり、産後の身体や育児に負担や不安を抱えたまま女性が孤立してしまう状況が生まれている。
 こうした状況を背景に、産後のケアが社会的機能として求められるようになってきたことから「産後ケア」ということばが生まれ、2008年(平成20)には国内で初めて産後ケアを専門に行う宿泊施設(産後ケアセンター)が東京都世田谷(せたがや)区に開設された。これを皮切りに、2014年には厚生労働省が妊娠・出産包括支援モデル事業を創設し、産後ケア事業が開始されるなど、その必要性や重要性が少しずつ認知されてきた。
 産後ケアは個別性の高いケアであり、ケアを受ける女性のニーズに即した定型的でない柔軟な支援が求められる。現在、産後ケアが提供されているおもな場としては、民間や自治体が開設する産後ケアセンター(産後ケアを専門に行う施設)のほか、病院、診療所、助産所などがあり、助産師などの専門家を中心に、産後女性の身体の回復を図るための援助や授乳指導、新生児の世話、心理相談などのケアが提供されている。ケアの提供の形としては宿泊型、日帰り型、訪問型などがある。
[編集部]2019年1月21日