ジャパンナレッジは約1500冊以上の膨大な辞書・事典などが使い放題の「日本最大級のオンライン辞書・事典・叢書」サービスです。
➞ジャパンナレッジについて詳しく見る
  1. トップページ
  2. >
  3. カテゴリ一覧
  4. >
  5. 自然
  6. >
  7. 土・石
  8. >
  9. 地層
  10. >
  11. 年縞
日本大百科全書(ニッポニカ)

日本大百科全書(ニッポニカ)
年縞
ねんこう

湖底などに木の年輪のように泥などが1年ずつ規則正しく連続堆積(たいせき)した地層のこと。季節ごとに堆積する物質は湖によってさまざまで、1年分の厚さも地域によって数十マイクロメートルから数センチメートルまで幅がある。たとえば福井県の水月湖では春から秋にかけてプランクトンの死骸(しがい)など有機物が静かに堆積し暗い色に、晩秋から冬にかけては鉄を含む鉱物質が明るい色となって堆積するため1年ごとの縞(しま)が認識できる。黄砂や噴火による火山灰もみられる。
 年縞という用語は1980年代末、環境考古学者、安田喜憲(やすだよしのり)(1946― )が英語のvarveの日本語訳として創案した。年縞は世界各地でみられ、日本では一ノ目潟(秋田県)などでも発見されているが、福井県の三方五湖(みかたごこ)の一つ、若狭(わかさ)町にある水月(すいげつ)湖の年縞が世界の年縞研究にとってきわめて大きな存在である。
 水月湖の年縞は1980年代に開始された三方湖畔の縄文遺跡、鳥浜貝塚の発掘調査研究の一環として実施された水月湖の湖底ボーリングで1991年(平成3)に存在が確認された。長年にわたり泥の堆積が続けば湖は泥で埋まってしまうが、水月湖は東にある三方断層の活動により定期的に地盤が沈下しており埋まることがなかった。また直接流入する河川がないため鉄砲水などによる土砂や砂礫(されき)の流入、湖底の攪乱(かくらん)も経験していない。さらに水深が深く下層は酸素不足であるため湖底に魚類など生物が生存できない。これら偶然の条件が重なり年縞が形成されたため、水月湖は奇跡の湖ともよばれている。年縞は古環境を知る資料である一方、年縞に挟まれている植物の葉の放射性炭素(炭素14)の濃度によって正確な年代を知ることができる(放射性炭素年代測定法、炭素14法)。水月湖年縞は最上部から縞の数を正確に勘定することで、1年刻みの目盛りがついた「物差し」になる。その目盛りに対応する放射性炭素濃度の値というもう一つの目盛りが付けられれば、世界のどこで発掘された遺物でも放射線炭素の濃度を調べ、水月湖の年縞という「物差し」で照合すれば正確な年代決定が可能になる。完全な連続した年縞を得ることはきわめてむずかしかったが、2006年(平成18)、当時イギリスの大学講師だった中川毅(たけし)(1968― )がヨーロッパの研究者チームとともに水月湖の完全な年縞を得ることに成功した。湖底には世界で他に例をみない規模、45メートル、7万年分の年縞があり1年の欠けもなかっため、数年間の国際協力によって高精度な年代の「物差し」が手にできた。放射性炭素年代測定法では現在から1万3900年前までは木の年輪による正確な「物差し」が使われてきたが、1万3900年前から5万年前までの「物差し」は信頼性に問題があった。2013年、炭素14による年代較正の国際標準であるIntCal(イントカル) 13が水月湖の年縞のデータを採用したことで年代決定の信頼性は著しく向上、年代精度はプラスマイナス数十年まで向上している。
 2018年、福井県は水月湖年縞を展示するため三方湖畔の若狭町立若狭三方縄文博物館の隣に福井県年縞博物館を開館、年縞に含まれる花粉分析による古気候復元などの展示も行い、立命館大学古気候学研究センター福井研究所も併設されている。水月湖年縞は多くの教科書で紹介され、高校の入学試験にも出題されている。
[山根一眞]2019年9月17日

ジャパンナレッジは、自分だけの専用図書館。
すべての辞書・事典・叢書が一括検索できるので、調査時間が大幅に短縮され、なおかつ充実した検索機能により、紙の辞書ではたどり着けなかった思わぬ発見も。
パソコン・タブレット・スマホからご利用できます。
年縞の関連キーワードで検索すると・・・
検索ヒット数 16
検索コンテンツ
1. 年縞画像
日本大百科全書
福井県の三方五湖(みかたごこ)の一つ、若狭(わかさ)町にある水月(すいげつ)湖の年縞が世界の年縞研究にとってきわめて大きな存在である。 水月湖の年縞は1980年 ...
2. 年縞堆積物[考古学]
イミダス 2018
氷河堆積物や湖底堆積物には、1年ごとの堆積層位を識別できる場合があり、年縞(ねんこう)堆積物と呼ばれる。縞の数を数えることによって、高精度の年代を復元できると ...
3. 年縞の採取[百科マルチメディア]画像
日本大百科全書
水月湖の年縞(ねんこう)は、湖面に浮かべた櫓(やぐら)からのボーリングで得られる ©山根一眞 ...
4. 年縞の標本[百科マルチメディア]画像
日本大百科全書
三方湖畔の福井県年縞(ねんこう)博物館に展示されている水月湖年縞の標本 ©山根一眞 ...
5. 年縞の保存作業[百科マルチメディア]画像
日本大百科全書
採取した湖底の堆積(たいせき)層は、現場で速やかに切り出し、冷蔵保存する ©山根一眞 ...
6. 湖成層画像
日本大百科全書
う)な地域では、1対の葉理が1年の季節変化を示す縞状(しまじょう)堆積物が発達することがあり、年縞(ねんこう)とよばれる。とくに氷河湖底のものは氷縞粘土とよばれ ...
7. 水月湖画像
日本大百科全書
つ堆積する縞模様の地層、年縞(ねんこう)が1年の欠けもなく7万年分も残されていることが発見され、世界で他に例がないとして「奇跡の湖」とよばれるようになった。水月 ...
8. 水月湖[百科マルチメディア]画像
日本大百科全書
三方五湖(みかたごこ)最大の湖。湖底に7万年分もの堆積(たいせき)層(年縞(ねんこう))が残されていることが発見され、「奇跡の湖」とよばれている。写真は梅丈岳( ...
9. 水月湖[地球科学]
イミダス 2018
福井県三方郡にある湖。三方五湖の一つ。水月湖の湖底から採取された堆積物コアには明瞭な縞模様が認められ、年縞(varve)と呼ばれてきた。堆積物の縞模様は、春と秋 ...
10. はたけやま-よしのぶ【畠山義信】
日本人名大辞典
明治3年紀州特産の紋羽織を改良して軍服地用の紀州綿ネルの試作に成功。廃藩後は織物専業となり,5年縞(しま)ネルを考案,販売した。なお紀州綿ネル創製者については諸 ...
11. 氷縞粘土[地球科学]
イミダス 2018
の復元が行われている。こうした湖沼の堆積物の縞模様も1年に1セットできるものと考えられており、年縞(ねんこう)と呼ばれている。 [川上紳一・大野照文]2008  ...
「年縞」の情報だけではなく、「年縞」に関するさまざまな情報も同時に調べることができるため、幅広い視点から知ることができます。
ジャパンナレッジの利用料金や収録辞事典について詳しく見る

年縞と同じ地層カテゴリの記事
年縞(日本大百科全書(ニッポニカ))
湖底などに木の年輪のように泥などが1年ずつ規則正しく連続堆積(たいせき)した地層のこと。季節ごとに堆積する物質は湖によってさまざまで、1年分の厚さも地域によって数十マイクロメートルから数センチメートルまで幅がある。たとえば福井県の水月湖では春から秋にかけて
地層と同じカテゴリの記事をもっと見る


「年縞」は自然に関連のある記事です。
その他の自然に関連する記事
ソメイヨシノ(日本大百科全書・日本国語大辞典)
バラ科(APG分類:バラ科)の落葉高木。オオシマザクラとエドヒガンの雑種で、明治初年に東京・染井(現在の豊島(としま)区巣鴨(すがも)付近)の植木屋から売り出されたサクラである。初めはヨシノザクラとよんでいたが、奈良県吉野山のヤマザクラと混同されやすいので
鹿島槍ヶ岳(日本歴史地名大系)
後立山連峰のほぼ中央、立山町・宇奈月(うなづき)町・長野県大町市の境界にそびえ、角閃石岩や輝石安山岩からなる。標高二八八九・七メートル。南槍・北槍の両峰が並び立ち、両峰間の吊(つり)尾根も美しい双耳峰で、しかも多くの岩場を有する
五龍岳(日本歴史地名大系)
後立山連峰のほぼ中央部、宇奈月(うなづき)町と長野県大町市との境界にそびえ立つ雄峻な岩山。標高二八一四・一メートル。五竜とも記される。割菱状の岩壁が山体の東面を構成しているので割菱(わりびし)ノ頭(あたま)とよばれたが
白馬岳(日本歴史地名大系)
後立山連峰の北部にそびえる。標高二九三二・二メートル。山頂は朝日(あさひ)町と長野県白馬(はくば)村の境界をなすが、その山体は新潟県西頸城(にしくびき)郡にもまたがり、越中・越後・信濃の三国境の山という。信州側の古絵図に両替(りようがえ)岳とあるのは
天城山(日本歴史地名大系)
伊豆半島中央の東部を占める火山。万三郎(まんざぶろう)岳(一四〇五・六メートル)を主峰とする連山で、古くは狩野(かの)山と称したとされるが、天城山は狩野山を含む呼称で、狩野山は現天城湯(あまぎゆ)ヶ島(しま)町と中伊豆町の境の嵩田(たけだ)山(竹田山)付近
自然に関連する記事をもっと見る
ジャパンナレッジは約1500冊以上(総額600万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題の「日本最大級のインターネット辞書・事典・叢書サイト」です。日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。
ジャパンナレッジの利用料金や収録辞事典について詳しく見る