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早いもので昨日から弥生3月。花粉がそろそろ本格的な活動期に入ってきたそう。先月でも目が異常にかゆかったのに、えーっ、まだこれから、あなたがたは飛ぶんですか(;_:) かおるんです!
さてすでに1か月以上経ってしまったのですが、『図書館を変える! ウェブスケールディスカバリー入門』という単行本がジャパンナレッジライブラリアンシリーズ第一弾として出版されました。著者は佛教大学の図書館専門員、飯野勝則さん。
ウェブスケールディスカバリーとは、ウェブ上のデータベースや電子ジャーナル、電子ブック、そしてOPACなど図書館がもっている情報資源をまるでGoogleのように素早く検索できるというシステム。2015年12月現在、日本の大学図書館の14%が導入。飯野さんは海外製品のウェブスケールディスカバリーの日本化にいち早く取り組んだ第一人者。ご自身の経験、ウェブスケールディスカバリーの基礎知識はもちろん、日本の図書館の危機的ともいうべき現状や、図書館や図書館員の未来像にも触れています。
この本を作るにあたって、2回目か3回目の打ち合わせ。飯野さんにとても印象深い話をうかがいました。1901年、アンティキテラ島の沖合で見つかった、ある機械のお話です。
──1901年にギリシアのアンティキテラ島の沖合にあった古代船から2000年以上昔の金属製の機械が見つかった。発見当初、その機械についてほとんど理解することができなかったが、100年以上研究を積み重ね、じつはすごい機能が備わっていることがわかる。それは任意の日付における天体の位置や日食の起きる場所を示せるほどの高度な計算機能、「カレンダー・コンピューター」ともいわれるような機能だった。
たとえば「差動歯車」という技術の場合、これが歴史上再確認されるのはおよそ1300年後のルネサンス期。後世に受け継がれなかったこの技術、人類が取り戻すのになんと1300年かかったことになる──
このお話は、『ウェブスケールディスカバリー入門』のあとがきでも紹介していただきました。次のような文章が続きます。
「現代に生きる我々にとって、知識が失われることへの実感はあまりないかもしれない。だが『失われる』のではなく、『埋もれる』という視点で見たらどうであろう。世界中から発信される数多の情報が、その情報を本当に必要とする人々に届かなければ、その情報はもはや存在しないのも同じである。それが学術的な情報であったとすれば、その損失は計り知れない。目に見える形での知識の共有と継承がなされていくことこそが、科学を発展させる原動力に違いないと思うのである」
だからこそ、その仲立ちをする図書館員は大切な仕事なんだ、人類の歩みに直接かかわることができるやりがいと誇りに満ちた職業だ……飯野さんの図書館員に対する熱き想い、心を打たれます。
で、編集担当者である私。この本は図書館員さんだけじゃなく、出版社、データベース会社、研究者など知識を届ける側の人たちにも、ぜひ読んでほしいなと強く思っております。花粉でひぃひぃ言ってる場合じゃない! 宣伝、がんばらねば!
『図書館を変える! ウェブスケールディスカバリー入門』