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がまだせ、熊本!

2016-06-07

この日曜日に梅雨入りした東京地方、今日もまたどんより。しかし今年の東京のアジサイ、例年になくきれいなんですよね。かおるんです。

明治29(1896)年4月13日、夏目漱石は熊本の第五高等学校へ赴任するため、午後池田停車場(現・上熊本駅)に到着。そして翌4月14日、第五高等学校の英語科教授の嘱託をうけ就任。給金は月100円──

平成28(2016)年4月14日、熊本県熊本地方を震央とするマグニチュード6.5、益城町では震度7の地震が起こった(翌々16日の未明にマグニチュード7.3の本震が起き、益城町、西原町では震度7を観測)──

今年没後100年、来年生誕150年と記念年が続く文豪夏目漱石。そして今年、漱石は来熊(らいゆう)120年でもあるのです。今回の熊本地震はなんと、漱石先生が五高に赴任した日の120年後に起こったのです。

前震から1か月後の5月14日、地震で開催が絶望的だと思われていた「夏目漱石記念年オープニング式典」が無事熊本で開催されました。全国の漱石会による実行委員会が記念年を盛り上げようと、この2年間、各地で記念イベントを開催します。そのオープニングの重役を担ったのが、熊本というわけなのです。

鎌倉漱石の會の準メンバーであるかおるんも、もちろん参加。式典は熊本出身で漱石作品をクローズアップした著書『悩む力』で知られる姜尚中さんが基調講演を、そして女優で脚本家の中江有里さんと直木賞作家の出久根達郎さんが「漱石ってどんな人?」というテーマでトークショー。

あの冷静沈着な姜さまが、地震後初の地元での講演、そして敬愛する漱石先生の大事なイベントだからでしょうか、講演の出だし、顔を紅潮させながら話されていたのが印象的でした。またクールビューティーな中江さんも熊本にやっと来られたという思いで言葉をつまらせたり、いつも温和な出久根さんが面白エピソードをこれでもかこれでもかと連発、会場をドカーンと笑わせたり……講師陣それぞれが熊本への想いを高ぶらせ、活気に満ちたいい式典となりました。120年の時を超え漱石先生が開催につないでくれたような……そんな因縁も感じました。知事も副市長も多忙の中、顔を出してくれました。漱石イベント常連のくまモンに会えなかったのが唯一、残念でしたが。

鎌倉漱石の會では今回ツアーを組み、くまもと漱石倶楽部や草枕ファン倶楽部の多大なる尽力のもと、式典の前日に『二百十日』の舞台の阿蘇へ、式典翌日に『草枕』の舞台、玉名市小天温泉へと、バスで廻りました。かおるんは残念ながら阿蘇のみの参加でした。

バスツアーの道中、電車が地震後のまま線路で止まっていたり、多くの水田には水がなく田植えの準備ができていなかったり、阿蘇へは通常のルートで行けず、一部迂回をしながら入ったり……。

漱石が滞在した旅館、阿蘇の山王閣さんは温泉の湯が止まり、再開のめどが立たないとのこと。テレビでも報じられた阿蘇神社は江戸天保年間に建てられた楼門や拝殿は倒壊したまま。大観峰から眺める阿蘇の涅槃像も、一部の岩が崩落したようで、形がかわっているそう。休憩所のトイレの水は不通。バケツの水で、自力で流しました。

一方の熊本市内。熊本城を二の丸広場から見ましたが、石垣がいたるところ崩れ落ちていました。ホテルも営業しているところと閉鎖しているところがありました。青いビニールシートを敷いた屋根がそこかしこに見えました。

阿蘇から戻り、くまもと漱石倶楽部さんが開いてくれた交流会。鎌倉、松山、和歌山、そして熊本のメンバーが集いました。会場となったイタリアンレストランは壁が崩れ、修理を頼んでも一向に来ないので、ご主人が自分で直したとのこと。イタリアンはおいしく、ワインもおいしく、名スピーチがたくさん生まれました。熊本メンバーによるジャズライブを皮切りに、ハーモニカに独唱など、音楽による交流も生まれました。

「周りの人にどんどん、熊本に行ってね、と声をかけてください。それが、私たちの力になりますから」──熊本のメンバーからのメッセージ。復興にはまだまだ時間がかかりそうですが、人は元気だ、きっと大丈夫。

とにかく近々、また熊本を訪ねたいと思っています。

方言チャート「がまだせ!熊本・応援方言リレー」、やってます。
http://ssl.japanknowledge.jp/hougen/relay.html

2016-06-07 written by かおるん
ジャパンナレッジの「漱石右往左往」を担当し、熊本をはじめて訪れてから5年。熊本のものはとっても美味しいことを知った私は、このところずっとお米は「森のくまさん」。さて、そろそろスイカの季節。スイカといえば熊本。この夏は熊本産のスイカをいっぱい食べたいな。