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「チャイメリカ」から始める、Let’s think!

2019-02-28

さて前々回、かおるんは「おっさんずラブ」沼にハマって出られないと言っておりました。しかし、今夏に映画化が決定、そして、今年度中に第2期ドラマ放送が決定。次から次へと夢をかなえていただき恐縮していたこの2か月半。ついに先週、沼にハマっている最中にポチポチチケット予約をしていたはるたん役田中圭が主演する舞台「チャイメリカ」を世田谷パブリックシアターで観てきました。

タイトルの「チャイメリカ」とは、チャイナとアメリカを組み合わせた造語。

Chimerica(ジャパンナレッジ「プログレッシブ ビジネス英語辞典」より)
チャイメリカ[⇒中国と米国の経済的関係をいう合成語.経済歴史学者の Niall Ferguson と Moritz Schularick が2006年に提唱した.米国が中国から安価な製品を大量に輸入する一方で,中国は米国債を大量に購入して米国経済を支える,という奇妙な相互依存の関係を示唆する.語源は China + America だが,ギリシャ神話の怪獣キメラ(chimera)への連想もある]

しかし、お芝居は中国とアメリカの経済的関係にクローズアップしたものではなく、1989年6月4日に起きた天安門事件が題材です。

天安門事件(ジャパンナレッジ「情報・知識 imidas 2018」より)
中国の北京市にある天安門広場を中心に起こった民主化要求運動。1976年4月の第一次天安門事件(四・五運動)と、89年6月の第二次天安門事件(六・四事件)の二つがあるが、たんに天安門事件といった場合には第二次を指すことが多い。第二次天安門事件は、89年4月に、中国民主化の星と呼ばれた胡耀邦元総書記の追悼集会が開かれたことがきっかけとなった。集会に参加した大学生らを中心に、その後、市民や知識人などが加わり、政府に対する大規模な民主化要求デモが発生。運動を「動乱」と規定して戒厳令を敷いた政府と学生らの間でにらみ合いが続いた後、同年6月4日に人民解放軍によって武力での鎮圧が実行され、多数の死傷者が出た。中国政府発表の死者数は319人だが、全容はいまだに不明で、実際には発表を大きく上回る死者が出たという説も多い。武力弾圧の様子は諸外国のメディアでも大きく報じられ、中国政府は国際的な非難を浴びたが、こうした批判は内政干渉だとして強く反発した。

そう、あの天安門事件から今年で30年。あのとき、レジ袋を持ちながら、戦車の行く手を遮った男性、覚えてらっしゃる方も多いと思います。Tank Man(戦車男)と呼ばれたその男性は雑誌『TIME』で「20世紀もっとも影響力のあった100人」、またその光景を写した写真は『LIFE』誌の「世界を変えた写真100」に選ばれました。まさにこの写真が、舞台「チャイメリカ」誕生のきっかけとなったのです。

主人公はTankManの写真を撮影した報道カメラマン、田中圭演じるジョー・スコフィールド(もちろん架空の人物)。19歳の駆け出しのとき、現場に出くわした彼は、過去の栄光にとらわれたまま、報道カメラマンの仕事を続けていました。あれから23年経った2012年。アメリカは大統領選(オバマvsロムニー)真っ只中、そして中国は習近平体制が生まれる間近。満島真之介が演じる親友ヂァン・リンからTank Manにまつわる話を聞いたジョー。帰国後早速ニューヨークにいるはずであろうTank Manを探し、ジョーは街を駆けずり回ります。一方、小さなアパートの一室にこもり自身の記録を残しながら、次第に失望していくヂァン。静と動の2人を中心に、アメリカと中国、1989年と2012年を行き来しながら、16人の俳優が入れ代わり立ち代わり、38場面を演じていきます。

脚本は1984年生まれのイギリス人女性、ルーシー・カークウッド。彼女はこの作品でローレンス・オリヴィエ賞最優秀作品賞を受賞。「チャイメリカ」は2013年のイギリスの初演以降、アメリカ、オーストラリアで上演され、2019年、日本にやってきたのです。

自由な国でありながら、権力者相手にものも言えなくなりつつあるアメリカのジャーナリズム。GDP2位に躍進しながら、自分の吸う空気のことですら声をあげられない中国の市民。世界の陸地面積の10分の1強、そして世界の人口の4分の1という広大な“チャイメリカ”。その中で必死に生きる、か弱き人間たちのありようを丁寧に描いた3時間弱。

日本版の演出家、栗山民也氏がパンフレットに寄せた談話は「作者が提示した疑問や不安、怒りに対し、危機感を持って思考する。劇場は、そういった新たな視点を獲得できる場所でもあるのだ」ということばで締めくくられています。楽なほうへ流されないで、思考停止にならないで、真実を見る眼を養って──北京、ニューヨーク同様、混沌と化していく東京での強烈なラストシーン。カークウッドのことばが聞こえた気がしました。

2019-02-28 written by かおるん
時を同じくして世田パブのお隣、シアタートラムでは、「おっさんずラブ」の相手役林遣都さんの舞台が上演。三島由紀夫作の戯曲「熱帯樹」。チケット争奪戦、見事に敗れました。ぐすん。こちらも素晴らしい舞台だそうです。

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