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幕末がよくわかる!「青天を衝け」

2021-07-09

大河ドラマ「青天を衝け」はご覧になっているだろうか? 24年度から1万円札の顔になる“日本資本主義の父”渋沢栄一が主人公。1年間、大河をずっと見続けるのはとっても苦手なかおるんだが、今回は(といえどもまだ前半戦ではあるが)、ほぼ欠かさず見ている。

「麒麟がくる」と「鎌倉殿の13人」にはさまれて、キャスト的にも話題的にもちょい地味な感じなんかなあと思っていたが、いやいやどうして、この作品、毎回見たくなるのである。

まずは、吉沢亮演じる栄一。農民から尊王攘夷の志士になった栄一は堤真一演じる“おかしれぇ”平岡円四郎にスカウトされ、一転、一橋の家来となる。彼には生まれつきの商才があるから、武士というよりは金勘定のほうでメキメキ頭角をあらわし、慶喜にも認められ、なんと次回7月10日放送分からは次期将軍候補の昭武の後見役としてパリに行く。

そして慶喜。265年も続いた徳川幕府を終わらせた張本人だし、鳥羽・伏見の戦いで逃げちゃった暗君なんかと思いきや、草彅剛演じる慶喜は頭が超冴えていて、物腰も柔らかく、学もあり、人格者である。渋沢の才能を見抜いた人でもある。ほんともっと前に幕府を任されていたら立て直せていたかもしれない。現在、かおるんの上司にしたいナンバー1である。

坂本龍馬、高杉晋作、近藤勇、勝海舟といった幕末の派手な人たちがまったく出てこないのも特徴的。しかしながら毎回毎回幕末に関わった重要な人たちが、かわるがわる出てくる。家慶、家定、家茂といった幕末の将軍たち(磯村勇斗演じる家茂はほんとよかった)をはじめ、烈公こと徳川斉昭、藤田東湖、武田耕雲斎、高島秋帆、川路聖謨、小栗忠順、福地源一郎といった面々。なかでも山内圭哉演じる岩倉具視はヘタレ度合がすごくて、超おもしろい。江戸文化歴史検定で毎回頭を悩ませていた幕末の群像劇が、英雄たちがいないから逆にスッキリ整理される。今年も江戸検があれば、もうちょい点がとれたよなあ、ほんとに残念だ。

そして楽しみなのは北大路欣也演じる家康公が解説を担っている。いやいや、これって渋沢栄一のお話ですよね? しかも幕末から明治のお話ですよね? 初回、画面の中の北大路さんに思わず話しかけてしまったが、慣れは恐ろしいものである。今夜は何を解説してくれるんだろうかとワクワクしながら、毎回出番を待っている。「こんばんは、徳川家康です」から始まる時間は、絶妙なブレイクタイム。こういった構成も素晴らしいと思う。

そして前回、ようやくどうして家康公が出てくるのか、合点がいった。
15代将軍となった慶喜と栄一が微笑みながら一緒に家康公の御遺訓を唱えるシーンがあったのだ。確かにこの御遺訓、めっちゃ「声に出して読みたい日本語」である。最初のほうはお江戸ルほーりーこと堀口茉純さんと長年仕事をともにしているので知っていたが、でも素晴らしい続きがあったのだ。

全部通しで読みたいと思ったら、ジャパンナレッジ「東洋文庫」にありました! 江戸後期の儒学者松崎慊堂の『慊堂日暦 4』から、天保7年10月15日の日記内の「神祖の御筆」と題し、書きとめてあった。実際の御遺訓とちょっと違うのもご愛嬌、ということで。(参考までに久能山東照宮の東照公御遺訓→https://www.toshogu.or.jp/about/goikun.php

人の一生は重荷を負うて遠き道を行くごとし、いそぐべからず。
不自由を常とおもえば不足なく、心に望みおこらば困窮したる時を思い出すべし。
堪忍は無事長久のもとい、怒りは敵とおもえ。
勝つことばかり知りて負くることを知らずば、害その身にいたる。
おのれを責めて人を責むるな。及ばざること、過ぎたるよりまされり。

さて、ドラマはこれからもっともつらい、慶喜の代に入っていく。栄一の生涯の相棒、高良健吾演じる渋沢喜作らが直面する戊辰戦争はどう描かれるんだろうかと切なくなる一方で、果たして維新後、栄一の活躍、慶喜の多趣味はどう描かれるんだろうか、そして家康公は出てくるのかな、といろいろ気になります。

2021-07-09 written by かおるん
そういえば、日本橋の揮毫は慶喜公でしたな。