レモンゆ【ー油】
読者カード 用例 2022年07月27日 公開
用例: | 自分には初めての珍らしい飮料を飮まされた。コップに一杯の砂糖水をつくつて、その上に小さな罎に入つた茶褐色の藥液の一滴を垂らすと、それがぱつと擴がつて水は乳色に変はつた。飮んで見ると名狀の出来ぬ芳烈な香氣が鼻と咽喉を通じて全身に漲るのであつた。何といふものか聞くと、レモン油といふものだと敎へられた。今のレモン・エッセンスであつたのである。明治十七八年ごろの片田舎の裁判所の書記生にしては實に驚くべきハイカラであつたに相違ないのである。 |
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『重兵衞さんの一家』 1933年1月 寺田寅彦 | |
語釈: | 〔名〕レモンの果皮から冷圧によって得た精油。淡黄色で主に清涼飲料・菓子などのエッセンスに用いる。 |
コメント:第二版では辞書類(1873)以外に文例が載っていないので。使い方の一例が分かる例なので。初出(昭和八年一月、婦人公論)とあります。
編集部:第2版では、『薬品名彙』(1873)の例が添えられています。
著書・作品名:重兵衞さんの一家
媒体形式:単行本
刊行年(月日):1933年1月
著者・作者:寺田寅彦
掲載ページなど:34ページ本文3行目〔『寺田寅彦全随筆四』、一九九二年三月四日第一刷発行〕
発行元:岩波書店