やぶそば【藪蕎麦】
読者カード 用例 2021年10月10日 公開
用例: | ざるそばを書家の籔そばと書きて與へしに、世俗はこれを「やぶそば」と読み、後には其店も數竿の竹を植ゑて標となせる如きことあるに至る。笑はしきも亦甚しきなり。蕎麦何ぞやぶと相關はらん。やぶは藪なり、艸に從ふべし。籔はざるなり、ざるは竹に从ふべし。此類和漢甚だ多し。 |
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『蘭亭文字』 1937年7月 幸田露伴 | |
語釈: | 〔名〕「藪」の名を冠称する蕎麦屋の系統でつくるそば。甘皮をとらずにひいたそば粉を使用するため、薄緑色をしている。 |
コメント:ざるそばを「籔蕎麦」と書く用例が近世以前にあると面白いが、未見なので(国研歴史コーパスにもなし)、とりあえず、一つの語源説として。
編集部:「管」と「菅」のように、竹冠と草冠を混同する例は少なくないので、「籔(ざる)」を「藪(やぶ)」と読んでしまったのではないかとする説ですね。ご指摘のように「ざるそば」を「籔蕎麦」と書いた近世の例があるかどうかが鍵となってきそうですね。ちなみに、第2版では「やぶそば(藪蕎麦)」の初出例は、俳諧『文化句帳-四年』(1807)正月から「藪蕎麦のとくとく匂へかへる鴈」が引かれています。
著書・作品名:蘭亭文字
媒体形式:その他
刊行年(月日):1937年7月
著者・作者:幸田露伴
掲載ページなど:423ページ後ろから1行め〜424ページ3行め〔『露伴全集〈第19巻〉考証』、1979〕
発行元:岩波書店