トヨタ自動車が『ドラえもん』で展開しているCMシリーズは、ジャン・レノの起用など、良い意味で「やりたい放題」。だが、クリエイター側には国民的キャラたちに対する「愛」が感じられる。妻夫木聡の「のび太」と水川あさみの「しずか」は、本家アニメから20年後という設定。相変わらずダメなのび太を決して見放すことがないしずかの姿に、なんだかホッとさせられる。そんなリアルな雰囲気を醸し出しているのは、役者の力か。

 原作のしずかはおてんばなところもあるが、マスイメージとしては「包容力のあるお嬢さん」であろう。たとえば、のび太のような相手でも、その人なりの美点をちゃんと理解してあげられるような心根がある。そのキャラクター性を活かした、ユニークなスマホの無料アプリが話題になっている。その名も「しずかったー」。トヨタ自動車が新型「パッソ」のキャンペーンの中で公開したものだ。SNSの投稿の中で、ネガティブな言葉や悪口を「キレイな言葉」に変換してくれる。例を挙げれば、「死ね」は「生きろ」、「嫌い」は「将来的には好きになるしかない」、「頭悪い」は「大器晩成」などなど。悪口雑言が氾濫するSNSの現況を逆手に取った、楽しいアイディアである。この変換は「LOW」「MIDDLE」「HIGH」と程度を選ぶことができ、違いを見比べてみるのも楽しい。ちなみに、「車」が「パッソ」と変換されるのはご愛敬。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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