「独りぼっち」と「充実」を組み合わせた造語で、「独りだけの生活が充実している様子、あるいは独りを楽しむ若者のこと」を指す。

 独りでカフェやレストランやディズニーランドなどに行ったり、独りラーメンや独りカラオケをしたりしてそのさまを写メに収め、一方通行的にSNSへアップしたりするのがスタンダードな生息パターンであるらしい。

 類似語に「ソロ充」ってやつもあるそうだが、「ソロ充」の場合「友だちはいるけど、あえて他人とつるむことを積極的に拒否する」のに対し、「ぼっち充」の場合は「友だちがほぼ皆無で、結果的に他人とつるめない」のが最大の違いだと言われている。

 昨今主流となりつつある「無理して生身の人間と会わなくてもSNSでつながっているから大丈夫」といった発想が、独りぼっちへの耐性が強い人材を量産する要因とされているが、「ぼっち充」が、どちらかと言えば若者のあいだでさえ否定的なニュアンスで使用されている点から判断するかぎり、まだまだ仙人のように完全無欠な孤独をあっさりと受け入れることができる“新人種”はごく一握りの少数派でしかないと推測される。

 ちなみに筆者は、基本独りで原稿を書く毎日をすごしているが、すぐ寂しくなってしまうので、じつはメールで済ませることができる打ち合わせも、なるべく先方を喫茶店や飲みに誘いがちで、おそらく相手からすれば“チョット迷惑なヒト”だったりする。つまり全然「ぼっち」が「充」ではないのである。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


山田ゴメス(やまだ・ごめす)
日曜日「ゴメスの日曜俗語館」を担当。大阪府生まれ。エロからファッション、学年誌、音楽&美術評論、漫画原作まで、記名・無記名を問わず幅広く精通するマルチライター。『現代用語の基礎知識』2005年版では「おとなの現代用語」項目、2007年版では「生活スタイル事典」項目一部を担当。現在「日刊SPA!」「All About」の連載やバラエティ番組『解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ)の相談員で活躍。著書に『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)など。趣味は草野球と阪神タイガース。
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