日常のスナップはスマホのカメラ機能で、という感覚が強くなり、デジタルカメラの市場が奪われているという。その一方で、使い捨てカメラ(正確には「レンズ付きフィルム」といわれる)の代名詞・「写ルンです」(富士フイルム)が若い世代のあいだで注目されている。1986年に発売を開始した「写ルンです」は今年で30周年。記念すべき年に人気が復活したことは、じつに奇妙な現象だ。

 2010年代のはじめ、使い捨てカメラはすっかり「役割を終えた」と考えられていた。言うまでもなく便利なデジカメが隆盛を迎えたからだ。ところがいま、若者が「写ルンです」を支持する理由は、むしろ不便なところにあるという。たとえば、撮影してもすぐには見られない。上の世代には当たり前であった現像してみるまでのワクワク感が、下の世代には「新しい」となるわけである。また、デジタルの画像加工が当たり前の昨今、フィルムによる「写真の味」は加工にはかなわない本格的なものがある、オシャレだと受け取られている。

 スマホやデジカメも高価なもの。家族で遊びに行く際、子どもに持たせるには使い捨てカメラだと不安がない、とする声もあるようだ。世の中、時を経てようやく見えてくる魅力というものが存在するらしい。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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