ナンセンスだがふしぎと耳に残る。ウケる笑いというものは昔からそうしたものかもしれない。『PPAP』こと「ペンパイナッポーアッポーペン」がいま、ワールドワイドな話題を集めている。シンガーソングライター「ピコ太郎」が動画サイトで発表した楽曲……というよりは「音楽ネタ」である。かのジャスティン・ビーバーが推したことをきっかけにブレイクを果たした。

 「アイハバペーン(I have a pen.)」で始まる歌詞は平易な英語。珍妙なダンスもマネがしやすい。当然、動画上でパフォーマンスを再現するユーザーも多く、人気に拍車を掛けた。

 笑いの世界では「設定」が大事なのに無粋を承知でいえば、ピコ太郎の正体は芸人の古坂大魔王(公的にはプロデューサーということになっている)。かつてのお笑い番組『ボキャブラ』シリーズでは、底ぬけAIR-LINEのメンバーとして人気者だった。

 「なぜ世界に通用したのか」という分析がメディアでは盛んだが、まず重要なポイントは、古坂大魔王は、一時期お笑いを休止するほど音楽の世界に本気だったということ。そして、近年のテレビでこそ存在感を発揮できなかったが、もとより芸人仲間のあいだでは高い評価を得ていたという事実だ。その両輪がうまくまわって、ネット時代にようやく走り出した。いわゆる「ボキャブラ芸人」たちは一過性のブームとして語られることもあるが、まだまだ実力派が埋もれていそうだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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