倉本聰が脚本を手がける高齢者向けの連続ドラマ『やすらぎの郷(さと)』(テレビ朝日系・平日12:30〜の20分枠)をこう呼ぶ向きがある。

 テレビの「ゴールデンタイム」にちなんだ(と思われる)「シルバータイム」だが、平日の昼12時過ぎを、いくら高齢者の方々は仕事や家事をリタイアしているケースが多いとはいえ、「シルバーなタイム」と断じてしまうのはいかがなものか……と、筆者個人としては思わなくもない。もっとシンプルに「シルバードラマ」で良いのでは?

 物語の舞台は、海辺の高台にある「やすらぎの郷」という名の老人ホーム。入園できるのは、かつてテレビ界で一世を風靡した芸能人やドラマの作り手だけという設定のストーリー。そこで起こる様々な人間模様がユーモラスに描かれる。役者には石坂浩二・浅丘ルリ子・加賀まりこ・有馬稲子・八千草薫……と、錚々たるメンバーを揃えている。視聴率は好調で、4月3日からの初週は平均7%台をマーク。他局の同枠の番組(日テレ系「ヒルナンデス」、TBS系「ひるおび」、フジ系「バイキング」)をおさえてトップになることもしばしばだ。

 最近、ドラマでは水谷豊・小日向文世・柴田恭兵・松重豊……ほか、「中年」と言うよりは「初老」俳優陣の活躍がにわかに目立っているが、露骨なシルバー向けドラマってやつは、これまで案外ありそうでなかったような気もする。あの弘兼憲史(ひろかね・けんし)センセイは、すでに20年以上も前から『黄昏(たそがれ)流星群』で、実験的な試みとしてシルバー層をターゲットとする漫画を描き続けているにもかかわらず、だ。この「遅さ」はやはり、とりあえず現時点ではまだ、一番マスなメディアであるテレビの宿命なのかもしれない。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


山田ゴメス(やまだ・ごめす)
日曜日「ゴメスの日曜俗語館」を担当。大阪府生まれ。エロからファッション、学年誌、音楽&美術評論、漫画原作まで、記名・無記名を問わず幅広く精通するマルチライター。『現代用語の基礎知識』2005年版では「おとなの現代用語」項目、2007年版では「生活スタイル事典」項目一部を担当。現在「日刊SPA!」「All About」の連載やバラエティ番組『解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ)の相談員で活躍。著書に『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)など。趣味は草野球と阪神タイガース。
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