日本の多種多様な菊は、大菊、古典菊、小菊などに大別することができる。嵯峨菊は古典菊の一種。古典菊では肥後菊や美濃菊などが有名であり、江戸時代に各地の大名が保護奨励して大切に品種改良を重ねた地域独特の園芸種が名を連ねている。だが、嵯峨菊の発祥は平安時代に遡り、大覚寺・大沢の池に自生していた野菊を農民が栽培したことからであったといわれている。そして、献上された嵯峨菊を愛でたのが、9世紀初頭に政治で敏腕を振るい、当時最高の文化人といわれた嵯峨天皇である。嵯峨天皇が晩年を過ごし、嵯峨御所や嵯峨離宮ともいわれる大覚寺では、菊としては開花の遅い嵯峨菊を、11月を通して錦秋への移り変わりの中に楽しむことができる。

 奥の深い観賞菊の世界は、ちょっと見方を知っていると見るのが楽しくなる。嵯峨菊には独特の仕立て方(栽培方法)があり、これを箒(ほうき)作りという。箒作りは、茎の長さを1.5~2メートルほどに細長く成長させ、栽培する方法で、まるで逆さまにした箒のように育てられる。この細長い茎の先端に、細い花びらが茶筅(ちゃせん)を立てたようにして花が咲く。嵯峨菊は複数の鉢植えなどを並べて観賞し、立寄(たちよ)せという、花弁が平行に咲いている姿が理想とされている。そして、花を見るときは全体を四季に見立て、先端の花弁部分を春、緑の葉を夏、やや赤く色づく下側の葉を秋、茎だけの根元近くを冬として眺めることで、出来映えや作者の意図がよく見えてくる。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 このところ「老後破産」という言葉が週刊誌で目につく。嫌な言葉である。

 私を含めて、長い付き合いのあるフリーライターの多くがこうした事態に直面しているから、なおさらである。

 私事で恐縮だが、私が講談社に入社して『週刊現代』編集部に配属されたのは1973年の春だった。当時の『現代』のライター(データマン)の多くは大学時代に学生運動にのめり込み、除籍や退学になった強者たちだった。

 テーマが決まれば取材先に飛び出していって、締め切りの夜は「馬に喰わせるほどのデータ原稿」を書きまくった。当時はペラ(200字)1枚いくらという払い方をしていたから、内容はともかく多く書いたほうがカネになった。

 取材力よりも腰の軽さが買われ、私の給料の何倍も稼ぐ若い記者たちがいた。だがこの商売、歳を重ねると収入が増えるという仕組みにはなっていない。大宅賞などを受賞した書き手でも、大御所過ぎて使いにくいと敬遠されて仕事がこないこともままある。

 60歳を超えるとさらに仕事は激減する。私と同年代で何とかやっているのは、奥さんが公務員など現役で働いている人が多い。若いころ稼いだカネを貯めていて、老後の暮らしを立てているというライターはほとんどいないと思う。

 東京近郊に住んでいる某ライターは、電車賃がないといって都内に出てこないし、某先輩ライターは、家で倒れて奥さんが救急車を呼んだところ、救急隊員に「カネがないから病院には行かない」と苦しい息の下で言い張った。

 このようなライター哀話は枚挙にいとまがないから、この辺で『週刊文春』(10/30号、以下『文春』)と『週刊現代』(11/1号、以下『現代』)の「老後破産」の記事について見てみよう。

   『文春』では千葉市郊外に住む65歳になる山田清志氏(仮名)のケースが紹介されている。山田氏は上場企業にいて年収は1000万円近くまでいったという。妻も働いていて月収40万円あったそうだ。

 94年、44歳の時に二階建ての建て売りを購入。頭金を1000万円入れて3900万円の35年ローンを組んだ。月々12万円で年2回のボーナス時に30万円。住宅ローンが払えなくなるとは夢にも思わなかったという。

 だが定年を迎えるころに退職金が減額されて1000万円に届かず、再雇用の条件も悪くなった。定年を迎えてから人生が暗転する。妻が病気になり、医療費はかさむが収入は大幅に減り、貯金を取り崩して5年頑張ったが、とうとうボーナス時の30万円が払えなくなってしまった。

 やむなく自宅を売却したが600万円もの借金が残ってしまった。債権者と交渉して月3万円の返済にしてもらったが、それでも月20万円の年金だけでは、いずれ自己破産するしかないかもしれないと話している。投資もギャンブルも浮気さえしたことがないのにと肩を落とす。

 全国住宅ローン救済・任意売却支援協会の佐々木延彦代表によれば、破綻の相談は今年に入って、昨年の倍の年間1000件に達する勢いだという。破綻に至る理由は、高額購入、退職金の減額、リストラ、病気、離婚など様々だが、相談に来る人たちに共通するのは、ローンを組むときに破綻を想像した人は一人もいないということである。

 ほかのケースも山田氏と似たり寄ったりで、年収や退職金が右肩下がりになることを、ローンを組む時点では想定していなかった。

 佐々木代表は「住宅ローンは、頭金三割を用意して、返済額は月収の二十%に抑えるべき」だとアドバイスをするが、われわれの世代ではもはや手遅れである。

 この中にも住宅ローンの滞納で家を強制競売にかけられたケースが出てくる。妻が今いる家から離れたくないと言い張ったため、売る時期を逸してしまったのだ。競売を待つのではなく、債権者と交渉して裁判所を通さずに売却して借金を整理する「任意売却」というやり方もあるそうだ。

 これも私の友人のライターの話だ。彼は私より少し上で、事件ライターとしては一流だった。その彼がしばらく前に私を訪ねてきて「悪いけど600万貸してくれ」といきなり切り出した。

 そんな大金を右から左に動かす財力もないが、事情を聞いてみた。彼は女房と離婚して湘南のほうで一人暮らしだったが、なかなか書いた本も売れず、サラ金に手を出したのだ。それが積もり積もって600万円にもなり、家が競売にかけられるというのだ。

 競売にかけられれば彼の手元にはほとんど残らない。何とかしてくれというのだが、私にもいい知恵が浮かばない。

 そこで不動産にくわしい私の友人に相談し、不動産を手広く扱っている若い友人にも相談したが、競売の時期が迫っているので打つ手は限られていた。

 そこで一か八か、競売に友人が入札しようと言い出した。ライターの家はやや立地に難があるものの資産価値は1500万円ぐらいはあるという。そこで競売と同時に1200万円ぐらいで入札し、運がよければそれを超える買い手が現れるかもしれないというのだ。

 もしダメだったら友人の不動産屋が買い取ってくれると言ってくれた。その狙いは見事にあたり1400万円ほどで落札されたのである。

 彼の手元には6~700万円ほどが残ったのではないか。もちろん大変な喜びようで一夕、中野駅近くの日本料理屋で歓待してもらって、深夜までカラオケを一緒に唄った。

 神奈川県の厚木のほうの古いアパートを借り、これから心置きなく執筆に専念すると笑顔で別れた。

 それから2週間ぐらい後、酔って帰ってきたのだろう、家に入って何かに躓き、硬いものに頭をしたたか打ち付け、大家が発見したときは死んでかなりの時間が経っていた。

 「老後破産」という言葉を見るたびに彼のことが思い出される。

 『現代』では、リタイアした後「オレはずっとこれをやりたかったんだ」と言い出し、300万円もするヨット買ってしまった男や、九州の古民家に引っ越して椎茸栽培をやると、妻が反対するにもかかわらず移り住んでしまった男、早期退職してソバ屋になると言い出した男などの話が紹介されている。

 こうした定年後は自分のやりたかったことをやるという“夢見る夢男”タイプが、老後破産予備軍だというのだ。

 私にも退職後にやりたいことがあった。それは高校時代にやっていたエレキギターを正式に習うことだ。退職金からカミさんがエレキギター代として30万円をくれた。

 これだけあれば若いころ憧れたフェンダーのギターが買えると喜んだが、いつの間にかそのカネは飲み代となって消えてしまった。

 『現代』には「『熟年離婚』指数が分かるチェックシート」というのがある。定年後「田舎暮らしがしたい」などというこだわりがあるか、セックスの相性は、家事への参加度は、妻との人間関係は、などの設問がある。自己採点したら30点以下。ひどい夫で、離婚を言い出されても仕方ないと出た。そうだろうなと頷くしかない。

 『週刊ポスト』(10/31号)によれば、官僚たちが進める年金額引き下げの「企み」が着々と進行していて、年金受給年齢を70歳にまで引き上げようとしているという。さらに「マクロ経済スライド」という仕組みで、物価が2%上昇しても受給額は1%ほどしか増えないそうだ。

 たとえば現在、夫70歳妻65歳で月に20万円の年金があるとすると、10年後には18万円になってしまうそうだ。

 この国の政治家や官僚たちの「本音」は、年寄りはダラダラ長生きしてはいけないということなのだ。年寄り冷遇ランキングというのがあれば、この国は間違いなくナンバー1になる。そのうち本気で「姥捨て山」「爺捨て山」をつくるかもしれない。長生罪を議員立法で成立させるかもしれない。勝新の座頭市の台詞ではないが「嫌な渡世」じゃござんせんか。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 今週は週刊誌らしい記事を3本取り上げてみた。小渕優子の政治資金問題を取り上げるのも週刊誌の柱の1本だが、そういうスクープがないときは、読者の素朴な怒りを代弁する記事やテレビ、新聞が絶対扱わない皇室もの、そして私が現役時代に担当した風俗情報などが部数の下支えになる。

第1位 「巨人“CS『敗退』戦犯”坂本&澤村が4連敗の夜に六本木で『ハイタッチ』合コン」(『週刊ポスト』11/7号)
第2位 「日本一高級なソープランドで人生観が変わった!」(『週刊現代』11/8号)
第3位 「美智子さまが憂慮される愛子さま『独りぼっちの特別授業』」(『週刊文春』10/30号)

 『文春』と『新潮』は皇室についての記事が多いことはみなさんよくご存知だと思う。これまでは雅子妃バッシングが中心だったが、ここへきて愛子さん批判も目につくようである。
 まだ中学1年生なのだから、温かく見守ってあげればいいのにと私などは思うのだが、『文春』は巻頭で美智子皇后も愛子さんに「セラピーが必要」ではないかと漏らされたと報じている。
 『文春』が目撃したところ、二学期が始まった9月6日以降でも、遅刻が4回、欠席が2回、9月26日以降は3週連続で午後から登校したという。しかも登校してもクラスでほかの生徒と一緒ではなく、特定の科目ではマンツーマンで授業を受けているというのだ。
 こうしたことを知った美智子皇后が千代田関係者にこう口にしたというのである。

 「十月に入り、皇后さまは愛子さまについて、セラピーが必要な段階に来ているとはっきり仰いました。(中略)  愛子と話していても、愛子にとって適切な対応が取られているようには思えない、ということでした。皇后さまからご覧になって、愛子さまのお側には適任と思われる臨床心理士や児童や思春期の問題に詳しい専門家はいらっしゃらないというお考えなのです」(東宮職関係者)

 このようなことを皇后が漏らしたのだとすれば憂慮すべき事態だとは思うが、雅子妃の病状もなかなか回復しない中で、あまり騒がないほうが愛子さんのためにもいいのではないか。
 いつもこうした記事を読んで感じることだが、われわれ国民ができることは、温かく皇太子一家を見守ることしかない。どこの家庭でも少なからず問題はある。皇室とて例外ではないのだから。

 第2位。お次は『現代』の「お家芸」といえる風俗記事、高級ソープランドの体験記だ。吉原の高級店でも120分で8~10万円が相場だという。だが、このソープは200分で17万円。
 私が驚くのは値段もそうだが3時間20分という時間の長さである。そんなに長い間保つのかいな。それもこのセックス担当記者は52歳だというのに。
 だが、そんな心配も女優・新垣結衣(あらがき・ゆい)似の美女の至れり尽くせりのサービスで杞憂に終わる。
 何しろ会ったとたんに「即尺」(説明は省く)、別の部屋に行って服を脱がされ全身を舐め舐めされ挿入して1発。
 一息ついて身体を隅々まで洗ってもらっているうちにムラムラときて2発目。ビールを飲んだりしながらローターと小型マッサージ機で彼女をコーフンさせて3発目。マッサージが得意だという彼女に揉まれているうちにモコモコしてきて4発目。
 行き帰りは送迎付きだそうだが、この記者氏、帰宅後に彼女のことを思い浮かべて一人でもう1発したというのだから、計5発。この御仁相当な性豪である。
 読んでいるこっちが疲れ果てる。いやはやご苦労さん。

 第1位。私は由緒正しい父子二代の巨人ファンである。私はCS(クライマックスシリーズ)廃止論者だ。
 長いシーズンを戦ってせっかくリーグ優勝を果たしても、今年の巨人のようにCSで負ければ日本シリーズに出られない。
 これでは何のためのペナントレースなのか。目の肥えた野球ファンならシーズン後半の見物は3位4位争いになるはずだ。
 大リーグと違って6チームしかないリーグで3位までがCSに出られるというのでは、やっている選手はともかく、野球ファンは熱が入らない。
 パ・リーグもソフトバンクがリーグ優勝しながらCSで涙をのんだことがある。
 昔、広岡達朗氏に話を聞いたことがあった。彼は名選手でもあったが監督になっても名監督と謳われた。
 その広岡氏が、日本シリーズのような短期決戦は監督の頭脳が試合の行方を左右するのだと言っていた。
 短期決戦だからといって初戦からしゃにむに総力戦で戦おうとすると、後半までもつれたとき手のうちようがなくなってしまうというのである。第1戦を勝つことは重要だが、もし負けても2戦から7戦までをどう戦うかを組み立て、落としてもいい試合は戦力を温存して戦うのが、優れた監督だと言う。
 今年の巨人はリーグ優勝しながら、CSでは阪神に全く歯が立たなかった。原辰徳監督というのはあまりほめられた監督ではないと、私は思っている。それは、チームが不調の時、どう戦うかという戦略がないからである。
 バッティングは水ものだからアテにはできない。投手のローテーションを綿密に組み立てることができなければ、短期決戦は勝てない。
 ここ数年、ペナントレースはほとんど見ないがCSと日本シリーズは、巨人が出ていなくても見るようにしている。
 それは試合が真剣勝負だからだ。巨人が惨敗したから言うのではないが、阪神とのCSはつまらなかった。投手の不出来はいうに及ばず、打者に相手投手に向かっていく闘志が感じられなかったからだ。野村克也氏の言うとおり、勝ちに不思議の勝ちはあるが負けに不思議の負けなしである。

 そんな不甲斐ない戦いをした巨人の中心選手が、『ポスト』によれば、CS敗退の夜に六本木のクラブに現れ、VIPルームで女の子たちと合コンをしていたというのである。
 あの日私はあまりの情けない負け方に酒を飲む気にもならず、ふて寝してしまった。なのにである。巨人ファンには許しがたい「蛮行」である。
 その二人とは坂本勇人(はやと)内野手と澤村拓一(ひろかず)投手である。その上阪神の選手も一緒だったというのだからなにをかいわんやである。
 坂本選手はVIPルームから出てこなかったというが、澤村投手は「ガンガン飲んで酔っ払った勢いで店内中央のダンスフロアに向かい、一般客に交じって踊りまくっていました」(常連客)
 澤村は今年二軍落ちするなど戦力にならず、CS第2戦でも先制点を与え、5回には危険球を投げて退場になっている。
 私のような巨人ファンがその場にいたら、何という無様な負け方だと一言言ったかもしれない。巨人軍は球界の紳士たれという教えも、この連中は聞く耳など持たないのであろう。
 巨人とヤンキースがあまり強すぎて「くたばれ!」とののしられた昔が懐かしい。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 育児に積極的な「イクメン」がいる一方で、仕事一辺倒で、家事も育児も帰宅後のことは何もしない夫がまだまだ多いという。この手合いは、自分の服を自分で洗濯機に入れるといった、ささいな日常の行動すら苦手である。あまりにも行動を起こさない、「無」だというので「ゼロメン」と揶揄されている。中には、本当に仕事に疲れ切って家のことはできない場合もあるだろうが、「ゼロメン」のニュアンスは「できるのにしない」、妻がするべきことは夫がすることではない、という思想にもとづくことが多い。

 以前にイクメンをおもんぱかる会社の上司、「イクボス」を紹介しているが、その逆があって、部下が育児休業をとるなど言語道断というタイプがいる。「ブラック企業」とまでいかなくとも、忙しい会社ではとにかく寸暇を惜しんで働くことが尊いので、表面上は育児の都合を認める体を装いつつ、イクメンを重要なプロジェクトからはずしたり、査定を下げたりするのだ。こうした価値観のもとで出世を狙いつつ働いていると、必然的にゼロメンになっていく。

 また、外面上はイクメンだが、休日に子どもと遊ぶ以外はゼロメンに近い「なんちゃってイクメン」の例もある。夫の育児参加は、社会全体としてはまだまだ発展途上のようだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 お店に持参するだけで割安に昼食ができる『ランチパスポート』が、全国的な広がりを見せている。

 『ランチパスポート』(通称、ランパス)は、飲食店を紹介する新しいタイプのグルメ本で、価格は1000円程度。グルメ情報がインターネットで簡単に検索できてしまう時代に、なぜ、このような本が売れているのだろうか。

 実は、ランパスにはお得な特典があり、紹介されているお店に持参すると、通常700~1200円程度するランチメニューが、500円のワンコインで食べられるという仕組みになっている。たとえば正規価格が1000円のランチなら、ランパスを2回利用すれば、それだけで書籍代の元がとれてしまう。ランチにかけるお金を節約したい人たちには、うれしい仕組みだ。

 ランパスの火付け役は、高知県のタウン誌を出版する「ほっとこうち」。飲食店PRの一環として2011年にタウン誌の別冊として創刊すると、あっという間に完売したという。手応えを感じた「ほっとこうち」は、翌年、「ランチパスポート」を商標登録して、ほかの出版社などがウェブでランパスを作成できるシステムを開発。全国のタウン情報誌や出版社に、このシステムと使用料を販売する新ビジネスを開始したのだ。

 「ほっとこうち」はパッケージ使用料がとれ、ほかの出版社は書籍が売れる。飲食店は掲載料(広告料)無料でお店の宣伝ができて、利用客は割安にランチを食べることができる。ステークホルダーすべてにメリットがあるため、それぞれの地域でランパスが販売されるようになり、この仕組みは瞬く間に全国に広がっていったのだ。

 ただし、ランパスには、(1)使用期限は3か月、(2)ひとつの飲食店で利用できるのは1冊で3回まで、(3)利用できるのはひとりだけで、1冊を複数人で使い回しできない、といったルールがある。また、掲載されている店舗は100軒程度で、ランパスを使って食べられるメニューや数量も限られている。どこのお店でも使えるわけではなく、やっとたどり着いたお店でもお目当てのランチが売り切れていることもあるようだ。

 だが、上手に使えば、新しいお店が開拓できて、ランチ代も浮かせることもできる。このままいけば、来年10月には消費税が10%に引き上げられるため、再び、庶民のお財布の紐は堅くなることが予想される。そんな中で、大きな広告に頼らずに、いかに消費を伸ばしていくか知恵を絞ったランパスの仕組みは、新しいビジネスの息吹を感じさせる。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 アメリカでは1990年代から、豆の品質や産地、その淹れ方にまでこだわったコーヒーが支持を受けているという。大量生産・大量消費の1960~70年代を「第一の波」、スターバックスなどのエスプレッソ系、いわゆる「シアトルコーヒ-」が普及した1980年代を「第二の波」として、その後に来る「第三の波」が「サードウェーブコーヒー」と呼ばれるものだ。「浅煎り」をさす「アメリカン」に、単なる薄めただけのコーヒーの誤解があるからか、アメリカのコーヒー文化は低く見られているところがある。実際は世界のコーヒートレンドの発信基地なのだ。

 サードウェーブコーヒーの紹介で、必ず出てくるワードが「シングルオリジン」という言葉である。単一種の苗木から収穫されたコーヒー豆だけを使うことで、混じりけのない豆本来の味を知ることができる。これをなし得ているのが豆の生産地と直接取引するダイレクトトレードだ。産地直送の優良な農作物を想像するとよいだろう。産地の農園が明確になることで、品質に対する信頼も生まれることになる。

 さらに重要なポイントは、一杯ずつハンドドリップで淹れる手法だ。当然、少し時間をくうことになるが、それが落ち着いた店内の空間を楽しむことにつながる。もともと日本の喫茶店文化は、コーヒーの味に関して職人的なところに特徴がある。それがスタバなどの隆盛で一時期苦しんだが、「最新のコーヒートレンド」として復権を果たしつつあるわけだ。都内ではサードウェーブコーヒーを全面に押し出す店が増えており、それが同様のこだわりを無骨に続けてきた「昔ながらの喫茶店」にも好影響を与えている。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 選挙権は現在、「20歳」から与えられている。これを「18歳」に引き下げることについて、与野党8党が合意した。

 合意を受け、公職選挙法が改正されると、2016年夏の参院選から適用される予定だ。18歳への引き下げは、改正国民投票法(2014年6月成立)で、憲法改正の国民投票の投票年齢が「2018年に20歳から18歳に引き下げる」ことが盛り込まれたことを受けた措置。同法は付則に選挙年齢の引き下げの検討も明記している。

 引き下げの背景には「少子高齢化の進展で社会保障の土台が崩れかかっている」ことがある。若い世代の負担は今後、増すばかりだ。その意味で若者の政治参加は進めなければならない。

 引き下げを巡って残された課題もある。少年法で原則、刑罰でなく保護処分の対象となっている20歳未満の未成年者が選挙違反を起こした場合、「少年法適用の除外」とするかどうかで賛否両論があるのだ。与党内でも自民党が適用除外に前向きなのに対し、公明党は慎重な立場だ。

 18歳に選挙権を与えるということは「政治的な判断力」が備わっていて大人だと認めることではないか。成人年齢も18歳に引き下げるべきだろう。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 「ワープ」=アニメ『宇宙戦艦ヤマト』から派生した流行語で、ヤマト本体が波動エンジンを使って、宇宙空間上の途轍もなく長い距離を超高速で移動する航法のこと。

 と、上記で解説した「ワープ」に「女子」をくっつけた場合、直訳的な意味は「途轍もなく長い距離を超高速で移動する女子」となる。が、波動エンジンを装着しているわけでもなく、超能力者でもない女子がそのような奇術を披露することは現実問題不可能なので、ここでは「ワープしてるっぽい感じ」の女子のことを「ワープ女子」と呼ぶ。

 では、具体的にはどういう女子なのかといえば、たとえば休日の土曜日、「朝は六本木のリッツ・カールトンで友人の結婚式に出席していたのに、昼は銀座の婚活パーティに参加し、夜は恵比寿で合コン、さらに深夜はJリーガーとかが三宿(みしゅく)あたりの洒落た個室の店で開催する秘密パーティーに顔を出す」といった神出鬼没のエネルギッシュな「女性パーティーモンスター」(ただし、男がらみのパーティー限定)のことを指す。

 移動には波動エンジンの代わりにタクシーを多用するケースが多く、おもに渋谷駅から3駅以内に住居をかまえている。もしくは、そのエリアに住む親友や腐れ縁の彼氏をちゃっかり“確保”していたりする。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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