洛北の三宅八幡宮(みやけはちまんぐう、左京区)の門前菓子。米粉をこねてニッキや抹茶で風味を付け、愛らしい鳩の形に蒸し上げた餅菓子である。京都では「しんこ」という通り名でよく見かけるものの類いだが、鳩餅が特別なのは、子どもの守り神として三宅八幡宮を参拝した人の間で受け継がれてきた伝統的な味わいだからといえよう。

 三宅八幡宮は「かん虫封じ」や「夜泣き」に御利益があることで知られ、通称「虫八幡」と呼ばれている。神社には、国の重要有形民俗文化財に指定された124点もの子育て祈願の絵馬が所蔵されている。これらは江戸期から明治期ごろに奉納されたものが多く、子どもの病気平癒の祈願やお礼参りの様子が描かれている。列をなす参拝者を描いた絵馬からは、古くからの非常に厚い民間信仰をうかがうことができる。社伝によれば、小野妹子が遣隋使として数々の危難を乗り越え、無事に帰国したことに報いるため建立した神社であるという。八幡大神(第15代応神天皇)を祭神とし、鳩は神の使いとされる。そのため、鳥居前の大きな狛鳩(こまばと)や石灯籠、瓦など、社の至るところに鳩のモチーフを見つけることができる。毎年9月15日には五穀豊穣に感謝し、魚鳥草木の霊を慰める放生会(ほうじょうえ)が開かれており、以前は、神の使いとして白い鳩が放たれていたそうだ。

 なお、写真の鳩餅をつくっているのは、参道沿いに京都へ向かう途中の山端(やまばな)にある和菓子店・双鳩堂(そうきゅうどう)である。1880(明治13)年の創業時は鳩せんべいを焼いていたそうで、それが鳩餅に代わって一層広く親しまれるようになった。草だんごや季節ごとの餅菓子も定評のある、おまんやさんである。


淡い甘みとしこしことした歯ごたえがおいしい鳩餅。



三宅八幡宮に所蔵されている絵馬の一。参拝者が列をなす昔の様子を描いている。


京都の暮らしことば / 池仁太   



 朝日新聞(以下、朝日)が8月5日付朝刊で「慰安婦問題 どう伝えたか」と題する自社報道を検証する長文の記事を掲載した。そのなかで戦争中、植民地だった朝鮮の女性を暴力などを使って強制的に慰安婦に徴用したと話した吉田清治氏(故人)の証言を、当時は「虚偽」だと見抜けなかったと認め、当該の記事を取り消した

 以来、保守派メディアだけではなく社内やOB、寄稿者たちからも批判が相次ぎ、130年以上の歴史をもつ名門メディア・朝日が大きく揺れている。

 なかでも週刊誌の朝日叩きはすさまじい。「朝日新聞『慰安婦虚報』の『本当の罪』を暴く」(『週刊ポスト』8/29号、以下『ポスト』)「朝日新聞の断末魔」(『週刊文春』9/11号、以下『文春』)「おごる『朝日』は久しからず」(『週刊新潮』9/11号、以下『新潮』)「『慰安婦報道』で韓国を増長させた朝日新聞の罪と罰」(『週刊現代』9/6号)などなど。

 『新潮』(8/28号)は櫻井よしこ氏にこう言わせている。

 「『職業的詐話師』と秦氏(注・秦郁彦氏)が喝破した吉田氏の嘘を、2014年までの32年間、事実上放置した朝日は、その間、捏造の『強制連行』説の拡散を黙認したと言われても仕方がない。(中略)
 史実を曲げてまで日本を深く傷つけた朝日は、全力で国際社会に事実を伝えたうえで、廃刊を以てけじめとすべきだ」

 私はもう一度朝日の当該記事を読み直してみた。吉田証言は指揮命令系統からも、当時の吉田氏がいたという陸軍の大部隊が済州島に集結する時期などからも、事実とは思われないことがかなり前から判明していたというのだから、もっと早く虚偽だという判断はできたはずである。

 なぜ今なのかという疑問がわく。『文春』(8/28号)によれば木村伊量(ただかず)社長の判断だというが、木村社長は、「ちゃんと謝ったほうがいい」という旧友に対して「歴史的事実は変えられない。したがって謝罪する必要はない」と答えたと言う。おかしな話である。

 虚偽を報じたのなら潔く訂正して謝罪するのが当たり前ではないか。検証記事のなかで、他紙も吉田証言を使ったではないかという言い方をしているが、見苦しい。

 推測するに、安倍政権になって右派的論調が強まり部数的にも苦戦しているのであろう。首相動静を見ていると木村社長は安倍首相と何度か会っているから、直接苦言を呈されたのかもしれない。困った木村社長が渋々決断したのではないか。

 だが、社内にはこの時期にこうしたものを載せるのは如何なものかという反対意見も多くあったはずだ。そこで吉田証言が嘘だったことは認めるが謝罪はしないということで妥協を図ったから、あのような中途半端な検証記事になったのではないのだろうか。

 しかし、これだけの大誤報を認めた以上、木村社長は謝罪会見を開き潔く身を処すべきだと思う。

 そのうえで朝日は、日韓併合や植民地時代の苛烈な支配、原爆症で苦しむ朝鮮人被爆者や慰安婦たちの苦しみを、この誤報で帳消しにしてはいけないと主張するべきである。

 戦時下で、多くの朝鮮人女性が甘言をもって慰安婦にされ、他人には言えない苦労を強いられたことは歴史的事実なのだ。これから朝日がやるべきことは、吉田証言とは別に日本軍の強制性を示す事実を、総力を挙げて取材し、紙面で発表することである。

 そうしなければ、右派のメディアや論客たちによって「強制性」はもちろんのこと、従軍慰安婦は自ら志願し、カネも自由もふんだんにあった悪くない“職業”だとされかねない。

 だが、その後も朝日は判断を誤り続けている。

 8月28日には『文春』の広告の掲載を「朝日新聞社の名誉と信用を著しく傷つける表現がある」として拒否したのである。『新潮』の広告も載っていない。

 言論には言論で対抗するのがジャ-ナリズムのイロハである。自分の気に入らない言論を弾圧するのかと、右派陣営にさらなる攻撃材料を与えてしまった。

 朝日綱領には「常に寛容の心を忘れず」とあるではないかと『文春』(9/4号)が書いているが、その通りである。

 さらに朝日は、連載コラム「池上彰の新聞ななめ読み」の掲載を、朝日に批判的に書いてあるという理由で掲載拒否してしまうのである。池上氏が連載を降りると言い出し、ネットやツイッターなどで批判が高まったため、やむなく9月4日に渋々載せるのだが、そこにはこう書いてある。

 「今回の検証は、自社の報道の過ちを認め、読者に報告しているのに、謝罪の言葉がありません。せっかく勇気を奮って訂正したのでしょうに、お詫びがなければ、試みは台無しです。
 朝日の記事が間違っていたからといって、『慰安婦』と呼ばれた女性たちがいたことは事実です。これを今後も報道することは大事なことです。
 でも、新聞記者は、事実の前で謙虚になるべきです。過ちは潔く認め、謝罪する。これは国と国との関係であっても、新聞記者のモラルとしても、同じことではないでしょうか」

 何とバカなことをしたのか。週刊誌には多くの社外ライターによる連載やコラムがある。編集部の方針と違うことをその人たちが書くことはままあるが、それだからといってその週は掲載しないとか、書きかえてくれということはありえない。

 『文春』には朝日内部に強力な「協力者」がいるのであろう。木村社長の社内メールがそっくり載っている。

 「『慰安婦問題を世界に広げた諸悪の根源は朝日新聞』といった誤った情報をまき散らし、反朝日キャンペーンを繰り広げる勢力には断じて屈するわけにはいきません」

 「今回の紙面は、これからも揺るぎのない姿勢で慰安婦問題を問い続けるための、朝日新聞の決意表明だと考えています」

 朝日夕刊の名物コラム「素粒子」を執筆していたOBの轡田隆史(くつわだ・たかふみ)氏も『文春』誌上でこう難じる。

 「木村社長自らが一面に登場し、潔く謝罪するべきでした。
 朝日の『従軍慰安婦』報道は決定的にひどい誤報です。(中略)何の説明にもなっていない記事を出してうやむやにし、時間が経過するのを待っているように思える。今の朝日は、醜態を晒し続けています」

 同じ『文春』で気になったのが朝日の現場の若手たちの声だ。20代社員がこう言っている。

 「これまでは『朝日新聞です』と自信を持って名刺を出せたけど、今は出しづらい雰囲気」

 昔、ビートたけし軍団が『フライデー』編集部に乗り込んで傷害事件を起こしたとき、大新聞を先頭に写真誌批判が巻き起こった。そのころ、編集部の若手たちがこう嘆いていた。

 「取材相手に『フライデー』と名乗れないので、講談社と言って会いにいっています。首尾よく会ってくれても、たけし事件やプライバシー侵害について聞かれ、取材になりません」

 私はほかの部署にいたが、編集部員が自分の所属している誌名を名乗れないような雑誌は潰すべきだと社内で主張した。部員が自分のやっている雑誌に誇りを持てなくて、魅力ある誌面づくりなど出来ようはずがない。当時、毎週10万部単位で部数が落ちていった。

 同じようなことが朝日新聞でも起こらないとは限らない。沖縄のサンゴを傷つけて写真を撮った写真部員の不始末の責任を取って一柳(ひとつやなぎ)東一郎社長(当時)は職を辞した。

 社長が辞めることが最善だとは思わないが、今度のことは木村社長自らが決断してやらせたのではないか。これだけの批判を浴びているのだから、社内メールで戯けたことをほざいていないで、表に出てきて釈明した後、出処進退を潔くするべきだ。

 そうしなければ朝日新聞が今後、NHK批判や安倍首相批判をしても説得力に欠けてしまう。

 私は『文春』や『新潮』の論調にすべて組するわけではない。だが、今回の誤報問題が戦後の朝日新聞の歴史のなかで最大の危機だということは間違いない。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3

 今週は有名人たちの醜聞プラスちょっといい話。お楽しみを!

第1位 「大原麗子が綴っていた『森進一との離婚』『田村正和への思い』『渡瀬恒彦と暮らした日々』」(『週刊現代』9/20・27号)
第2位 「佐々木主浩『実娘号泣告白』『継母・榎本加奈子は中2の私を追い出した』」(『週刊文春』9/11号)
第3位「“ブラック女帝”たかの友梨『残業代払えない』のに15億円豪邸」(『週刊文春』9/11号)

 第3位。エステの女王というらしい。高野友梨(ゆり)社長(66)が率いるたかの友梨ビューティクリニックの女性エステシャンたちが「残業代などの支払い」を求めて大揺れだと『文春』が報じている。
 エステシャンの一人に聞けば「勤務は朝九時から夜十時までが日常です。休憩はほぼ取れず、夜になって初めて立っておにぎりを食べることも。新人は一年続けば頑張ったほうで、毎年三百人が辞めていきます」というブラック企業のようである。
 だが高野社長は社員の前で「労働基準法にぴったりそろったら、(会社は)絶対成り立たない」「つぶれるよ、うち。それで困らない?」と、威圧したというのである。
 彼女のセレブぶりは有名だそうで、渋谷区の一等地に建つ豪邸は10数億円もするそうだが、土地の購入も建築費も会社が出していると、調査会社担当者が話している。
 全身シャネルで身を包んだ高野社長は「社員は宝だと思ってきました」と答えているが、とてもそうは思えない。

 第2位。『文春』というのはつくづく凄い雑誌だと思う。多少考え方に違いはあるから辛口も言うが、毎週スクープを連発する底力には恐れ入る。
 今週は元横浜ベイスターズの大魔神・佐々木主浩(かづひろ)の醜聞だ。佐々木は大リーグでも活躍し、引退してからは馬主としても成功している羨ましい人間だと思っていた。
 だが『文春』によれば、元アイドルと結婚して一男一女をもうけたが、大リーグに移籍した03年に女優・榎本加奈子(33)との不倫がバレて離婚。佐々木は二人の子どもの親権を持ち、榎本は正妻になり2人の子どもを産んでいるという。
 今回佐々木というより継母・榎本への恨み辛みを告白しているのは、前妻の間にできた長女(22)である。
 中学1年の時、わずか自分と12歳しか違わない継母と同居した長女は、そうとう辛い人生を送ったようだ。榎本は弁当を作ってくれず、作ってくれと頼みこんでもらった弁当を開けたら「豆腐が一丁と醤油が入っていました」。父親が不在の時は夕食も用意されていなかったことが度々あったという。
 耐えきれずに佐々木に内緒で実母に会いにいったら、約束を破って子どもに会ったと、実母は離婚の慰謝料を剥奪されたそうだ。
 そのうち継母から「一緒に住めないから出て行って」と言われ、父方の祖母の家に行かされる。継母が実子を連れてハワイに行っているとき、佐々木が自宅に呼んでくれたことがあったが、帰国した継母が「トイレットペーパーの減りが早い」と勘を働かせてバレてしまったというから、この母と娘の仲の悪さはただ事ではないようだ。
 今年、体調が悪くバイトを休みがちなので、継母に家賃の援助を申し出たら「風俗でもやれば」と言われたという。
 この言葉に衝撃を受けた彼女は自殺未遂を起こすのだが、佐々木も継母も「世間にバレたらどうしてくれるの?」というばかりだった。
 自宅に自分のモノを取りに入ったら、不法侵入だと被害届を出され、警察に事情聴取をされたそうだ。
 これに対して佐々木のマネージャーが本人に確認を取ったうえでこう答えている。

 「榎本との確執は彼女(Aさん)が一方的に思っていることでしょう。彼女の被害妄想もあると思う」

 被害届は反省を促そうと佐々木が出したそうだ。
 長女側の、なさぬ仲の継母への恨みや一方的な思い込みはあるのだろう。だが、実の娘にここまで告白されてしまうのは、父親として問題なしとはいえないはずだ。
 佐々木は「僕の教育が間違ったのかもしれない」といっているそうだが、父親として長女にそれなりの愛情を注いできたのだろうか。これを読む限り、大魔神は父性に欠けたところがあったといわれても仕方あるまい。

 第1位。今でもファンの多い亡き女優・大原麗子の肉声を綴った自作のスクラップ・ブックをスクープした『現代』の記事。
 最初に結婚して生涯好きだったらしい俳優の渡瀬恒彦についてはこう書いているそうだ。

 「すごく可愛いし カッコイイよ渡瀬サン 初めてで最後の婚約 結婚」

 だがこの結婚は5年で破局を迎える。
 実弟の大原政光氏は「渡瀬家の家風に馴染めなかった」ため、結婚したら女は家に入るべきだという渡瀬家との溝が大きくなっていったという。
 ここには書いていないが、結婚している間に森進一との“不倫”騒動(私が『週刊現代』にいるとき報じた)があったことも、離婚を後押ししたと思う。
 若いときから彼女は子どもをほしがっていたようだ。
 彼女は難病のギランバレー症候群を発症するが、それを克服して80年に森進一と結婚する。しかし結婚生活は、彼女が予想していたようには進まなかった。

 「姉が『子供ができた』と相談してきました。もちろん森さんとの間にできた子です。しかし姉はこのとき、あるドラマの主演が決まっており、出産は降板を意味していた。姉は『堕ろしたい。病院を紹介して欲しい』と言った。決意は固かったですね。森さんは何も知らなかった。姉が一人で決めたんです。
 ただ、悩んだ末の決断だったことは確かです。というのも、姉は中絶した直後に、キャッシュカードの暗証番号を変えたんです。新しい番号は、子供を堕ろした日付でした」(政光氏)

 その後84年に森と離婚。彼女には好きな俳優がいて、そのことをスクラップ・ブックに書いていたという。田村正和を尊敬していたようだ。高倉健もその一人。こう書いているという。

 「健さん、人にきびしく、自分に甘いと思うわ。でもでも大好き。そんけいしてます」

 意外なことにビートたけしもファンだったようだ。

 「私が大ファンだって知ってたでしょ 恥ずかしいから云わなかったの、云えなかったの」「(フライデー襲撃事件を受けて)君らしいしカッコイイヨ 彼女を守ったんだから。私も男だったら一人でフライデー行くな」

 多くのファンからなが~く愛されている大原麗子だが、彼女を一生愛してくれる男には出会えなかったようだ。彼女は心の中の寂しさをこのスクラップ・ブックに書き込むことで憂さを晴らしていたのだろうか。

 ここに書かれた男たちは、変な意味ではなく一度も彼女を抱いてやらなかったのだろうか。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 「俳優の温水洋一(ぬくみず・よういち)のことかと思った」と茶化されることも多い「ヌクメン」という新語。女性の心をヌクヌクと包み込むような、優しさに満ちた男子を称する言葉だ。定義づけがされているのは、様々なプロが美容について語る資生堂のウェブサイト「℃(ドシー)美容推進委員会」。「印象」に関する専門家・重田みゆき氏(フジテレビ系『ホンマでっか!?TV』などでおなじみ)が解説するところによると、「オンとオフのギャップ」「体のキレイなパーツ」などもヌクメンの重要な要素のようだ(しかし、これって「温もり」は関係ありますか?)。

 女性に優しいだけの男性ならばいくらでもいるだろう。それを自然体でこなすことがヌクメンの条件だ。女子たちにとって理想像であるとともに、男子にはなかなかハードルが高い。「モテ」を意識してヌクメンになろうとする時点で、すでにヌクメンからは遠いのかもしれない。「草食系男子」という言葉は、ときに「危なくなさそう」「優しそう」といったプラス印象で語られる。こうした「草食性」に、さらに「イケメン性」も求めた概念が「ヌクメン」で、非常によくばりであるとも言えそうだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 8月20日、広島市で起きた土砂災害は多数の死者・行方不明者を出すとともに、安佐(あさ)南区、安佐北区の太田川沿い南北10kmの住宅を押し流すなど甚大な被害をもたらした。

 今回の土砂災害は被災者生活再建支援法が適用されており、住宅が一定以上の損害を受けた場合に「被災者生活再建支援制度」から支援金が給付される。だが、この支援金は最大でも300万円で、マイホームを再建するにはとても十分とは言えないだろう。そこで、こうした自然災害のときに、思い出してほしいのが個人で加入している火災保険だ。

 火災保険は、自宅から出した火事や隣家などからの延焼による損害をカバーするための損害保険で、「建物」と「家財」に分けて加入する。だが、補償範囲は火災だけではない。補償内容は加入している保険によって異なるが、いちばんシンプルなタイプでも、火災のほかに、落雷、破裂・爆発、風災、雹災(ひようさい)もカバーされていることが多い。さらに、今回のような土砂災害やゲリラ豪雨による水災(水害)がセットされているものもあるので、保険証券などで、自分がどのようなタイプの火災保険に加入しているのか確認してみるといい。

 ただし、風水害の補償で気をつけたいのは、10年以上前に加入した「特約火災保険」「住宅総合保険」「住宅火災保険」と呼ばれるものだ。土砂災害などで住宅が流失したり、倒壊したりしても、最大で保険金額の7割までしか補償されないので、万一の場合の住宅再建費用が賄えないことも考えられる。

 風水害などの自然災害の被害予測を地図にしたハザードマップを確認し、川の氾濫による浸水、土砂災害などが心配される地域に住んでいる場合は、水害時にも十分な補償が受けられるタイプの火災保険への見直しを検討してみよう。

 ハザードマップは、市区町村が広報などとともに配布しているほか、ホームページなどでも確認できることが多い。また、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」(http://disapotal.gsi.go.jp/)の「土地条件図」を見れば、土地の形状、地盤、埋め立ての歴史などもわかるので、被害程度を推測することも可能だ。

 ちなみに、地震、津波、噴火による損害は、地震保険に加入しないと補償は受けられない。この3つの自然災害が原因で火事や水害にあっても、火災保険では補償されないので、別途、地震保険に加入する必要がある。

 人間の力で、自然災害をなくすことはできないが、日ごろから被害を想定した準備は誰でもできることだ。そのひとつが火災保険をはじめとする損害保険への加入だ。いざというときに「こんなはずではなかった」とならないためにも、ライフスタイルに合わせて定期的に火災保険を含めた補償を見直すようにしたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 日本人はよそ様に気を使う国民性があるらしく、それ自体は美徳といえそうだが、よいことばかりではない。住宅の密集地であればなおさらだ。いまどきの公園の注意書きを読むと、ボール遊びや大声が禁止されていて、近隣住民に配慮されていることがわかる。家の前で騒がれる苦痛を想像すれば、不寛容の一言では片付けられない。だが、一方では、子どもたちが日常生活ではしゃぐ場所はどこに存在するのか、ということになる。

 いま、都会の道端で大騒ぎする子どもと、それを傍観している親がトラブルの火種になっている。道路行政に影響力を持つ族議員になぞらえて、「道路族」と呼ばれる。うるさいだけならまだしも、普通の道路で遊ぶわけなので、交通安全の面でも問題があるだろう。勝手に家の敷地内に入って、モノを壊してしまう事例もあるという。こうした「モンスター」たちの傍若無人ぶりは、単に近隣への気配りの欠如なので、厳しく否定されるべきものと思われる。

 難しいのは、過度にマナーの遵守が求められた結果、子どもたちが公園から実質的に締め出されている地域だ。道路族の問題は、子どもがうるさいだけでなく、そばで井戸端会議に花を咲かせている母親たちも耳障りなところだという。視点を変えれば、母子ともども、おしゃべりでコミュニティを広げていく場すらも少ない現状を示す。人どうしのつながりが希薄な環境で、子どもたちは健やかに成長できるものだろうか。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 北陸新幹線の長野~金沢間(228キロ)の開業日が2015年3月14日に決まった。

 北陸新幹線は、1989年に着工し、長野冬季五輪の前年の97年に東京~長野間(長野新幹線)が先行して営業を開始していた。

 最高速度は時速260キロメートル。気になる所要時間だが、停車駅の少ない「かがやき」の場合、東京~金沢間を最速2時間28分でつなぐ。これまでの時間を約80分も短縮することになる。「かがやき」は1日に10往復の運行で、停車駅の多い「はくたか」は14往復。富山~金沢間を走るシャトル便の「つるぎ」は、18往復。東京~長野間の「あさま」は16往復する。

 開業に伴い、その経済効果にとりわけ熱い期待を寄せているのは、沿線の石川、富山両県だろう。北陸は古都・金沢を筆頭に観光資源が豊富で食文化も楽しむことができる。来年3月の開業に向け、観光客を当て込んだ催しや、新聞・雑誌やテレビの「北陸特集」も増えそうだ。

 従来両県は、大阪経済圏と関係が強かったが、今後は東京経済圏により軸足を置くことになりそうだ。東京資本の外食産業、ドラッグストアやコンビニなどのチェーン店の北陸進出も加速する可能性がある。

 北陸新幹線は福井県敦賀市までの区間を建設中で、さらに大阪まで延ばす計画だ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 「準(准)熟女」のこと。「Jun Juku Jo」の頭文字を取ってこう表記する。「3J」ではなく「JJJ(じぇいじぇいじぇい)」とする場合もある。

 昨今、出会い系業界でも水商売業界でも性産業界でも「熟女」がやたらもてはやされている。「熟女」とは一般的には「30〜50歳代の成熟した色気の漂う女性」のことを指す(らしい)が、近年のメイク術や美容整形施術の飛躍的進歩や女性の晩婚化……などの事由で、もはや30歳代の美しい女性は珍しくもなくなり、同時に、この世代を安易に「熟女」と呼ぶのも不自然だという声も広がりつつある。そこで、これらの宙ぶらりん状態である30歳代の“成熟した色気の漂う女性”のことを「準(准)熟女」と定義する動きがちまたで顕著になり始めてきた。

 ただ、筆者のリアルな統計からすれば、40〜50代の女性で“成熟した色気の漂う女性”はなかなかに少なく、ましてや「熟女」を売りにしてお金を稼ぐことができるクラスは相当数が絞られるのが現実であり、ゆえに今後は一部のディープな熟女マニアを除く、母性に惹かれがちな男子層の熱視線が「準(准)熟女」に集中することが予測される。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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