7月26日夜、
長崎県佐世保市で女子生徒が同級生を惨殺する事件が起こった。殺された松尾愛和(あいわ)さん、殺人容疑で逮捕されたA子ともに15歳(事件当時)。
『週刊新潮』(8/14・21号、以下『新潮』)によれば、A子のマンションで行なわれた凶行は陰惨を極めた。
「ハンマーで後頭部を殴打され、犬のリード(首ひも)で首を絞められて人生を突然断ち切られた愛和さん。(中略)ベッドに横たえられた彼女の遺体は、首と左手首が切断され、腹部が大きく切り裂かれていた」
逮捕後、少女A子から血の凍るような言葉が飛び出した。
「猫を解剖したが、満足できなかった。人を殺して解剖してみたかった。相手は誰でもよかった」 A子の父親は地元では著名な弁護士。母親も東大を出て地元放送局に勤めていた才媛で、その後市の教育委員を務めたり女性と育児に関するNPOを立ち上げたりしていた。
A子は両親の才能を受け継いだのか成績はトップクラスで、小学校時代に公言していた夢は「検事」になることだった。その理由を『週刊文春』(8/7号、以下『文春』)は「刑事事件の法廷で父と対峙することを想像していたのだろうか」と書いている。
ピアノや絵もうまく、父親に勧められて始めたスケートで父親と一緒に全国大会に出場したこともある。
愛和さんの父親は佐世保の第13護衛隊に属する護衛艦「さわぎり」の乗務員。小さい子の面倒見がよく、書道は最高位の十段だったという。生活環境は違うが二人は仲がよかった。それがなぜこのような事件が起こってしまったのか。
A子は小6の時、虐められた腹いせに、相手の給食に漂白剤と洗剤を混ぜ合わせた液体を入れて大きな問題になったことがある。だが、このことはそれ以上、広がらずまもなく沈静化したという。両親が地元の有力者だったため、もみ消したのではないかと見る向きもあるようだ。
また『新潮』(8/7号)で全国紙社会部デスクが、
「Aには、小学生の頃から、猫を殺して解剖したり、家出したりといった問題行動があった。Aの母親はそのことに胸を痛めていた」
と話している。転機はA子の母親が昨年膵臓がんを発症してあっという間に亡くなってしまったことにあるようだ。
『文春』でA子の父親をよく知る男性がこう語っている。
「父親はA子の母親の死後すぐに婚活パーティに参加するなどしていた。そうして知り合ったのが、現在の再婚相手。継母は三十過ぎで、亡くなった奥さんと比べるとかなり派手目な女性。慶応大出身で、東京で見つけてきたそうです。
喪も開けないうちから次の女を見つけてきた父親のことを、A子はどうしても許せなかったのでしょう。再婚が決まった時に、A子は金属バットで父親に殴りかかり、重傷を負わせたこともあったそうです」
父親のことをA子は英語の弁論大会で
「マイ・ファーザー・イズ・エイリアン」と言って会場中を驚かせたこともあった。事件の数日前も継母に「自分の中に人を殺したい欲求がある」と話していたという報道もある。
今春、父親が再婚する直前にA子は家を出て一人暮らしを始めるが、これについてA子の父親の代理人は、金属バット事件を機に二つの精神科に娘を通院させ、「精神科医の勧め」で一人暮らしをさせたと話している。
しかしその後の報道で、6月10日の時点で医師が「このままでは人を殺しかねない」と児童相談所に通報していたことが明らかになっている。
さらに『文春』(8/14・21号)は「前妻の没後、父親は戸籍を改変し、現在A子は祖母の養子になっている」という衝撃的な事実を報じている。父親は相続税対策で娘も納得していると話しているようだが、母親に亡くなられ失意の底にある思春期の娘が受けたショックは想像するにあまりある。
心を閉ざし精神を病んでいく娘を放置し、若い再婚相手との新婚生活に耽溺していた父親の“保護監督責任”は、どう言い訳しても免れようがない。
A子は中学卒業の文集にこう書いている。
「僕が人生で本当のことを言えるのは、これから何度あるだろうか」 自分のことをよく僕と言っていた。母親を失い、本当のことを言える相手がいなくなったことで、暗い衝動を抑える歯止めがきかなくなったのであろうか。
佐世保市では10年前にも小六の女子児童が同級生を殺害する事件が起こり、世を震撼させた。
この事件以降、市全体で「命を大切にする教育」を徹底してきたという。しかし少年犯罪は密室で裁かれることが多く、全容が伝わることはなかなかない。
同じような事件が起こってしまったいま、やるべきは、この事件がどうして起きたのかを徹底的に検証し、その情報を公開することである。
それを全国の子を持つ親たちが共有し、自分の子どもを見つめ直すことでしか、こうした犯罪の抑止にはつながらないはずだ。
元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3 暑いですね。そこで今週は
体に関する記事を集めてみました。酷暑の折、くれぐれも体にお気をつけ下さい。
第1位 「中国チキンの恐怖」(『週刊文春』8/7号)
第2位 「『元気に5歳』長生きする5つの最重要スキル」(『週刊新潮』8/7号)
第3位 「日本人の体は暑さに弱くなったのか?」(『週刊ポスト』8/15・22号)
第3位。5月19日以降、熱中症で救急搬送された人は2万1322人にも上る。これって多すぎない? 『ポスト』が調べると、熱中症で搬送される半数近くは高齢者。高齢者は発汗の機能が衰えるので熱中症になりやすいし、高齢者の数が増えているから
「暑さに弱い日本人の人口が増えた」ことが一点。
また、いまの子どもたちは生まれたときから温度調節された環境で過ごしてきているため、上手に汗をかいて体温調節することができないのだそうだ。だが、こうした見方に反対する学者もいる。要は、子どもはともかく高齢者の数が増え、その人たちが熱中症になる数が増えていることだけは間違いないようである。
高齢者になると水分が60%から50%に減るといわれる。熱中症だけではなく酒にも酔いやすくなるらしいから少し酒を控えようかな。
第2位。いまや
長寿の県といえば長野県である。最新の都道府県別「平均寿命」(2010年)で男女とも堂々の第一位。男性80.88歳、女性87.18歳。
調査は厚労省が5年ごとに行なっており、男性は90年以降、5年連続でトップの座に輝いた。以前、長野県は全国一馬肉を食べる県だから、それが長生きと関係があるのではないかという記事が出たことがあるが、『新潮』によれば今回は野菜にその秘密があるという。
過剰な塩分の取りすぎが高血圧を招き、脳卒中という病を生み出した。しかし長野は2001年の16グラムから減らしたとはいえ、未だに男性12.6グラム、女性11.1グラムと、過剰摂取の状態が続いているそうである(厚生労働省の減塩目標は一日男性8グラム、女性は7グラムまで)。
にもかかわらず長寿である秘訣を探していくと
野菜の摂取量に行き当たるという。
「長野は、男性一日379.4グラム、女性364.8グラムと、それぞれ2位の島根を20~40グラムも引き離し、ダントツの全国1位なのです。野菜には塩分を体から排出するカリウムが大量に含まれており、たくさん食べることで健康が維持されているのでしょう」(厚労省関係者)
「過酷な環境で栽培された植物は、がんの原因にもなる活性酸素を抑えるための、抗酸化作用を高める栄養素、ファイトケミカル(植物が持っている天然の化学物質)をより多く含んでいる」(順天堂大学大学院医学研究科・白澤卓二教授)
『新潮』は「スーパーで同じ野菜が並んでいれば、迷わず長野県産の野菜を選ぶのが賢明らしい」と言っている。
今週の第1位は、日本マクドナルドやファミリーマートで販売されていた
中国輸入のチキンナゲットなどが期限切れだったことが発覚した「事件」を扱った『文春』の記事。
発覚したきっかけは中国の上海テレビ局「東方衛視」のスタッフが2か月にわたり「上海福喜食品」の潜入取材を行なって、食品工場の不衛生な実態や期限切れの肉などを使用していた実態を暴いたことからである。
どういうきっかけでそうした取材を行なったのか詳細はわからないが、中国メディアもなかなかやるではないか。
『文春』は昨年4月発売の号で「マクドナルドの中国産鶏肉が危ない!」と報じていたと鼻高々であるが、『文春』の自慢話はさておいて、ここのいいところは現地取材をきっちりやるところである。今回も問題の「上海福喜食品」の現役従業員にインタビューし、こう言わせている。
「床に落ちた肉を拾うのはそもそも工場のルールなんです。機械を回しながら肉を投入するのでどうしても床に落ちてしまう、だから設置された青いプラスチックの容器に拾って入れなさい、と。容器がいっぱいになったら肉を回収し、『菌敵』という細菌殺菌薬を二百倍に薄めた溶液で洗浄する。仕上げに度数七〇%のアルコールでさらに消毒し、再利用するんです」
この人物が言うには、昔はさすがに米国系企業(そうなんだ?)という感じで、調味料は輸入品だったが、4、5年前から工場の様子がおかしくなってきたという。さらに2010年の上海万博が開催されファーストフード向けの鶏肉が足りなくなったとき、こういうことをやったという。
「どこからか、ものすごい異臭を放つ20トンくらいの腐った手羽先の山が工場に運び込まれてきました。その手羽先に業務用スプレーで菌敵の溶液を吹き付けて消毒してから、利用しました」
この国の辞書に企業倫理などという言葉はないのであろう。
さらに悪いのは、こうした不正を暴かれ指弾されても、それで企業が潰れることはないのだそうだ。ここ数年で潰れたのはメラミン混入粉ミルク事件で乳幼児に死者を出した三鹿集団だけで、後は問題処理が終われば営業を再開しているという。
今回の
「上海福喜食品」も一定期間の生産停止と罰金だけで終わるのではないかと、中国の食品安全検査関係者が言っている。
これでは食の安全など保証されるはずがない。ましてや日中関係は最悪なのだ。「どうせ自分の食べるものではない、日本人が食べるんだ」と発がん性のある農薬や着色料を混入させた食品を輸出しているのではと、疑心暗鬼になろうというものである。
『文春』に「我が身を守るためには、中国産を避けた方がいいことは間違いない」と言われても、居酒屋の焼き鳥や定食屋のチキンソテーが大好きな身には、なるべく食べる量を少なくしようとするしか対策はないのだが。