1か月にわたって祭儀の続く祇園祭最大の呼び物は、毎年7月17日に行なわれる山鉾巡行である。これまでは、唯一の山鉾巡行として、神幸祭(しんこうさい、7月17日夕刻)の先触れに山鉾全33基が清めの巡行を行なっていたが、2014(平成26)年からは、還幸祭(かんこうさい、7月24日夕刻)の先触れとなる後祭の山鉾巡行が復活し、1965(昭和40)年まで行なわれていた前祭(さきまつり)と後祭の二度の巡行が行なわれる、本来の形式に戻された。

 1966年に山鉾巡行が一本化された当時、「信仰か、観光か」という大論争の末、観光の集客や利便性が優先され、前祭だけに集約されることになった。あれから半世紀あまり。再び同じ論争を経て、今度は祇園祭山鉾連合会のかねてからの思いが実った。

 7月17日の1日だけで、山鉾すべてが巡行する壮大な様子は見事であったが、梅雨明け間近の暑い日に、5時間あまりを要する長大な行列を行ない、期間中にのべ100万人以上が訪れるという混雑は如何ともし難いところもあった。後祭を設けたことで、昨年から難儀なところはいくぶん和らいだようであり、特に後祭の宵山(よいやま)行事は、出店やホコ天が行なわれないので、風情ある屏風祭をゆっくりと観賞しながら、宵山の散策ができるようになった。

 また、前祭よりも規模の小さい後祭の山鉾巡行に花を添えるのは、山鉾の中でも最大級の大船鉾(おおふなぼこ)である。大船鉾は1864(元治元)年の蛤御門の変で焼失してから一度も巡行をしておらず、焼け残ったご神体と懸想品(けそうひん)を披露する居祭(いまつり)を続けていた。その大船鉾が江戸期の絵図やほかの山鉾の構造を綿密に調査したうえで、およそ150年ぶりに再建された。全長7.47メートル、幅3.25メートル、高さ6.25メートルの船体に、菊水鉾譲りの大車輪を取り付けた堂々たる姿である。

 ついでにいえば、「あとのまつり」という「手遅れ」などの意味で使われることばは、祇園祭の後祭が、前祭よりも規模の小さいことから生まれたものだといわれている。


大船鉾の鉾建ての様子。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 ギリシャの債務危機がユーロ圏だけではなく世界中を震え上がらせている。一小国の危機が国境を越えて日本やアメリカをも直撃する。グローバル金融時代の恐ろしさをまざまざと見せつけているのである。

 ユーロ圏が誕生したのは1999年。ギリシャは2001年1月に移行している。『ニューズウィーク日本版』(7/14号、以下『ニューズ』)によれば、ギリシャがユーロ圏に加盟した当時はすべてがバラ色に見えたという。外国からの投資が押し寄せ、03年には経済成長率が6%を超えた

 「その一方で、ギリシャは債務をため込んでいた。公的部門は多額の年金を支給。休暇シーズンは給与額が2倍になり、年に13カ月分や14カ月分の給与が受け取れる悪名高いシステムが通用していた。その裏では汚職や脱税など、さらに根深い問題がはびこっていた」(『ニューズ』)

 大盤振る舞いできたのは低金利で借金ができ、金融機関は問題を先送りにしてきたからだが、08年に世界金融危機が発生すると大きな打撃を受け、問題が次々と表面化した。

 ギリシャは粉飾決済を続けてきたことを告白した。09年の財政赤字は対GDP比で12.7%にも及び、失業率は現在25%を超えている。

 ギリシャが破綻すれば同じような状況のスペインやイタリアにも波及することを恐れたドイツを中心とするEUが多額の金融支援をし、厳しい緊縮財政をとるよう迫った。だが、あまりの厳しさに音を上げたギリシャ国民は、急進的な「反緊縮」を唱えるチプラス政権を選択し、6月末に行なわれた国民投票で緊縮策に「ノー」という選択をしたのである。

 そのため7月6日の東京株式市場は一時500円超も値を下げ、その後も乱高下を続けた。

 『週刊現代』(7/18号、以下『現代』)はギリシャ・ショックの影響が現れるのはこれからだという特集を組んでいる。

 『現代』によれば「反緊縮」を掲げて当選したチプラス政権には安易にEU側に譲歩することはできないという事情があったが、それだけではないという。

 「ギリシャは仮にカネを返済しなくても、ユーロ圏に居座ることができるのです。そもそも欧州の団結を謳って結成されたEUには、ユーロ圏から加盟国を強制的に退出させる規定というものが存在していないからです。
 すでにギリシャは借金を返すためにさらに借金をするようなサイクルになっている。そこで支援を打ち切られれば、新たな資金を調達することはできなくなります。だが逆に言えば、IMFへの返済も、ギリシャ国債の元本や金利も支払わなくてよくなる。そうした事情を考えれば、無理をしてまで厳しい緊縮策を受け入れなくてもいいわけです」(FXプライム・チーフストラテジストの高野やすのり氏)

 またギリシャがEUから離脱しようとすれば、EU離脱に関する国民投票を新たに行なわなければいけない。したがって離脱するには少なくとも1年から2年程度かかるというのである。

 だが、ギリシャ国民の現状は目を覆うものがあると、アテネ在住ジャーナリストの有馬めぐむ氏が『現代』で話している。

 「財政危機が発覚し、金融支援と引き換えに緊縮政策が開始されて以降、貧困率が特に上昇しているのは18~24歳の若年層。高学歴でも仕事は得られず、仕事にありつけても700ユーロ(日本円で約9万4700円=7/16現在)以上は稼ぐことが難しいため、彼らは『700ジェネレーション』と呼ばれている。
 『小さい子供を持つ家庭の貧困もすさまじいものです。ある財団が貧困層の多い公立小学校の調査をしたところ、17%の家庭が誰一人収入のある人がいない、25%の家庭が毎日の食事に困っている、60%が明日以降の生活に不安があるという切迫した状況であることがわかりました。公立の小学校では空腹の子供が急増し、体調不良や集中力低下の児童が多く報告されています。
 しかも、以前は多くの公立の保育所には給食センターがあったのですが、資金難でこれを閉鎖して安価なランチボックスのサービスを利用するようになった。それも最近は国からの運営費が来ないため、十分オーダーできない保育所が出てきているので、状況は悪くなるばかりです』」

 このところとんとアベノミクスに言及しなくなった安倍首相だが、ギリシャに続いて深刻さを増している中国の株式市場が、アベノミクスでやや持ち直した日本の株式市場を吹っ飛ばしてしまう「危険性」を深刻にとらえているからであろう。

 『現代』(7/25・8/1号)で元中国有力紙の編集委員で著名コラムニストの丁力氏が中国のバブル崩壊についてこう語っている。

 「中国株は、中国共産党が胴元になっている賭博です。共産党は配下に収めている政府機関と官製メディアを使って煽り、2億人以上の国民を株式市場に駆り立てておきながら、あげくその資産を収奪したに等しい。いまや中国全土は大混乱に陥っていて、夥(おびただ)しい借金を抱えて自殺する人も相次いでいます」

 中国政府は株価が低迷した12年8月に『股民(グ―ミン、個人株主=筆者注)』を増やそうと、自分の持ち金の何十倍分も掛けられる信用取引を解禁した。

 このハイリスク&ハイリターンの信用取引に、一攫千金を狙う中国人が殺到し、昨年の深圳(しんせん)証券市場では取引額の37%にあたる27.5兆元(約540兆円)が信用取引によるものだったという。その人たちが今回の暴落で全財産の何十倍もの借金を抱え込んでしまったのである。

 これまで『現代』はアベノミクスで株が上がると鉦や太鼓で煽ってきた。それが「振り返れば、株価が2万868円をつけて『ITバブル超え』と騒がれたのはつい最近、6月24日のことである。『次は96年につけた2万2666円を目指していくぞ』という威勢のいい声が響き渡っていたのが、いまはウソのようである」と意気消沈し、「株も投信も不動産も、まだ傷の浅いうちに逃げ出したほうがよさそうである」とまで言っている。

 ギリシャ危機は当面、欧州連合(EU)のユーロ圏19か国がギリシャへの金融支援再開に原則合意し、財政破綻とユーロ圏離脱は回避される見通しとなった。

 支援額は最大860億ユーロ(約11兆7000億円)にのぼるそうだ。だが、ギリシャ発の金融危機が収束したわけではない。

 『現代』(7/18号)はノーベル経済学賞を受賞した米イエール大学教授のロバート・シラー氏が、現在の米国株は歴史的にも異常なほどに高値警戒感が出ているとして、「この株式市場バブルはバースト(破裂)する可能性がある」と警鐘を鳴らしていると報じている。

 新自由主義という奇形のモンスターが世界中を席巻した結果、いつどこで金融危機が起きてもあっという間に国境を越えて広がり、極東の島国の経済に大打撃を与えるのだ。その悲劇の幕開けは明日かもしれない。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 今週は『新潮』の中川郁子(ゆうこ)代議士の記事が週刊誌的ですこぶるおもしろい。中川代議士はどうということない陣笠代議士だが、記者の質問に切れて(?)応酬するやり方はまさに肉食系そのもの。
 1位の“ユニクロ帝国に陰り”は、私にはかつてのダイエー中内功(なかうち・いさお)氏を髣髴とさせる。何度か一緒に酒を飲んだが、そんなときはどこにでもいる普通のおじちゃんだった。一代で築いた王国は永遠に続くかと思われたが、無理を重ねた拡大路線が仇となり、最後は可哀想なものだった。まさか柳井氏がそうなるとは思わないが、帝国を維持することの難しさを感じているのかもしれない。

第1位 「ユニクロが突然、売れなくなった」(『週刊現代』7/25・8/1号)
第2位 「肉食系『中川郁子代議士』の不倫相手と『再デート』実況中継」(『週刊新潮』7/16号)
第3位 「『寛仁殿下』が『信子妃』に家庭内暴力というひどい嘘」(『週刊新潮』7/16号)

 第3位。『新潮』が『文春』の記事に噛みついている。66歳で亡くなった三笠宮寛仁(ともひと)殿下の奥さん、信子妃(60)が「寛仁殿下の家庭内暴力で長い療養生活を強いられた」と話したことは「ひどい嘘」(『新潮』)だと、寛仁殿下の長女・彬子(あきこ)女王(33)に語らせている。

 「私が見ていた限り、父が母に対して手を上げたことは一度もありませんでした。また、母とは子供の頃から一緒にお風呂に入っていましたが、痣やこぶを作っていたことなど一度もありませんでした。(中略)父が母に対して暴力をふるっていたという話が何の検証もなく、さも事実のようにさまざまな雑誌で書かれてしまい、そのことだけは否定したいと思いまして」(彬子女王)

 これを書いたノンフィクション作家の工藤美代子氏によれば、「結局のところ、10年以上にわたって寛仁殿下は離婚をしたいと望んでいたが、信子妃と麻生家はその切実な願いを拒否し続けたのだ。殿下はそのために心労が重なり、アルコールの量も増えていった。アルコール依存症で暴力を振るったというのは、まったく事実無根であり、信子妃が宮邸を出るほど夫婦関係が悪化したから、殿下は依存症になった。つまり、その原因は明らかに信子妃との関係にあったということだ」

 どちらの言い分が正しいのか、私にはわからないがすごい話である。かくも夫婦関係というのは難しいものなのか。まあ、私の家もカミさんの考えていることはさっぱりわからないし、同じようなものだがね。

 第2位。自民党でタガが緩んでいるのは男ばかりではない。『新潮』はあの同僚議員・門博文(かど・ひろふみ)代議士(49)と激しい「路チュー」をして有名になった中川郁子代議士(56)が、またその同僚議員と居酒屋で酒を酌み交わしていたと報じている。しかもグラビアでも「太もも露わに『中川郁子』代議士『肉食系の夜』」とタイトルを打って、ご丁寧に短いスカートから伸びた足を接写しているのだ。
 『新潮』によれば6月30日、午後5時過ぎにグレーのスーツ姿で車に乗り込んだ中川氏は、2つのホテルでの会合を済ませた後、7時過ぎに世田谷の自宅に戻った。しかし30分もたたずに再び外出。今度の出で立ちはGジャンに白いシャツ、膝上10センチほどの茶色のミニスカート姿。「なにかに“勝負”するかのような挑発的な出で立ちに改まっていたのだ」(『新潮』)
 タクシーを拾って国道246号線沿いの居酒屋に入りテーブル席に座る。5分ほどして件の門代議士と、彼女たちが所属する二階派の事務総長・江﨑鐵磨(えざき・てつま)代議士(71)が到着。
 『新潮』は3人が仲良く話し合っている姿をバッチリ写しているから、すぐ後ろの席あたりにいたのだろう、彼らの話もすべて聞いていた。彼女を見る門議員の目は「恋する男」の目である。
 酒を飲みながら話をした後、心を後に残しためらいながら宿舎に戻った門代議士だが、中川氏のほうは雨の降る中を傘も差さず「アンニュイな雰囲気を漂わせ」(『新潮』)自宅まで歩いたという。
 このことを聞かされた後援会の人間がこう語る。

 「後援会員や支持者は、その後も門さんと会われることなど、絶対にないと思っていました。同じ派閥なので、何十人もの会合で同席することはあっても、たった3人で食事し、お酒まで飲まれていたなんて……」

 さあ中川先生はどう言い訳するのか。これがすこぶるおもしろい。

 「『門先生とは、そもそもなんの関係もありません。お恥ずかしいことですが、酔っ払ってということです』
 と強弁するので、なんの関係もない男女は路上でキスなどしない、と告げると、目つきが急に厳しくなり、
 『そうですか? チューしましょうか?』
 と言って記者の首に両手を回し、覆い被さってきたのである。そのシュールな光景を、居合わせた秘書官2人が茫然と眺めていた」(同)

 イヤーすごいね、中川さんは、肉食女子の鏡だね。記者さんはディープキスをしてもらえばよかったのに。私も会いにいってせがんでみようか。

 第1位。『現代』は「ユニクロが第2のマクドナルドになる?!」と言っている。
 ユニクロに異変が起きているという。6月の国内売り上げ高が、前年比マイナス11.7%になったのだ。常に「絶好調」という枕詞付きだったここ数年、目にしたことのない落ち込み方だそうである。
 しかも今、こうしたユニクロの「安くて品質がいい」が強みではなく弱みに変わろうとしているという。円安や材料費上昇などの要因で、値上げを余儀なくされているのが最大の理由だそうだ。
 マーケティングが専門の慶応大学商学部教授の白井美由里氏がこう指摘する。

 「誰もがユニクロには『高品質で低価格』というイメージを抱いています。しかし、数年かけてアンケート調査を行ったところ、実は『品質がいいのに安い』のではなく『安いわりに品質が良い』と評価されていることが分かりました」

 消費者がユニクロ製品の何を重視して購入しているかを調べてみると「品質の良さよりも安さのほうをより重視している」との結果が出たという。

 「ユニクロの商品の主な『売り』は安さであり、ゆえに値上げが難しいということです。マーケティング戦略の一般論として、高級ブランドのほうが価格の自由度が高い。高いものは安くできますが、もともと安いと思われているものを値上げするのは困難なのです」(白井氏)

 昨年、柳井社長は創業以来初めての一斉値上げに踏み切った。現在、ジーンズの主要ラインナップには4990円の値札も付いているそうだ。
 さらに今年の秋冬商品での一部で大幅な値上げを予定していると発表している。値上げ幅を全商品で均(なら)すと、およそ1割に達するという。
 『現代』は、ユニクロは第二のマクドナルドになるかもしれないと懸念している。日本マクドナルドは藤田田(でん)初代社長時代末期の02年、ハンバーガーを1個59円にまで値下げし、さらに原田泳幸(えいこう)前社長時代には100円マックを打ち出した。こうした徹底的なデフレ戦略が「マクドナルドは安くて当然」という意識を日本人に植え付けてしまったというのだ。
 最近、店頭では「ユニクロ、なんか高くなったね」という客の声がすでに聞こえ始めているという。
 ユニクロのくせに5000円もするジーンズは買いたくない。値段が許容できる水準を超えた瞬間に客はそっぽを向き、何も言わず、何も買わずに店を出て行く。
 ヒートテックやエアリズム、ウルトラライトダウンといった驚くべき高機能素材を次々に投入し、消費者を楽しませることも忘れなかったユニクロだが、日本の消費者はすでにユニクロの服そのものにはあまり魅力を感じていないという。それよりもヒートテックのような、ほかでは買えない新しい高機能製品を待ち望んでいるが、そういう魅力的な商品を次々に出さない限り、今までのような成長は難しくなってくるでしょうと神戸大学経済経営研究所リサーチフェローの長田貴仁(おさだ・たかひと)氏が語っている。
 たしかに「すき家」の牛丼が290円から350円になったら行く気がしなくなってしまった。『日刊ゲンダイ』が100円から110円に値上げしてから売れ行きが下降した。週刊誌も300円までは売れに売れた。だが310円にしてから部数が落ち始めた。今は平週号が400円、『現代』、『ポスト』は合併号が430円。高すぎると思うのは私だけではないはずだ。
 マクドナルドの苦境は異物混入のせいではない。もうあのこてこてのハンバーガーという食べ物が時代に合わなくなってきているのだと思う。ユニクロがフリースを出したときは、日本中の多くがユニクロのフリースでくつろぎ、外出にまで着た。あのようなブームをつくれない限り、拡大路線を突っ走ってきたユニクロは第二のダイエーになるのではないか。そういえばダイエーの中内功と柳井正、どことなく似ている気がするのだが。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 画像共有サービス「Instagram(インスタグラム)」の活用は、美しき女性芸能人のあいだでマストになっている感がある。「女性タレントがジムでエクササイズ中の画像を見て、ファンがすごい腹筋だと感心している」といった、「○○が△△の写真をインスタグラムに投稿」というだけのネットニュースはいまどき珍しくない。このような話題に、はたしてニュースとしての情報性はあるのだろうか……と首を傾げてしまうところがあるが、もちろん画像をアップする芸能人側には何の非もない。

 2015年前半を通じて、Instagramでは「寝起きすっぴん」の公開がトレンドになっていたようだ。その前段階として、タレントたちによるノーメイク顔の公開がブームになっていた(なぜかナチュラルメイクをしっかり整えてあるのはご愛敬)。それが寝起きともなると、普通なら顔がむくんでいてもおかしくないわけで、おおやけにさらしてしまうのは精神的ハードルが高い。だからこそ、寝起きでもキレイなわたしは本当にキレイという、いわば自己顕示欲のようなものがうかがえる。ただ、別の見方もできよう。すなわち、くしゃくしゃの髪やすっぴんなどのナチュラルな様子は、ライフの充実した女性たちにとって「セクシー」なスタイルの表現でもあるということだ。男性ファンに媚びるのではなく、これが自然なワタシと無言の主張をしている面もある。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 埼玉県所沢市で、2015年4月に始まった「育休退園」が問題になっている。

 今年3月、所沢市は、親が育児休業をとると、それまで保育園に通っていた上の子どもは原則退園させる方針を突然通知した。退園の対象になる児童は0~2歳児で、双子や病気のある子などの例外を除いて、出産の翌々月末までに退園させなければならなくなったのだ。

 これまで、所沢市は、園長の裁量を認め、育休を理由とした退園は求めていなかったが、4月に国の「子ども・子育て支援新制度」が施行され、入園調整は市が一括して行なうことになった。新制度では、認可保育所の入園条件を、これまでの「保育に欠ける事由」から「保育の必要性」に変更。国は、制度を利用できる人が広がったと説明していた。しかし、所沢市は、「育児休業中は家庭での保育が可能。保育園での保育の必要性は認められない」として育休退園を迫ることになったのだ。

 所沢市は、育休退園を行なう理由として、ほかにも入園を待っている保護者との公平性を上げている。また、育休終了後はもとの保育所に子どもが復園しやすいようにしたり、育休中の子育て支援策も行なう予定だ。

 今回の所沢市の方針に対して、「少子化が逆に進む」「2人目を産む気がなくなる」「女性の社会進出どころか、時代に逆行している」と批判の声が上がる一方、「保育所は働く親のための施設」「育休中は預ける必要がない」と肯定する意見も寄せられている。

 たしかに、認可保育所の空きを待つ待機児童は多い。待機児童を少しでも減らすために、親が育休中はいったん子どもを退園させ、ほかにも入園待ちをしている子どもが保育所に通えるようにするのは、少ない保育の枠を効率よく利用する合理的な施策なのかもしれない。

 だが、保育所はたんなる子どもの一時預かり場所ではない。子どもが成長していくための生活の場であり、教育の場でもある。行政の都合で、ようやく慣れた保育園を辞めたり、復園したりしなければならないのは、子どもにとってよいことなのか。たんなる数合わせでは終わらない、対策を考える必要があるだろう。

 ちなみに、5月17日の市政トークでの藤本正人市長は「子どもは保育園より、お母さんといたいはず」と発言したと伝えられている。この考えが所沢市の育休退園の背景にあるなら、「保育は母親の役目」という性別役割分業に囚われた認識ということになる。待機児童対策を進めるべき行政のトップの発言としては、見過ごせないものがある。

 6月25日、所沢市の保護者11名は、育休退園を求めるのは違法だとして、市を提訴。育休中も従来通りに通園できるように求め、判決が出るまで退園を差し止める仮処分も申し立てた。

 そもそも育休退園の背景にあるのは、圧倒的な保育所不足だ。保育所に入りたくても入れない子どもが多いため、同じ働く親同士が分断され、その少ない枠を奪い合わなければいけない状況になっている。

 所沢市以外にも熊本市、堺市などが育休退園を導入しており、保活(保育園探しの活動)に苦しむ親がいる。

 今回の訴訟は、この国に横たわる子ども・子育てに関する重要な問題提起だ。丁寧な議論を重ね、小手先の待機児童対策に終わらない、根本的な解決を示唆する判決がでることを期待したい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 交通や旅行の業界ではいま、「女子旅」が一つのキーワードになっている。まだまだ性別によって面倒なことが多い日本社会。女性にとって、男性の目を気にしない空間はかなりラクなものだ。せっかくの休みの日の旅行ならば、若い世代の女子だけで存分に旅を満喫したいというニーズは昔からあったはずで、「女子旅」という言葉を業界が用いることには、そんな女性の背中をそっと押す効用があるだろう。

 女子旅の象徴的なフレーズはいくつかある。たとえば、温泉ならば「美肌の湯」。佐賀県の嬉野(うれしの)温泉、島根県の斐之上(ひのかみ)温泉、栃木県の喜連川(きつれがわ)温泉が「日本三大美肌の湯」として有名だが、これ以外にも全国各地に存在する。「科学的な根拠」が大事にされる時代を反映して、大学の先生などが肌への効能にお墨付きを与えることも多いようだ。

 伊勢神宮、出雲大社、屋久島といった、「パワースポット」をめぐる旅も人気だ。大地から気を得られる(とされる)地をパワースポットと呼ぶことが多いが、女子旅の文脈ではなぜか「縁結び」のご利益が注目されるようだ。本来は運気のアップとは関係のない概念だが、それを指摘するのは野暮というものかもしれない。

 ほかにもご当地自慢のグルメやエステ付きプランなど、女子旅の魅力は尽きない。女子会がいまや外食産業に欠かせない存在であるように、女子旅もまた、不振にあえぐ観光地にとっての「救いの女神」で、その期待に応えるべく力が入っているのだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 自民党の「郵政事業に関する特命委員会」(細田博之委員長)が2015年6月、ゆうちょ銀行の貯金限度額の3000万円への引き上げを柱とする提言をまとめた。

 提言によると、現行1000万円の貯金限度額を9月末までに2000万円に引き上げる。その後、2年後までに3000万円に再び上げる、という段取り。かんぽ生命保険も現行の加入限度額1300万円を9月末までに2000万円へ上げる。

 引き上げは過疎地対策という。過疎化や高齢化が進む地方では、地域の郵便局が唯一の金融機関であることが少なくない。確かに車の運転ができない高齢者にとって郵貯の限度額が1000万円に抑えられているのは、不便なことだろう。「限度額が1000万円では老後の生活に用いる退職金を預けられない」との声も聞こえる。

 これに対し、民間金融機関は「民業圧迫だ」と反発する。3000万円まで限度額が引き上げられると、ゆうちょ銀行への資金シフトが発生し、地域金融機関の融資機能が弱まる恐れがある。そうなると、地域金融機関から融資を受けている中小・零細企業の経営にも影響する。政府が旗振りする地方創生事業の足かせになりかねない。そのため、自民党内にも異論が少なくない。

 限度額の引き上げは、自民党の有力支持組織「全国郵便局長会」が働きかけてきた経緯があり、提言は同党が来年夏の参院選をにらんだパフォーマンスとの見方もある。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 幼いころに親しくしていた男女の友だちが大人になってする結婚のこと。

 最近、この「幼なじみ婚」なる言葉がテレビの情報番組などの媒体で取り上げられたりしているが、筆者周辺から判断するかぎり、「スマ婚」(注1)「ハレ婚」(注2)「年の差婚」「格差婚」「同性婚」……と、いろんなタイプの結婚に対して「~婚」といちいちネーミングしてしまう近年の風潮によって再カテゴライズされただけで、とくにソレが流行中という印象はない。

 かの有名な青春野球漫画『タッチ』(作画:あだち充)を代表とする幼なじみ同士のゴール・インは、「初恋相手が結婚相手」「おたがいの気持ちがブレ続けなかった」という意味では“恋愛の理想型”と崇(あが)められたりもするが、一方で「新鮮味がなさすぎて、結婚してからの浮気がこわい」などのリスクも指摘されている。

 いずれにせよ、何十年、何百年も前から幼なじみ婚のケースは、ある一定数の比率が実在していたわけであって、あらためて今、フィーチャーする意義は「恋愛という行為に億劫(おっくう)さを感じる傾向の強い平成生まれの若者たちにとって、気心の知れた幼なじみは恰好の結婚相手」となりつつあることくらいなのではなかろうか?

※編集部注
(1)「スマ婚」:費用が低予算で済むスマートな結婚式。
(2)「ハレ婚」:一夫多妻を認めるハーレム婚。コミックのタイトルでもある。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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