桜、菊、菜の花など、草木の花や蕾を塩や味噌に漬けたものを花漬という。京都の花漬といえば、春の陽にまばゆい黄色の花を咲かせる菜の花の、咲きかけの蕾を塩で漬けたものである。菜の花漬けとも呼ぶ。春の植物独特の甘みと苦みがあり、蕾を噛みしめると、ぷちっとした歯ごたえとともに、やや脂っこいような風味が口に広がる。この春らしいほろ苦さを、子どもの頃は食べにくく感じたが、大人になると、癖のあるもののほうがお酒にも合うので好きになってくる。先日、3月3日付(2015年)の朝日新聞の夕刊で「昭和の名匠、小津安二郎は菜の花漬けを好んだ」という記事を目にした。監督にも、花漬にも、どこか通じる滋味深さがあって、とてもお似合いの組み合わせだ。

 菜の花は、種子から菜種油が採られるアブラナ科の一種で、今日よく見かける品種はセイヨウアブラナである。「ナノハナ」という品種はなく、一般にアブラナ科の花を指して使う呼称である。花漬は、生育途中で間引かれた菜種油用のアブラナの若芽を、もったいないから保存用に漬けたのが始まりだと伝えられている。5日間ほど塩漬けにした浅漬けのものと、半年近く漬けこんで黄金色のようになったひね漬けの2種類がある。

 古くから洛北・松ヶ崎(左京区)の名産として、アブラナの一種で京都の伝統野菜である畑菜(はたけな)が栽培されていたという。この畑菜は一般的なアブラナとよく似ているが、起源などの詳細は明らかになっていない。昭和30年代に激減し、一時はほとんど食べられなくなっていた。近年、固有種の野菜が見直される中で栽培するところが徐々に増え、乳酸発酵させた昔ながらのひね漬けをつくるところも以前より多くなっているそうだ。


菜の花の浅漬け


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 『週刊ポスト』(4/3号、以下『ポスト』)は安倍首相にも読んでほしいと、いまベストセラーの絵本を紹介している。

 タイトルは『世界でいちばん貧しい大統領のスピーチ』(汐文社刊、くさばよしみ・編、中川学・絵)。つい3月1日に退任したばかりのウルグアイの大統領、ホセ・ムヒカさんが2012年6月20日に国連の「持続可能な開発会議」(リオ+20)で行なった演説の内容を再録して絵本にしたものだ。

 「2012年、ブラジルのリオデジャネイロで国際会議が開かれました。環境が悪化した地球の未来について、話し合うためでした。
 世界中から集まった各国の代表者は、順番に意見をのべていきました。しかし、これといった名案は出ません。
 そんな会議も終わりに近づき、南米の国ウルグアイの番がやってきました。
 演説の壇上に立ったムヒカ大統領。質素な背広にネクタイなしのシャツすがたです。そう、かれは世界でいちばん貧しい大統領なのです。
 給料の大半を貧しい人のために寄付し、大統領の公邸には住まず、町からはなれた農場で奥さんとくらしています。花や野菜を作り、運転手つきの立派な車に乗るかわりに古びた愛車を自分で運転して、大統領の仕事に向かいます。
 身なりをかまうことなく働くムヒカ大統領を、ウルグアイの人びとは親しみをこめて『ペペ』とよんでいます。
 さて、ムヒカ大統領の演説が始まりました。会場の人たちは、小国の話にそれほど関心をいだいてはいないようでした。しかし演説が終わったとき、大きな拍手がわきおこったのです」(同書はしがきより)

 その内容を掻い摘まんで紹介しよう。

 「世界をおそっているのは、じつは欲深さの妖怪なのです」

 「いまや、ものを売り買いする場所は世界に広がりました。わたしたちは、できるだけ安くつくって、できるだけ高く売るために、どの国のどこの人々を利用したらいいだろうかと、世界をながめるようになりました」

 「貧乏とは、少ししか持っていないことではなく、かぎりなく多くを必要とし、もっともっととほしがることである」

 「人より豊かになるために、情けようしゃのない競争心をくりひろげる世界にいながら、『心を一つに、みんないっしょに』などという話ができるのでしょうか。だれもが持っているはずの、家族や友人や他人を思いやる気持ちは、どこにいってしまったのでしょうか」

 「社会が発展することが、幸福をそこなうものであってはなりません。発展とは、人間の幸せの味方でなくてはならないのです。
 人と人とが幸せな関係を結ぶこと、
 子どもを育てること、
 友人を持つこと、
 地球上に愛があること──
 こうしたものは、人間が生きるためにぎりぎり必要な土台です。発展は、これらをつくることの味方でなくてはならない」

 「水不足や環境の悪化が、いまある危機の原因ではないのです。ほんとうの原因は、わたしたちがめざしてきた幸せの中身にあるのです。見直さなくてはならないのは、わたしたち自身の生き方なのです」

 極めてシンプルで真っ当な内容だが、この約10分のスピーチが終わった後、スタンディングオベーションが起こり、拍手が鳴りやまなかったという。
 ムヒカ氏は1935年生まれ。60年代からゲリラ活動に参加して4度逮捕され、2度脱獄した経歴を持つ。壮絶な半生を送った後、09年11月の大統領選挙で勝利し、10年3月に大統領に就任した。
 安倍首相も4月にアメリカへ行って米議会で演説する予定があるという。『ポスト』が言うように、この絵本を読んで参考にしてみてはいかがだろう。だが「欲深さの妖怪」の権化のような安倍さんには言えないだろうな。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 今週はとびきりのスクープがあるが、『週刊文春』を読んでない人は、新聞、スポーツ紙、テレビを見ても出ていないので、ネットで断片情報を知ることになるのだろう。この1本だけでも週刊誌を買う価値があろうというもの。お楽しみを!

第1位 「AKB48盗撮事件 犯人は事務所元役員」(『週刊文春』4/2号)
第2位 「『これが陸自3佐か、情けない……』防衛省が嘆いた被害女性の臆病と感傷」(『週刊新潮』4/2号)
第3位 「わが東京海上との『1300日裁判』」(『週刊現代』4/11号)

 第3位。東京海上日動火災保険といえば損害保険業界大手だが、そこで社員による訴訟が起きていると『現代』が報じている。
 そこに勤める50代の現役社員、田中一郎氏(仮名)がそれだ。東京の有名私立大学を卒業した田中氏は、北海道にある支店に勤務していた10年7月、突然降格人事を言い渡されたそうだ。
 課長代理から主任に格下げとなり権限も大幅に奪われ、入社24年にして入社3年目の社員と同じ扱いを受けるようになったというのだ。
 原告代理人を務める菅谷公彦弁護士によると、「05年、田中氏は最高評価のSランクでした。これは3000人以上いる課長代理クラスの、上位5%にしか与えられません」
 ところが06年、田中氏の知らないところで評価は一気に3段階落ち、Bになり、10年には最低のDとされ、異例の降格人事を受けたのだ。
 田中氏は社内の苦情処理委員会に諮(はか)ったが十分な説明はなく、翌11年に降格の無効を求める労働審判手続きを札幌地裁に申し立てた。だが裁判官らによる1か月間の審議と調停も不調に終わる。
 その間に会社側からは社内の書類を奪われるなどされる。弁護士からは、自らの人権を守るために裁判所に提出しようとしている証拠書類を渡す必要はないと言われていたのに、元上司らは渡さないと懲戒解雇もありうると言わんばかりの勢いだったので抵抗できなかったそうだ。
 この直後、田中氏は北海道から遠く離れた西日本の支店に転勤となる。4年間、約1300日、毎回自費で札幌地裁に通う闘いの日々が始まった。
 05年に発覚した大手損保各社の不払い問題は、直前の3年間で約18万件、総額84億円超に達し、東京海上を含む26社が金融庁から業務改善命令を受けたが、これと田中氏の降格が深く関わっているというのである。菅谷弁護士がこう言う。

 「報告書には『田中氏の不十分な指示のために、担当者が、支払い漏れへの対応業務に必要な書類の入ったフォルダーを廃棄した』とか、金融庁の指示による調査に際しても田中氏が、本来支払い漏れとカウントするべき事案を『一律「支払い対象外」とする報告を独断で行った』などと書かれていた」

 つまり一部の不払いの責任が田中氏にあるかのように報告されていたというのである。
 裁判ではこんなこともあった。12年8月、会社側が田中氏の「勤務態度が悪かった」ことを裏付けるとして、驚くべき「新証拠」を提出したという。A3用紙2枚半にびっしりと書かれた「指導記録」だ。
 だが、この書類はエクセルで作った表のプリントアウトで、作成時期がわかる元のデータを出せと言っても出してこなかったという。
 その課長は指導記録について、一般的なもので他の社員にも同様の指導記録を作成していると証言していた。
 だが、裁判官に確認されると、件の課長は「いや、田中氏だけです」と言ったのだ。
 そうして今年3月18日、札幌地裁の判決では、田中氏の降格人事は不当なものだったとして、田中氏の地位を元に戻すことが認められた。しかし、処分の理由は解明されておらず、慰謝料も認められなかった。
 これに不服な田中氏は、このままでは引き下がれないと、札幌高裁に控訴する予定だそうだ。
 『現代』の報道が事実だとすれば、社の不始末を一社員に押し付けたということになろう。田中氏の言うように、処分の理由を東京海上側が明らかにしない、または明らかに出来ないのでは、我々も納得がいかない。損保会社の深い闇をこじ開けられるのか、注目の裁判である。

 第2位。3月18日にアフリカ大陸の北端に位置するチュニジアの首都・チュニスで発生したテロ事件で、死傷者は約70人。邦人3人も死亡している。
 『ポスト』(4/3号)は、安倍首相はイスラム国の人質事件のあと、「彼らに罪を償わせるために人道支援する」「日本人には指一本触れさせない」と言ったのに、それを果たせなかったではないかと責めている。それは安倍首相にいささか酷な気はするが、イスラム国が言っているように、日本人はどこにいても過激派の標的になる時代が来たことは間違いない。
 安倍首相は3月20日の国会質疑で自衛隊を「我が軍」と答弁した。麻生太郎副総理の「未曾有(みぞゆう)」などとは比べものにならない重大発言だが、安倍首相御用達の大新聞は情けないことに及び腰の批判しかしていない。
 自衛隊を「我が軍」と思っている安倍首相には、この『新潮』の以下の記事はショックだったであろう。
 なぜなら、休暇を利用して母親との観光旅行中にテロリストたちによって負傷した被害者のひとりが、ただの民間人ではなかったからだ。
 その人は結城法子氏 (35)。銃撃された彼女は左耳などに怪我を負い、現地の病院に搬送されて全身麻酔での手術を受ける事態となった。
 その彼女の手記がいくつかの新聞で掲載され、そこには彼女が自衛隊中央病院に勤める陸上自衛隊の3等陸佐であることが書かれている。『新潮』は彼女が負傷したことや、その大きなショックがあることには配慮しながら、3佐といえば旧日本軍の少佐に相当する要職なのに、その手記には「臆病と感傷」しかないと難じている。
 彼女は自衛隊員の健康管理等にあたる医官で「約200人の部隊を指揮するほどの職責を担っている。(中略)有事の際は海外に派遣される可能性もあります」(防衛省担当記者)
 陸上幕僚監部広報室も「医官といえども陸上自衛官ですから、自衛隊員としての最低限の訓練は受けております」と認めているように、「結城氏は立派な我が国の『防人(さきもり)』の1人なのである」(『新潮』)
 そういう立場の人にしては、手記に立場を意識していない言葉が並んでいるのは如何なものかというのである。たとえばこういう箇所だ。

 「外でも、救急室でも、多くの人がいて写真やビデオを向けられ、とても不快でした」「私は一日中泣いていたせいで目が腫れ上がって開けることができず……」

 『新潮』はこうも書いている。

 「ここには『被害者としての思い』が前面に押し出されているものの、他方で『何か』が決定的に欠けているとの違和感が拭い去れない。それは手記が徹頭徹尾『私』に終始しており、陸自3佐という『公の立場での思い』が、見事なまでにすっぽり抜けている点に起因する」

 また彼女を取材しようとして大使館の人間とやり取りしている朝日新聞の記者の声を、「日本語で怒鳴っている声が聞こえ、ショックでした」と書いているところについても、こう書いている(朝日新聞の記者は、彼女の手記の後ろに、そのときのことについて書いている)。

 「手法の是非はともかく、メディアが被害者の生の声を聞こうとするのはごく自然な行為であり、彼女が矛先を向けるべきは朝日ではなく、テロリストであるはずだ。しかしながら、手記にはテロの犯人を非難する記述は1行たりとも見当たらない……」

 そんな彼女に「国防の前線に立つ自衛官の自覚を感じるのが難しい」(同)と言い、それを象徴するのが「結城3佐は、海外渡航承認申請書を提出しておりませんでした」(陸幕広報室)という点だと指摘する。
 自衛官には私的休暇であっても日本を離れる際には、事前に届け出を行なわなければならない義務が課せられているそうだ。彼女は無断渡航だったのだ。

 「病院へ着くと、パスポートなどが入ったバッグはとられて、携帯もなくなってしまいました」「日本大使館の方がいらして、日本の家族の連絡先を聞かれましたが、携帯がなかったので実家の固定電話しか分からず、なかなか連絡がつかなかったようです」

 こうした記述にも、元陸自北部方面総監の大越兼行氏は愕然とすると言う。

 「家族との連絡よりも何よりも、真っ先に防衛省に連絡を入れて、自分が置かれた状況を報告し、何をすべきか指示を仰ぐことが自衛官には求められるはずです。それもせずに、手記を公表する……。彼女の一件が、自衛隊に対する国民の期待を裏切ることにつながりはしないかと危惧しています」

 彼女の場合、重傷を負ったわけだから、ここまで言うのは酷な気が私にはするが、我が軍隊だと考えている安倍首相はどう感じているのだろう。新聞記者はそのことについて質問するべきである。
 『文春』(4/2号)は「GW旅行 危険な観光地リスト」という特集の中で、こうしたテロに遭う危険性のある観光地をあげている。
 北アフリカに近いイタリア。今年に入ってベルギーやデンマークでイスラム過激派によるテロ事件が起きている。カナダでも銃乱射事件が起きた。当然のことながらアメリカは最も危ない。東南アジアでもインドネシアやタイの南部、さらにフィリピン南部のスールー諸島などなど。
 結局、どこへ行っても危険は伴うということだ。比較的安全なのは国内旅行だけだというのでは、寂しい連休になりそうである。

 第1位。さて今週の第1位はテレビでは絶対放送できない大スキャンダルである。何しろ今をときめくAKB48の女の子たちを盗撮していた動画や写真を『文春』が入手したというのだ。

 「動画のひとつを開く。
 画面はホテルの一室でカメラをセッティングする黒いTシャツの男を映し出す。長髪の男は角度を確認すると、小走りに部屋を出る。
 その一分後に入ってきたのが人気メンバーのA子だ。A子は当時未成年。上は黒のTシャツ、下は白いジャージのパンツを穿いている。 その後ろから男も一緒に入室。(中略)
 男が退出すると、痩せてすらりとした体型のA子は、ジャージのパンツ、ストッキング、パンツを順に手早く降ろす。露になる臀部。A子は、あらかじめ用意されていた白いビキニの水着のパンツを穿き、次に上半身の着替えにかかる。(中略)
 そうして緑や黒、ピンクなど計五種類の水着の試着を終えたのだった」

 これを盗撮していた男は、何とAKB48のメンバーが所属している「オフィス48」の元取締役だった野寺隆志氏(38)だというのだ。
 彼は2010年に「一身上の都合」でそこを退社しているが、2013年に小学生の女子児童に対するわいせつ行為で逮捕され、実刑判決が出ている。
 その取り調べの際に、ライターやボールペン状のカメラで盗撮をしていたと白状しているのだが、なぜかその件では立件されていない。
 その膨大な盗撮動画や写真を『文春』が手に入れたのである。動画は15時間75本もあるそうだ。冒頭に紹介したシーンはその一部である。
 野寺というのはどんな人間だったのか。

 「野寺さんは幹部の中でも現場に近い人。マネジャーのリーダーみたいな立場でした。同じくオフィス48の取締役で、劇場支配人でもあった戸賀崎(智信)さんの次に発言力があった。でも、野寺さんは権力をひけらかすことなく、現場スタッフに人気でした。お酒が好きで、後輩を飲みに連れていってくれたり、上に内緒で深夜にAKB 48劇場を開放して、クラブイベントみたいな飲み会を開いてくれたこともありました」(元AKB関係者)

 AKB48のメンバーも気さくな彼に気を許していたという。その人間が、自分の邪悪な欲望を満たすために、盗撮を繰り返していたというのだから、彼女たちにとっても衝撃的だろう。
 『文春』によれば「さらに悪質なのは、全ファイルの三分の一以上に上るトイレ盗撮だ。他の動画と同様、まずカメラをセットする野寺が映り、その後にメンバーが次から次へと映り込み、用を足す。その場面だけを切り取り、集めた上で、メンバーの名前を冠したファイルも存在した」というのだから、怒りと恥ずかしさで卒倒する女の子もいるだろう。
 野寺は今年の初めに出所している。彼をインタビューしているが、ほとんど喋らずに逃げてしまったそうだが、それはそうだろう。
 『文春』は、ある運営幹部に証拠の一部を提示したうえで、今後の対応について訊ねたそうだが、運営会社AKSからはこんな回答しかなかったそうだ。

 「今の段階で事実関係を確認できていないため、コメントは差し控えさせて頂きます」

 05年のAKB48の旗揚げ公演から今年で10年になる。

 「記念すべき節目の年に発覚した、この“重大事件”を無かったことには出来ない。野寺本人の罪は言うまでもないが、いま問われているのは、少女を預かる運営側の危機対処と管理責任なのである」(『文春』)

 現・元メンバーやその親たちに、運営会社や秋元康たちは何と言うつもりなのだろう。彼らは野寺が逮捕されたとき、この事実を警察から知らされていた可能性は十分にあるはずだ。
 また、この前代未聞の盗撮動画がネットに流れないという保証はない。そうなればAKB商法が根底から崩れることは間違いない。
 こうしたものが発覚するというのもAKB人気の終わりの始まりであろう。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 甘味に対して貪欲な国民性でもあるのだろうか。ここ数年、マスコミは「新顔スイーツ」の紹介を好む。クロワッサンとドーナッツのハイブリッド、「クロナッツ」のヒットは記憶に新しいところだ。その生みの親たるニューヨークの「ドミニク・アンセル・ベーカリー」が、2015年から表参道に進出するとあって話題になっている。

 こちらの名店はクロナッツのみならず、クッキー生地のカップにミルクを注いだ「クッキーショット」など、複数の人気メニューを持つ。その一つが「フローズンスモアーズ」、日本で「フローズンスモア」と呼ばれるものだ。「Frozen S'more」と綴り、「フローズン」はもちろん「凍った」という意味だが、不思議な語感の「スモア」は「some more」、「もっと(食べたくなる)」といった意味から来ている。チョコレートとバニラジェラートを、マシュマロに包んで冷たくしたものに、バーナーで焼き色をつける。外は香ばしく、中はとろとろという二つの食感が楽しい。

 株式会社エル・ディー・アンド・ケイが展開している「宇田川カフェ」など、いち早く導入している店も多い。マスコミの前評判通りにブレイクを果たせるや否や、とにかく試してみたい一品だ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 諸外国に例をみないスピードで高齢化が進む日本。2013年の合計特殊出生率(一人の女性が一生に産む子どもの平均数)は1.43で、やや回復の兆しをみせるが、人口はすでに2006年をピークに減少に転じている。出生率の低下に歯止めをかけ、社会の支え手を増やすために、少子化対策は喫緊の課題だ。その一環として、この4月にスタートしたのが「子ども・子育て支援新制度」(参考:「すくすくジャパン!」)だ。

 2012年8月に民主党政権下で、自民・公明両党を含めた3党合意で可決した「子ども・子育て関連三法」に基づくもので、子育てをめぐる問題を解決し、「子どもを産み、育てやすい社会」を作ることを目指している。

 国が掲げる制度のポイントは次の3つ。

1.質の高い幼児期の学校教育・保育を総合的に提供
2.待機児童解消のために、保育の受け入れ人数の拡大
3.子育て相談や一時預かり、放課後児童クラブなど、地域の子ども・子育て支援の充実

 2014年4月1日現在の待機児童数は全国で2万1371人。だが、潜在的な待機児童数は85万人(厚生労働省推計)ともいわれており、保育の量の確保は待ったなしだ。そのため、新制度では、当面、消費税の増収分から7000億円をあてて、待機児童の解消のほか、一時預かりや病児保育など地域での多様な子育てニーズにも、国が財政支援を行なうことになっている。

 それに伴い、幼稚園や保育所などの施設を利用する方法も大きく変わり、保護者の就労状況、子どもの年齢などに応じて、子どもを3つの認定区分に分類。居住地の市区町村が、その子どもに必要な保育や教育の時間を認定して、給付をするといった形になる。

 新制度は、待機児童の解消に一役買うと期待する声もあるが、問題も多くはらんでいる。

 新制度はこれまで管轄外だった多様な施設や事業を制度化することで、保育の「量」の確保を打ち出しているが、市町村が責任をもって保育を行なう認可保育所を増やすことを約束しているわけではない。

 施設ごとに、それぞれ異なる基準や条件が設定されており、あらたに導入される小規模保育事業などは、保育士の数や施設の設備などの基準が低く、保育の「質」には格差が生まれそうなのだ。また、認可保育所と違って、その他の施設は市区町村の責任が曖昧で、事故が起きたときなどの補償にも差が出そうだ。

 結局、保育の「量」は増えても、「質」には大きな開きがあるため、よりよい保育環境を求めて、これまでと変わらぬ「保活」が繰り広げられることになりそうだ。

 そもそも、保育・幼児教育における家庭支出は、OECD平均が19%なのに対して、日本はそれを大幅に上回る55%。家計の負担が重く、国による公的支出は先進国のなかで最低レベルとなっている(「OECD図表でみる教育2014年版」より)。

 本当に「子どもを産み、育てやすい社会」にするためには、保育・子育て分野にもっともっと大胆な公的投資が必要ではないだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 今回の項目は筆者自身も関わっているため、内容が客観視できていないところもあるだろう。読者のご寛恕を請う。

 2014年、テレビ好きにとって一つの事件が起きた。視聴者参加であることから、権利関係の明確な他のバラエティーに比べて再放送が難しいとされていた『アメリカ横断ウルトラクイズ』が、CSの「ファミリー劇場」に登場したのである。これが起爆剤となって、「眠れるクイズファン」が目覚めだしている。かつて隆盛をきわめた視聴者参加番組を、もっと見たいというニーズがあるのだ。

 この4月からはテレビ朝日系『パネルクイズ アタック25』の新しい司会者として俳優の谷原章介が登場し、「老舗」もまだまだ意気盛んなのだが、いかんせんレギュラーの視聴者参加型クイズ番組はこれだけといった有様。しかし一方では、クイズ専門誌『QUIZ JAPAN』(セブンデイズウォー/ほるぷ出版)が昨年から登場した。過去の人気番組の裏側をつぶさに追うことで、多少なりとも飢餓感を満たしている。

 いま、新たな「クイズ番組」の舞台となっているのは、動画配信サービスである。2014年末に始まった『クイズLIVEチャンネル』(http://ch.nicovideo.jp/quizlivech)では、「ニコニコ動画」を舞台に、オリジナルのクイズ番組が配信されている。その中で、16人の挑戦者が頂点を目指す『LOCK OUT!!』は、1問でも不正解すれば即退場という早押しバトルが好評だ。出場までのハードルが地上波のテレビよりかなり低いこともあって、全国からクイズファンが集まっている。先に紹介した雑誌『QUIZ JAPAN』も、オリジナルのコンテンツとしてクイズ王がしのぎを削る本格的な番組『QUIZ DEAD OR ALIVE』を配信中だ。こうした流れがビジネスとして成立するや否や、ぜひ今後を注視していただきたい。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 コンビニエンスストア3位のファミリーマートが、同4位のサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングスと経営統合交渉に入った。2016年9月の統合を目指すという。店舗数は両社合わせて約1万7000店となり、最大手のセブン-イレブンと肩を並べることになる。売上高はローソンを抜いてセブン-イレブンに次ぐ業界2番手に浮上する。

 両社が経営統合に動いた背景には、「人口減少社会が到来する中、コンビニ業界では都市部を中心に過当競争が繰り広げられており、収益力や商品開発力など企業グループとしての体力が問われている」(流通企業幹部)という事情がある。

 統合により、商品の品揃えが豊富になるほか、PB(プライベート・ブランド)商品の開発も盛んになり、共同仕入れ・共同輸送でコストダウンが図られると見られる。消費者として歓迎したい。

 コンビニ業界では、売上高でファミマ・サークルKサンクス連合に抜かれて業界3位に転落するローソンも、中堅コンビニチェーンに対し経営統合や業務提携に向けて働きかけを強めそうだ。

 コンビニはいまや預金の引き出しや公共料金の支払い、宅配便の預け・受け取り、コンサートチケット購入といったサービスも展開し、社会インフラの側面もある。

 業界再編の動きは消費者にとって目が離せない。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 女子のみが集まって設けられる食事や飲みの席で、異性関係や仕事の愚痴を話題の肴とする「女子会」に対抗(?)して、最近妙にマスメディアでもクローズアップされている「男子のみが集まって設けられる食事や飲みの席」のこと。男子会は「大勢で長時間、食卓で語らうことが男性ホルモンを高める」といった“群れ食”の効果をもたらすと解説されたり、趣味を共有することを目的とした好奇心旺盛な男子の集まりとして取り上げられたりしている。

 とくに芸能界では、ジャニーズ系アイドルだとかEXILE(エグザイル)グループだとかの、異性との交流が人気の浮き沈みに直結する立場にある連中が、「おとといボク、男子会だったんですよ」だとか「今年のクリスマスはメンバーだけで男祭りでした」だとかと、“クリーンな日常”をアピールするため、やたら男子会を前面に打ち出す傾向が強い。が、「どうせ違う日には売れっ子女優だとか物わかりの良い美人素人だとか単体AV嬢だとかとよろしくヤッてんだろ、コラ!」と筆者は睨んでいる。

 ちなみに筆者レベルの男子の場合、飲みの誘いで女子にも声を掛けてみたけど、持ち駒全員に断られ、結果として男子会になってしまったケースは昔からしょっちゅうで、べつだん改めて騒ぎ立てる“社会現象”でもないのでは、と思ったりもする。

 ただし、合コンが終わった直後に「反省会」と称して開かれる男子会は、ヘタすりゃメインイベントだったはずの合コン自体より盛り上がることもしばしばだ。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


<<前へ       次へ>>