葩餅は正月を代表する和菓子で、茶の湯の初釜に欠かすことのできないものである。丸く平らにのばした白餅のうえに、小豆汁で色づけした菱形の薄い餅を重ね、中には、蜜に漬けた甘いふくさごぼうと白味噌の餡を入れて二つ折りにしてある。形も材料も古式ゆかしく、味わい深い和菓子といえよう。今日に伝わっている葩餅の原型は、菱葩餅(ひしはなびらもち)といい、明治中期に菓子舗の川端道喜(かわばたどうき、左京区)によってつくられた。近年の和菓子店で白餅と菱型の餅を重ねた古式のものは見られることは少なく、餅を求肥に変えて食べやすくした葩餅が主流になっている。

 もともと宮中や神社の正月行事のためにつくられた菱葩に発し、平安期のころに行なわれていた「歯固め」という、新年行事によって起こったといわれている。歯固めの歯とは齢(よわい)の意味で、齢を固めるところから長寿を祝うという趣意の儀式であり、大根、瓜、猪肉、鹿肉、押鮎、鏡餅などを天皇に供するものであった。葩餅に用いるごぼうは塩押しした鮎(押鮎)に見立ててつくられたものであり、白味噌餡は祝賀に食する雑煮になぞらえているのである。

 『日本国語大辞典』によれば、「宮中では、現在も新年お祝料理として、鯛の切り身や浅漬大根などと共に白い美濃紙に包んだ直径一五センチほどの菱葩の餠(「お祝いかちん」とも呼ばれる)が出される。天皇・皇后は雉酒(きじざけ)と一口ずつ交互に食べるのがしきたりである」という。


手前は二條若狭屋のもので、ついた餅に近い食感で山椒風味が加えられている。奥の千本玉寿軒のものは、花びら風の赤みがきれいでとてもやわらなか食感。形状はこのような雰囲気のものがいちばん多く見られるようである。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 1月3日、TBS系で放送された『独占!長嶋茂雄の真実』が大きな話題になっている。長嶋といえば1957(昭和32)年に巨人軍に入団以来、日本野球界を王貞治と共に牽引してきた大ヒーローだが、その人気は現役を引退しても衰えることがなかった。

 その長嶋が脳梗塞で倒れたのは2004年3月4日。医者もさじを投げるほどの深刻な病状だったが、奇跡的に回復した。だが重度の言語障害と右半身マヒが残り、歩くことさえ困難ではないかといわれた。

 しかし長嶋の不屈の精神は、老いを迎えても病に挫けることはなかった。番組の中で長嶋は「それじゃあ病気と勝負しようと思いました」と語っている。

 週4回のリハビリはトレーニングといえるほどハードなものだ。マヒが残る右手一本での腕立て伏せなど見ているこちらが辛くなるほど過酷だが、長嶋は挑戦し続ける。

 「落ち込まない。前に出るという気持ち」「もう一度走りたいと思っている」

 リハビリを見ている教え子の松井秀喜の表情が曇るが、長嶋の表情は明るく屈託がない。

 倒れてから10年が過ぎ、右半身のマヒは残り、以前のように流ちょうに話すことはできないが、78歳とは思えない顔の艶とカッコイイ姿勢は変わらない。

 長嶋は人生で二度ヒーローになったのだ。一度は全野球ファンの憧れとして、二度目は老いや病に苦しむ人たちに勇気を与えてくれる存在として。

 番組では次女の三奈と仲良く阿川佐和子のインタビューに答えていたが、家庭人としての長嶋は、野球人長嶋のように順風満帆ではなかった

 『週刊文春』(1/15号、以下『文春』)は、この番組で長男の一茂について触れられなかった理由について報じている。

 以前は長嶋のスケジュールなどは一茂の妻が社長を務める「ナガシマ企画」が取り仕切っていたが、一茂が父親の記念品や愛用品を売り飛ばしたことが発覚して、二人の間に亀裂が生じてしまった。そのため、いまは三奈が代表を務める「オフィスエヌ」が仕事や資産を管理している。

 先の件で三奈と一茂の仲もこじれて修復できない状態にあると『文春』は書いている。

 そんなこんながあって、巨人の球団代表特別補佐だった一茂が野球解説をしている日テレではなく、熱心にオファーを出していたTBSに三奈が決めたようだ。

 長嶋にはほかに長女と次男がいるが、長女は結婚して家を出ているらしく、全くメディアには出てこない。

 次男は長嶋から聞いた話では、運動神経なら一茂以上だが、背が高くないのと動体視力にやや問題があるので、野球選手にするのは諦めたそうだ。

 雑誌の対談でゴルフのジャンボ尾崎と対談をしてもらったとき、長嶋が尾崎に「ゴルファーにしたいのだが」と相談したことがあった。長嶋も子を持つ親なんだなと思ったが、その後、息子はF1レーサーを目指しているという話は聞いたが、ゴルファーという噂は聞いたことがない。

 長嶋家最大の謎は、東京五輪のコンパニオンだったとき知り合い、わずか3か月の交際で電撃結婚した亜希子夫人と長嶋の夫婦関係であろう。長嶋が家で倒れたとき、もっと早く発見して入院させていれば、ここまで重症化することはなかったという医者が多くいた。

 夫人とは別居していたと報じたのは『文春』(2007年3/1号)だった。亜希子夫人の友人はこう話している。

 「亜希子さんは(長嶋が倒れる約1年前の)03年1月にバリアフリーのマンションを買い、そこで暮らしていました」

 理由は、彼女には膠原病の持病があり、広くて階段のある田園調布の豪邸で生活するよりマンションのほうが便利で病院にも近いということだったようだが、それだけだったのかという噂は消えることがなかった。亜希子夫人は2007年9月18日、64歳の若さで亡くなってしまうのである。

 長嶋の太陽のような表情のうちに秘められた悲しみの色を見るのは、私だけだろうか。

 いまでも思い出す長嶋の姿がある。74年10月14日、後楽園球場。私はバックネット裏から双眼鏡で長嶋の姿をじっと見ていた。入団以来憧れ続けてきた長嶋の引退式。

 数か月前、『週刊現代』編集部の先輩にかかってきた長嶋からの電話に偶然出た私は、思わず「長嶋さん、やめないでください」と叫んで編集部中の顰蹙(ひんしゅく)を買った。

 試合が終わり、長嶋がピッチャーズマウンドに置かれたマイクに歩み寄る。双眼鏡が涙で曇り長嶋の姿がぼやけて見える。「巨人軍は永久に不滅です」。そう言い終えてグラウンドを一周する長嶋がときどき立ち止まり、ハンケチで涙を拭う。

 記者会見にも出たが、長嶋の顔を見て泣いているだけだった。あの日から40年以上が経つが、あの日の青空と長嶋の後ろ姿をはっきりと覚えている。かつての野球少年にとっていつまでも「長嶋は永久に不滅」なのである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 新年早々フランスの新聞社がテロリストの標的になる事件が起き、波乱の予感を感じさせる未年である。景気の先行き、テロ事件、天変地異、不安要素はたくさんあるが、長嶋茂雄のように前向きに生きていきたいものです。今週はスキャンダル3本立て

第1位 「オリコン1位アイドル『仮面女子』の性接待」(『週刊文春』1/15号)
第2位 「22歳『大和なでしこ』を1ヵ月も監禁暴行した『インド人』の無法地帯」(『週刊新潮』1/15号)
第3位 「氷の炎上 安藤美姫に元婚約者父が『きちんと説明して』」(『週刊文春』1/15号)

 第3位。年末年始のテレビに出まくっていた元フィギアスケーター安藤美姫(27)だが、彼女は自分が思っているほど“人気”があるわけではないようだ。
 その理由は、新しい恋人のフィギュアスケーター、スペインのフェルナンデスを公表したことと、元日にインスタグラムに投稿した愛娘と彼との3ショット写真だと『文春』は書いている。
 要は、テレビが起用しているのは彼女の「スキャンダル」がいまのところ賞味期限内であるからだというのだ。
 「正月が終われば減るはず」(放送作家)だというが、さらに不可思議なのは、彼女が一時、一緒に暮らしていた元フィギュアスケーターの南里康晴(29)との仲はどうなったのかということだ。
 南里はメディアから追いかけられたとき、赤ん坊の父親は私ではないと言いきっていたから、本当の父親が誰かは知っていたに違いない。知っていながら彼女をかばっていたのだから、近い将来結婚するものと周囲も南里の親も思っていたに違いない。
 “糟糠”の彼氏をあっさり捨てて外国男に走るなんざあ、大和撫子のやることじゃあるまい。南里の父親がこう話す。

 「ひとつのステップにケジメをつける前に次のステップにっていうのは都合が良すぎる。次の人と幸せになりたいんだったら、ちゃんと説明せんと。雲隠れしているならともかく、あんなに自分から表に出てきているのに何にも無しってのは大人としてダメでしょうが」

 その通り。今度は南里の衝撃告白が『文春』に載るかもしれない。

 第2位。年明けの1月2日、インド東部のコルカタで起きた日本人レイプ事件は、大きな衝撃を与えた。
 『新潮』によれば、被害者は22歳の女性で、昨年11月20日にコルカタを訪れ、日本語で話しかけてきた旅行ガイドを装ったインド人たちと知り合った。
 彼らは北部のブッダガヤなどに彼女を連れて行き、1か月近くにわたって監禁して集団レイプをしていたのだ。
 犯人は5人。現金約14万円も奪っている。その村では「外国人が来ている」と噂になっていたらしいが、誰も助けに来てくれはしなかった。
 彼女の容体が悪くなったので医者に診てもらうために犯人が連れ出したところ、隙を見て逃げ出し、警察に話して事件となった。
 痛ましい事件だが、地元では「日本の女性は詐欺師のカモ」だと言われているぐらい、多くの日本人女性が彼らの毒牙にかかっているようだ。
 インド在住のジャーナリストがこう語る。

 「インドではほぼ毎日、レイプに関する報道があると言っても過言ではない。その中には、外国人が餌食になる例も少なくない。2013年3月には、夫と一緒に自転車で旅行していたスイス人の女性が集団レイプされるという事件もあった。また、警察官が警察署内で女性をレイプするなど、警察機能が欠落した地域も多く存在しているのです」

 この背景にはカースト制度と根強い女性蔑視の風潮があると『新潮』は指摘する。
 いまでもインドでは夫に先立たれた女性が再婚することは許されない。私は明るくて歌とダンスのすばらしいインド映画が好きだが、こうした現実を知ると、いままでのように無邪気に見てはいられなくなる。
 インドにも第2、第3のマララさんの出現が待たれる。

 第1位。私はまったく知らないが、秋葉原・万世橋のたもとにアイドルグループ「仮面女子」の常設館があるという。
 写真を見ると仮面をかぶったAKB48のようである。今年元旦に発売されたCD『元気種☆』はインディーズレーベルながら予約販売枚数が13万枚を超え、週間オリコンチャートの第1位に輝いたという。
 AKB48もそうだが、こうした若い娘たちを使って稼ごうとする人間のなかには、しばしば彼女たちの性を食いものにしようとする輩がいるものである。
 『文春』によると、ここの池田せいじ社長(37)もその一人だという。彼は新宿や大阪でホストクラブを立ち上げたが、スキャンダルが相次ぎ、芸能事務所の運営をするようになったそうだ。
 今回、社長に肉体関係を迫られ、仕方なく結んだと告白しているのは現役、元メンバーの4人の女の子たちだ。生々しい性接待の実態は『文春』を読んでいただくとして、興味深いのはこうしたグループを無批判に取り上げ、人気グループに押し上げてしまうメディア側の問題が提起されていることである。
 NHKは2013年6月21日に『ドキュメント72時間「“地下アイドル”の青春」』を放送して彼女たちの知名度を全国的にしてしまうのである。
 だが、ここで描かれている「貧乏生活」は社長からの指示で“やらせ”だったというのだ。六畳間に4人が共同生活を送り、自炊をしながら成功を夢見て暮らすというお決まりのパターン。
 告白によると、彼女たちは自炊などせず、元コックのマネジャーがいて寿司や中華をつくってくれる。メンバーのほとんどが実家暮らし。月収1万円もウソで月平均10万円、高い子は20万円はあるという。
 おまけに脱退すると言うと、違約金として中には数百万円を要求されることもあるというのだ。
 ほかに騙されたのは『スーパーJチャンネル』(テレビ朝日系)、『Nスタ』(TBS系)、『有吉ジャポン』(TBS系)などなど。
 テレビ局に取材力を求めること自体無理なことは承知だが、これでは佐村河内守(さむらごうち・まもる)事件と変わらないではないか。
 池田社長は取材に対して、性接待もやらせも否定。違約金の件だけはノーコメント。
 現役や元メンバーの訴えをファンたちはどう聞くのだろう。もはやこれまで同様に無邪気に聞く気にはなれないはずだと思うが、いまのガキたちは「そんなことはこの世界では当たり前じゃん」と歯牙にもかけないのかもしれない。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 2014年3月、『鉄腕アトム』の新作アニメが子どもたちの人気を呼んだ。といっても、これは日本の話ではない。手塚プロダクションが制作に関わっている「公式」のアトムだが、放送されたのはアフリカのナイジェリアである。タイトルは『ロボットアトム』。「悪者」は登場するが、10万馬力で敵を叩きのめす痛快な姿はそこにない。想定される視聴者層は未就学児であり、日本でいえば『しまじろう』などのように、お友だちとのコミュニケーションに主眼が置かれた内容となっている。キャラクターデザインも、日本のアトムよりいくぶん幼い。

 かつてお茶の間で老若男女を楽しませたアニメも、国内では市場がジリ貧という状態である。世界中で「クール」なコンテンツとして評価されているのはご存じの通りだが、動画サイトなどの影響もあり、実際のところ輸出額が減っている。先進国は日本と同様に不況と少子化にあえいでおり、いま以上のアニメの売り込みの見通しは暗いのだ。そこで、最近ではアフリカが新規市場として注目されている。『ロボットアトム』が放送されたナイジェリアの人口は、アフリカで最も多い。ここで成功することは、今後のアニメのビジネス展開にとって大きな指標になるはずだ。

 生まれ変わった「アトム」の制作にあたっては、現地の民放「チャンネルズTV」の局員が、「研修」のため来日した。これは、アニメという重要な文化の伝播ともいえる。「日本初」の連続テレビアニメであった『鉄腕アトム』。今度は「アフリカ初」として、次なる章が始まっている。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 今から20年前の1995年1月17日。明石海峡を震源とする大地震が発生。のちに阪神・淡路大震災と呼ばれるこの災害は、近畿3府県に甚大な被害をもたらし、とくに兵庫県神戸市では地震による建物の倒壊、火災などによって多くの尊い命が奪われた。

 地震や津波、噴火などの自然災害が起きると、人的被害もさることながら、暮らしの基盤である住宅にも深刻な被害を受ける。

 阪神・淡路大震災の最終的な被害(全国)は、死者6434名、行方不明者3名、負傷者4万3792名。住宅被害は全壊10万4906棟、半壊14万4274棟、一部損壊が39万506棟にも及んだ。

 自然災害が起きて激甚災害に指定されると、災害救助法に基づき、国庫負担で仮設住宅が建設される。この時も、翌2月から兵庫県、大阪府の18市11町に約4万8300戸の仮設住宅が建設された。ただし、仮設住宅への入居期間は、原則的に2年間と定められている(阪神・淡路大震災では、入居期限の延長が繰り返され、最後の被災者が仮設住宅を出るまでに5年を要した)。当時、阪神・淡路大震災は過去に例を見ないほど被害が甚大だと言われており、復興に時間がかかることも予想された。そのため、住宅を失った被災者から公的補償を望む声が上がるようになったのだ。

 そして、被災者への公的補償を望む署名活動が全国的に展開されたことを受け、震災から3年後、1998年5月に「被災者生活再建支援法」が成立。自然災害が起きたときに住宅に被害を受けた被災者への公的補償が確立した。

 ただし、住宅はあくまでも個人の持ち物だ。国は公費で私有財産を補償しない姿勢を貫いており、同法は、自然災害によって生活基盤に著しい被害を受けた人に対して、自立した生活を始めるための支援という位置づけとなっている。

 対象となるのは、自然災害によって住宅が全壊したり、半壊になったりした人。もらえる支援金は(1)基礎支援金(住宅の被害程度)、(2)加算支援金(住宅の再建方法)から構成されている。

(1)基礎支援金(住宅の被害程度に応じて支給)
   全壊/100万円
   大規模半壊/50万円
(2)加算支援金(住宅の再建方法に応じて支給)
   建設・購入/200万円
   補修/100万円
   賃借(公営住宅以外)/50万円

 阪神・淡路大震災の被災者には、同法は適用されていないが、復興基金によってほぼ同条件の支援金が支給された。そして、その後も、東日本大震災を含めた地震や津波、台風、豪雨などで住宅を失った被災者への支援が行なわれ、制度開始から2014年8月までに、21万3001世帯に、約3300億円が支払われている。

 このように、阪神・淡路大震災を契機に、自然災害によって住宅を失うと国から一定の補償は受けられるようになったが、その額は最高でも300万円だ。住宅を再建したり、転居したりするのに十分な額とはいえず、自助努力での備えも必要だ。地震、津波、噴火などの自然災害で住宅に被害が出た場合、通常の火災保険では補償されないので、地震保険の加入を検討したい。

 とくにリスクが高いのは、住宅ローン返済中の人だ。地震や津波、豪雨などで住む家を失っても、住宅ローンが消滅することはなく、返済し続けなければいけないからだ。被災して住めなくなった家のローンを払いながら、新しい家を建てたり、借りたりする費用を捻出するのは大変で、大きな災害のたびに住居費の二重負担が問題となっている。

 20年前の阪神・淡路大震災を契機に作られた被災者生活再建支援法によって、当面の生活費の確保はできるようになった。しかし、長い目で見ると、決して十分なものとはいえない。

 地震保険に加入したり、手持ちの貯蓄を増やすとともに、日頃からコミュニティの力を蓄えておくことも、災害への備えとなるだろう。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 弁当箱をキャンバスに、キャラクターなどを食材で描き出す「デコ弁」(「デコレーション弁当」の略)。かつては「こんな細かいところまで表現するなんて」という新鮮な驚きがあったものだが、いまや専用の型抜きが市販されるなど、一般に普及している。簡単なレベルなら試してみたママも多いだろう。そして、遂には二次元から三次元へ進化(?)。近頃では、キャラが立体化した「デコ鍋」なるものが登場しているのだ。カンタンに作れる料理の代表、鍋物の概念が、根底から覆っている。

 ネット上に画像がアップされている「デコ鍋」の印象といったら、さながら「デコレーションケーキ」である。きれいな「デコ」も、食べ始めてしまえばすぐに消えてなくなるという儚さも、ケーキのようだと言えはしまいか。子どもが喜ぶ一瞬のために時間をかけて準備する、その愛情には頭が下がる。ちなみに、カゴメなど、企業のホームページにデコ鍋の作り方を掲載している例も見られる。この冬のブームが、来年以降も定着するや否や。ただ、ここまで来ると、「食べ物で遊びすぎ」といった拒否反応も出ているようだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 ロシア通貨・ルーブルの下落がロシア経済を苦境に立たせている。ルーブルの対ドル為替レートは1年前の2014年1月初めには、1ドル=33ルーブル前後で推移していた。ところが、12月16日には一時約80ルーブルまで暴落。その後、約59ルーブル(2015年1月5日現在)まで戻しているが、それでも1年前の半分の水準だ。

 ルーブル安の背景には、ウクライナ情勢を巡る欧米諸国の対ロ経済制裁が影響を与えていることがある。しかし、なんと言っても大きいのは、原油価格の急落だ。ロシアはサウジアラビアに次ぐ世界第2位の原油生産国で、輸出額の約7割が原油と天然ガス。ロシア経済にとっていわば「米びつ」なのだ。

 こうした原油安、ルーブル安、米欧の経済制裁は三重苦となってロシア経済を窮地に追い込んでいる。

 通貨安がもたらすのは輸入品の高騰だ。インフレ、物価高で国民の間に不満がたまれば、プーチン政権の基盤が揺らぐのは必至だ。プーチン大統領は記者会見などで「最悪の場合、経済的な困難から脱するため2年間が必要かもしれない」と語り、ロシア経済について、「全治2年」との見方を示している。プーチン政権からは、経済回復に向けた具体的な処方箋は示されていない。

 つい最近まで「資源高」で我が世の春を謳歌していたロシア経済だが、大きな落とし穴が待ちかまえていた。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 2011年に福岡ソフトバンクホークスから米国大リーグへと渡った「ムネリン」こと川崎宗則内野手(33)によって、多くの野球ファンへと浸透していった造語。

 「スタメン」が「スターティングメンバー」の略であるのに対し、「スタベン」は「スターティングベンチ」の略。つまり、平たく言ってしまえば「補欠」のことを指す。

 川崎選手は試合中、たとえスタベンであっても常に自分の最高のプレイをイメージしつつ独特のストレッチで身体を温め、いきなりでも出られる準備を……というよりは、すでに試合に出ている感覚をキープし続けているのだという。「オレなんて補欠だし……と暗い気持ちになるより、オレ補欠だけど試合には出てるぜ……と気分的に盛り上がっているほうが絶対にハッピーだし」(本人談)。

 スタベンでくさるわけでもなく、かといって「チームさえ勝てれば自分は補欠だってかまいません」的な優等生を気取るわけでもない、案外ニュータイプのプロ団体競技選手なのではなかろうか? ちなみに筆者が某草野球チームの監督をやっていたころ、試合の日に10人以上のメンバーが集まってしまったとき、こういうメンタルを持つヒトが采配上では、正直一番ありがたかった。

 あと、筆者のファーストミットには川崎選手からもらった直筆サインが。スタベンでくさりそうになったときはいつもこのサインを見ながら、みずから進んでスコアブック係を買って出るのであった。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


<<前へ       次へ>>