「
戦後のベビーブームで生まれた『団塊の世代』(中心は1947~49年生まれの約664万人)は、高度経済成長期の60年代に青年期を迎え、以来、経済成長の労働力を担ってきた。
他の世代に比べて人口が極端に多く、ありあまるマンパワーで良くも悪くも社会、経済、文化に大きな影響を与え、日本を背負ってきた。
その団塊の最後尾の49年生まれが今年65歳を迎える。社会保障を支えてきた世代が、完全に『支えられる世代』となって、若い世代に重い負担を強いることになるため、
『日本社会の不良債権』とさえ呼ばれている」(『週刊ポスト』4/18号より、以下『ポスト』)
私は1945(昭和20)年生まれだが、小学校と高校で2度結核にかかり休学しているため、社会人になったのは団塊第一世代と同じである。
人生に“たられば”はないが、もし病気をせずに順調にいっていたら、私の人生は少し違ったものになっていたかもしれない。45年生まれは極めて少数だから、一学級60人などというすし詰め教室ではなく、進学も就職ももう少し楽だったのではないか。同年生まれの有名人には吉永小百合とタモリぐらいしかいないが、小百合がサユリストという広いファン層を獲得したのは、団塊世代にとって“少し年上の可愛いお姉ちゃん”だったからではないか。
私は週刊誌の編集者が長かったが、現代、ポスト、文春、新潮の読者には団塊世代が圧倒的に多かったため、その世代が現役を退き始めると週刊誌の部数も低下していった。
日本の経済成長を支えてきたという自負は強くある世代だが、負の遺産も残していったこともたしかであろう。『ポスト』でも言及している年金の逆転現象もその一つである。
「団塊世代のリタイアで年金を支える側と支えられる側の人口ピラミッドは逆転した。現在、公的年金の純債務(積み立て不足)は厚生年金580兆円、国民年金110兆円の合計690兆円にのぼる。現役世代(15~59歳。約6600万人)で頭割りすると1人あたり約1000万円もの巨額の年金債務が残されたのだ」(同)
よくある指摘だが、何十年も給料から年金や税金をさっ引かれてきたサラリーマンとしては言い分もある。愚策しかやってこなかったお粗末な政治家や官僚たちの責任を、すべて同時代に生きた者たちに負わせるというのは納得しがたい。
また「戦後の日本社会の仕組みは、団塊の『衣食住』の欲求を満足させるためにつくられてきたといってもいい。そのために巨額の財政資金が投じられてきた」(同)ともいっているが、自分たちが生活している社会を少しでも住みやすくしようというのは、どの世代でも考えることではないか。
現役の70代の経営者は団塊世代をこう批判している。
「団塊と呼ばれる後輩たちの世代は、分かち合うより自分の生活向上を重視する。自己顕示欲が強く、会社には入っても、同期の人数は多いのに助け合う友人がいない。面白いのは、権力志向は強いけれども、意外に権力や地位に弱い。失敗すると自分は正しいと言い張って責任を部下に転嫁する。だから部下から信頼されない人が多かったように思う」
人数が多かったから人より目立たなくてはいけないという意識が強くなったのかもしれないが、このような人間はどの世代にもいるのではないか。
「戦前の世代にはなかった『反戦』『自由』を実践してきたことが団塊世代の誇りを支えている」(同)
敗戦以来68年間、憲法を遵守し直接的な戦争には参加せず、戦死者を一人も出すことなく平和を守り続けてきたという自負は、私にも強くある。
だから、この国を戦争のできる普通の国にしようという安倍首相らの企みには、徹底的に反対し、次世代にも平和国家を守り続けていってほしいと切に思っている。
『ポスト』は、学生運動に加わり資本主義体制打倒を熱く語っていたその学生たちが、大学4年の夏になると、自慢の長髪をばっさり切り、七三分けにして就職活動し、大企業の歯車となって自民党長期政権を支えてきたと難じるが、私にかぎっていえば、これまで1度も自民党に一票を投じたことはないし、変わり身の早さだけで生きてきたつもりもない。
だが、ファイナンシャルプランナーの畠中雅子氏の次の言葉だけは頷ける。
「団塊世代の夫は十分な収入を得てきたから、妻は専業主婦歴が長く、お金の使い方をよく知らない。年金生活を迎えるために家計を見直さなくてはとアドバイスしても、自分にとって嫌な話は聞いてくれません。夫婦の問題なのに、お金が足りないのは夫のせいだといって、共同責任という意識に乏しく、生活に対する危機感が薄い」
その通りである。カミさんに聞かせてやりたいね。
「もちろん団塊世代が高度経済成長時代の原動力であったことは疑いようのない事実だ。彼ら自身がそれを誇らしく思う気持ちは当然であり、彼らに支えられた上の世代、彼らに引っ張られた下の世代はその団塊パワーに感謝し、尊敬の念を抱いてもいる。だが、2014年の今、団塊世代が栄光とともにこの国に残していった負の遺産を検証し、清算すべき時期に来ているのではないか」(同)という指摘もその通りだと思う。
団塊の世代だけではなくすべての世代で、この国の形を公共工事一辺倒の土建国家から、福祉国家へと大転換させるためにどうするのか、真摯な議論と実践が今こそ必要なこと、いうまでもない。
最後に「団塊」という言葉の生みの親、堺屋太一氏がこう話している。
「今や団塊世代を核とする高齢者は人口全体の30%を占める巨大なマーケットになりつつあります。
にもかかわらず、まだまだシニア向けの音楽、本、食事、洋服、スポーツ、習い事教室などのモノやサービスは不十分です。
そこで、団塊世代が、自分たちの好きなものを同世代に向けて提供すれば、必ず大きなマーケットは生まれます。(中略)団塊の世代が働いて、団塊の世代がおカネを使う。65歳以上で『需要』と『供給』が回り出すだけでも、今後10年で日本経済は少なくとも10%の成長が見込めます。逆に、団塊の世代が意識を変えて動き出さなければ、日本経済の成長はない。
団塊の世代は、永年の努力で『金持ち、知恵持ち、時間持ち』になれたのです。気儘に生きましょう」
力の入った企画だが、最後に堺屋氏を出したことで、語るに落ちたと思わざるをえない。
団塊世代にはカネをやるな、もっと働かせろ、持っているカネを搾り取れというのは自民党や官僚たちの大方針である。その手には二度と乗らない。そう心に決めているのもこの世代なのである。
元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3 今週は渦中の人間たちを直撃し、問い詰めたり、追い落としたりしたスクープ記事を紹介しよう。
第1位 「8億円が『選挙資金』でないなら詐欺だ!」(『週刊新潮』4/10号)
第2位 「全メディアが追う渦中の人 『小保方晴子』博士直撃の一問一答!」(『週刊新潮』4/10号)
第3位 「中山美穂独占直撃!『夫・辻仁成と離婚の話し合いをしています」(『週刊文春』4/10号)
第3位。『文春』がパリで
辻仁成と離婚かと騒がれている中山美穂を直撃取材し、「(離婚報道について)ここまで大きな騒ぎになるとは思っていなかったんです。ただ、(夫・辻仁成と)
離婚の話し合いはしていますよ。それはもうお互いのことなので……」といわせている。
第2位。
STAP細胞“事件”の主役・小保方晴子さんは4月9日、堂々と記者会見を開き、持論を述べたが、その“彼女”をいち早く見つけ、写真撮影とインタビューに『新潮』が成功した。
小保方さんは神戸市内に隠れていた。その彼女が理研へ「お出まし」になる姿をばっちり撮っているのだ。
理研の調査委員会の最終報告発表を翌日に控えた3月31日、『新潮』によれば、その“お姿”はこうである。
「濃紺のニット帽でロングヘアーを覆い隠し、マスクを着けた、変装姿の小保方博士である。
もっとも、世を忍ぶはずの彼女は、こういう非常時にもお洒落を忘れない。春めいた桜色のコートに身を包み、お気に入りのガーリー系ブランド、ヴィヴィアン・ウエストウッドの花柄のトートバッグを携えたハデめの出で立ちで、理研の研究室に向かったのである」
彼女はこのとき、『新潮』のインタビューに答えて
「STAP細胞に捏造はない。大きな流れに潰されそうですけど」と答えている。信念の人ではあるようだ。
第1位。これも『新潮』の2週続けてのスクープで、
渡辺善美みんなの党代表は、ついに代表の座を降りざるを得なくなってしまった。 それは彼に8億円を貸した吉田嘉明(よしあき)DHC会長のこの言葉が決め手になったのであろう。
「私にも惻隠の情がありますので、渡辺さんに議員辞職までは求めませんが、せめて党首を辞してもらいたい。(中略)もし、それができないのであれば、詐欺罪での刑事告訴も辞さない覚悟です」
渡辺氏の裏にはまゆみ夫人というオッカナイ女性がいて、亭主を意のままに操り党の運営にまで口を出していたという。代表辞任で
夫人からも三行半(みくだりはん)を突きつけられるのではないかと噂されているようである。