1:【(フランス)souffl▼eちょん▼】
《ふくらんだ、の意》卵白などを泡立てて加え、ふんわりと仕上げた菓子や料理。チーズスフレなど。(ジャパンナレッジ「デジタル大辞泉」)

2:「すっぴん・フレンド」の略語。ここ数年のメイク技術の劇的進化や、ファッション雑誌やビューティ雑誌による、美に対する過剰な煽動的啓蒙によって、もはや“すっぴんを他人に見せることができなくなった人たち”(女性だけではなく、スキンケアや美白や眉毛の手入れが当たり前となった男性も含む)が、すっぴん同士で、まったりと本音を語り合える男女関係のこと。

 夫婦、彼氏・彼女といったステディーな関係ではない異性に一度すっぴんをさらしてしまえば、得てして利害関係が絡みがちな同性のフレンドより、かえって何でもあけすけに打ち明けることができるのだそう。

 主に女性側の自宅や、その近所にあるファミレスだとかで行なわれることが多く、そこから「ソフレ」へと発展することも、ままあったりする。

 

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   



 味わいでも、値段でも、秋の味覚の頂点に君臨するのは茸の王様、松茸である。京都では「つ」が促音になって「まったけ」と呼ばれる。赤松林に生えており、傘が開くと芳香があっというまに飛んでしまうので、蕾状の傘が地表に見えたか、見えないかという時宜を得てとるところがベテランのわざ。 埋もれた「まったけ」の脇に棒を突っ込み、ぐっと盛り上げるようにしてから手で優しく揺すると、ころりと採れる。採れたては色が白く、空気に触れると、見慣れたやや黒ずんだ茶色へと変わっていく。

 10月半ばの出盛りは、傘がやや小ぶりで「コロ」と呼ばれている。コロは、「まったけごはん」によく合い、昆布でじっくりと炊きあげた丸煮もおいしい。盛りのころになったら、土瓶蒸しか、焼きまったけが格別だろう。土瓶蒸しは、石突きの部分を落として縦に切ったら、海老、銀杏(ぎんなん)、鱧(はも)などの食材と一緒に土瓶に入れ、やや濃いめのだしでゆっくりと炊きあげる。食べる前にすだちを加えた豊かな香りとすっきりした風味は、忘れられない食の記憶として残るはずである。

 日本のおいしい松茸産地として知られるところは、ほとんどが信州以西である。そのためなのか、京都の子どもから大人まで、こぞって「まったけ」を好む思い入れの強さは、東日本の人には過剰に見えるかもしれない。とはいえ、京都人の「まったけ」好きは筋金入り。平安末期の説話集『今昔物語』にも登場する。説話では、強欲な荘園(しょうえん)の管理職であった地頭(じとう)が、谷底に落とした松茸を命からがら拾いにいくというような話である。

 明治時代までは「地山(じやま)の松茸」と呼ばれた京都産が、ほうぼうで収穫されていたという。1844(天保15)年に出版された『重修本草綱目啓蒙』(小野蘭山著)によれば、伏見稲荷の神山・稲荷山産の「まったけ」を絶賛しており、ほかに西賀茂、嵯峨、松尾産と、京都を囲む山々で、まったけ狩りを楽しんでいた。

   

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 10月8日、東京・三鷹市で私立高校3年生でタレントの鈴木沙彩(さあや)さん(18)が、かつての交際相手・池永チャールストーマス容疑者(21)に殺された事件。池永容疑者は京都出身、フィリピン人の母親と日本人の父親を持つハーフで、日本国籍を持っている。

 『週刊文春』(10月24日号、以下『文春』)によれば、二人の出会いは2011年の秋。池永は立命館大学の学生だとプロフィールを偽り、フェイスブックで沙彩さんと知り合い、遠距離恋愛が始まった。

 沙彩さんと池永の交際は1年弱。彼女から別れを切り出したが、池永のほうは未練たっぷりで、よりを戻したいと彼女に付きまとっていた。

 今年6月、沙彩さんの父親が池永に、娘に連絡をしないでくれと通告しているが、上京してきた池永は沙彩さんへのストーカー行為をやめなかった。そのため8日の朝、両親と一緒に三鷹署へ相談に行っている。

 しかし、池永容疑者はその日の昼頃、鍵のかかっていなかった2階の窓から鈴木さん宅に侵入し、1階にある沙彩さんの部屋のクローゼットの中で身を潜めていたのである。

 「その暗闇の中からスマートフォンを操作し、A君(池永の友人=筆者注)らに無料通話アプリ『LINE』を通じて、次々と唐突な文言を送り始める。
 〈ふんぎりつかんからかなりストーカーじみたことをしてる〉(中略)
 その後も、立て続けに池永からのメッセージがA君のスマホに表示される。
 〈元カノの家の押し入れにて〉
 〈誰がいるかわからないんだ〉
 〈普通にでようども鉢合わせしたら終わってまう〉(中略)
 十四時三十分。池永からのメッセージは次の一言で途切れた。
 〈詰みだわ〉
 約二時間後、沙彩さんが学校から帰宅。前述の通り、沙彩さんはこの日朝、両親と三鷹警察署を訪れ、池永によるストーカー被害を相談したばかりで、彼女が三鷹署員から帰宅確認の連絡を受けたのが十六時五十一分。約二分後に通話が終わると、クローゼットを飛び出した池永は、刃体約十三センチのペティナイフを手に、制服姿の沙彩さんを強襲したのだった」(『文春』)

 逮捕された池永容疑者は取り調べに対し「交際をめぐり恨んでいた。殺すつもりで刺した」と供述しているという。

 彼は沙彩さんを殺したばかりではなく、さらに卑劣なことをしていたのである。『週刊ポスト』(10月25日号、以下『ポスト』)は、事件の6日前、インターネット上に彼女の写真が何枚もアップされていたと報じている。

 「沙彩さんの自宅の部屋のなかで、ベッドの上や大きな鏡の前で撮られていた。背景に写っている壁には、画家である母親の作と思しき絵が飾られている。沙彩さんは、笑顔や、すましたような表情、時には恥ずかしそうな表情を浮かべて写っていた」

 さらにその2日後、沙彩さんが映っている動画も投稿されている。殺されたばかりではなく、写真や動画まで晒された彼女は“2度殺された”ことになるのではないか。

 『ポスト』によれば、振られた腹いせに元恋人の裸の写真や映像をネットに投稿する行為は「復讐ポルノ(リベンジポルノ)」といわれ、世界的な問題になっているという。この10月、米カリフォルニア州議会では、嫌がらせを意図してヌード写真をネットに流通させた者には、最大で6か月の禁固か1000ドルの罰金を科す法案を成立させた。

 ストーカー法(ストーカー行為等の規制等に関する法律)は2000年に作られた。『遺言─桶川ストーカー事件の深層』(新潮社)にくわしいが、女子大生が付きまとわれていた男に殺される事件が起き、当時『フォーカス』の清水潔(きよし)記者が執念の取材で犯人を突き止め、事前に被害者が告訴していたことを隠そうとした埼玉県警の不祥事まで暴いたのがきっかけである。

 しかし、その後もストーカー殺人は後を絶たない。法を生かす警察側の積極的な運用が必要な時期だと思う。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 希望の光に向かって駆けてゆくヒロインたち……。9月28日に最終回を迎えた、NHK連続テレビ小説『あまちゃん』。小ネタが多すぎるとの意見もあったが、宮藤官九郎(クドカン)の脚本は登場人物すべてを展開に「活かし」、愛すべきリアルなキャラクターとして「生かした」、骨太な内容であった。その世界観にどっぷりつかった視聴者たちは、たいせつな15分間が去ったことで喪失感に襲われたという。「あまちゃんロス症候群」、いわゆる「あまロス」と呼ばれる現象だ。

 関連して語られることが多いのは、あまロスの「克服法」。たとえば、東北への観光、東京でのロケ地巡りなどは能動的で楽しいことだろう。インドア派には、クドカンの他の作品、特にテレビドラマ(映画の場合、劇団出身の彼は良くも悪くもとんがってしまうことが多い)に手を出してみるのがオススメだ。太巻役の古田新太(あらた)、鈴鹿ひろ美役の薬師丸ひろ子も怪演する2002年のドラマ『木更津キャッツアイ』は、「死」を扱いながら決してありきたりなお涙頂戴に終わらない展開。『あまちゃん』で「震災」を取り上げつつも、決してメランコリックにならず、ゆえに一段深い感動を呼び起こしたこととリンクするのだ。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 労働基準法では、会社の都合で一方的に従業員との雇用契約を打ち切ることを禁止しており、解雇するには相応の理由が求められる。そこで、人員整理をするために、多くの企業は早期退職制度などを導入している。

 中には希望退職に応じない従業員もいるが、そうしたリストラ対象者を自己都合退職に追い込むための特別部署が「追い出し部屋」だ。

 正式名称は「キャリア開発室」「人事部付」など企業ごとに様々だが、彼らに決まった仕事は与えられない。いたたまれなくなって、従業員自らが自主退職するように仕向けるために押し込めておく部署となっている。

 こうした追い出し部屋は、厚生労働省も問題視しており、今年1月にはパナソニック、シャープ、ソニー、NECなどの電気メーカーのほか、生命保険大手の朝日生命保険の合計5社の実態調査が行なわれた。

 追い出し部屋をもつ企業は、この5社だけではない。ここ数年、労働法に抵触して、パワハラ、セクハラ、長時間労働など、労働者の権利や雇用を守らない悪質な企業や法人を総称して「ブラック企業」と呼ぶようになっている。今年8月、NPO法人アジア太平洋資料センターなどが主体となって「第2回ブラック企業大賞2013」が発表された。その中で、追い出し部屋が理由で「教育的指導賞」を受賞したのが教育産業大手のベネッセコーポレーション(旧・福武書店)だ。

 ベネッセでは、人事を担当する人財部の中に「人財部付」をつくり、他部署を回って雑用をもらってくることを命令。仕事の大半は段ボールの片づけなどの単純作業で、社内に自分の仕事はなく、退職するしかないと思い込ませる場所として設置されたという。

 ベネッセ側は「『人財部付』は退職を勧めるための場ではない」と主張したが、2012年8月、東京地裁立川支部は、ベネッセの追い出し部屋について実質的な退職勧奨として違法な制度と判断した。

 もしも、自分が追い出し部屋に押し込められたら、すぐにでも辞めたいと思うかもしれないが、そこで「一身上の都合で」と辞表を書いてしまったら相手の思うツボだ。会社都合退職と自己都合退職では、退職金も雇用保険の失業給付も大きく変わってくる。労働問題にくわしい弁護士やユニオンなどに相談して、納得のいく解決法を探るようにしたい。

 

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 雑誌などで目にする「女子力アップ」というのも、話は案外複雑だ。「美人ならばモテる」のかというと、本人にどうにもモテようとする気概がなく、「残念な美人」も多い。そもそも「モテる」ことが「うざい」、恋に興味がないわけではないが、面倒なのもイヤ、というタイプも少なくない。逆に、モテたいのに「スキがない」ので、どんどん縁遠くなっているタイプもいる。十人十色な彼女たちだが、共通するのは、モテている女子を尻目に、「どうして自分はアレじゃないの」という不満足感だ。

 ルックスどうこうではない、「女子力」としか言いようのない能力がこの世にはあるらしい。「かわいくしたり」「甘えたり」することがなぜうまくできないのか。女性であるにもかかわらず「女子」というスキルを発揮できない自分とは何なのか……。そうしたさまよえるアイデンティティーに悩む「こじらせ女子」が話題だ。ライター・雨宮(あまみや)まみ氏の著書『女子をこじらせて』(ポット出版)をきっかけにクローズアップされるようになった。

 「こじらせる」という言葉は、近年、「童貞をこじらせる」のように、いまいち脱皮できない男性について(多少なりとも情をもって)使われる機会が多かった。女性も「こじらせる」というのは、若い男性には驚きであったろうし、少なからぬ女性たちには「自分だけじゃない」という安堵の気持ちを与えただろう。マスコミで多用される「おたくタイプ」「腐女子」などのわかりやすい記号だけでは、現代人を読み解けないことがよくわかる。


 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 安倍晋三首相が、政権の外交・安全保障政策のキーワードとして盛んに用いているのがこの「積極的平和主義」。

 その意味するところは「国際協調主義に基づき、積極的に世界の平和と安定に貢献する国にならねばなりません」(安倍首相、10月15日、臨時国会での所信表明演説)ということらしい。

 日本が「一国平和主義」から脱し、国連の「集団安全保障」の枠組みに、これまで以上に積極的に参加していこうというわけだ。具体的には自衛隊による国連平和維持活動(PKO)などを念頭に置いている、とされる。

 積極的平和主義をめぐっては、「集団的自衛権の行使」にまで踏み込んだ考え方だとの指摘もある。

 集団的自衛権とは、同盟国が攻撃された際に、自国への攻撃と見なして反撃する権利のことを言う。政府は現在、憲法9条との兼ね合いから「国際法上権利は保有するが、憲法上、行使できない」との立場だ。安倍首相は集団的自衛権が行使できるよう、そうした政府の憲法解釈の見直しに強い意欲を示している。

 安全保障は日本の行方を左右する重要な問題だ。国会でしっかり議論してほしい。

 

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


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