12月13日は事始めで、昔は煤払いをこの日にする風習があったそうだ。しかし、年越しまでにまた汚れてしまうこともあり、もっと押しつまってからするのが当たり前になったようである。そして、年末の大掃除といえば、次に散髪とくる人も多いだろう。京都の人なら「「かんかん(髪)」もずいぶん伸びたし、年(とし)越さんうちに「じょりじょり(床屋)」いっとこか」といった感じである。

 昔ながらの趣のある床屋さんは、必ずといっていいほど四辻(四ツ角)の一角にある。そして、床屋の隣には銭湯が建ち並んでいることも多い。これは京都だけのことではない。なぜだろうか。

 「四辻の床屋」というのは、地域の自治組織の成り立ちと関係した来歴のある場合が多い。江戸期以降に見られるようになった町の形態で、地域の区画の中心にある四辻の角地を町会の共有地とし、そこに町用人(ちょうようにん)を住まわせ、町内全体の管理人としていた。町用人は町の年寄の配下にあって、公儀からのお触れを町人に知らせたり、祭や仏事に必要な道具類の保管を任されたりしていたという。その町用人の多くが髪結いを生業とし、普段は町内の会所で髪結床を営んでいたそうである。

 いまも祇園祭の山鉾を維持管理している鉾町には、このような髪結床の名残のある会所に、山鉾や飾り物を保管している地域がいくつかみられる。また、松原通麩屋町(ふやちょう)付近の元床屋さんの建物には、「祇園床(ぎおんどこ)」という屋号が現在も掲げられたままになっている。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   



 鹿児島県指宿(いぶすき)市生まれ。鹿児島県立指宿高等学校、早稲田大学教育学部卒業。1980年、テレビ朝日に入社し、政治部に配属される。58歳。

 『ニュースステーション』の政治解説で知名度が上がった。その知名度を利用して2016年7月に行なわれた鹿児島県知事選に出馬し、保守王国で自民党、公明党県議団などの推薦を受けた現職の4選を阻み、8万票以上の差をつけて当選した。

 爽やかな印象と地元には九州電力の川内(せんだい)原発があるため、「反原発」の姿勢が有権者から好感を持って受け入れられたと言われていた。

 だが、『週刊文春』(12/15号、以下『文春』)は「三反園〈裏切りの反原発知事〉『公選法違反』の重大疑惑 収支報告書の虚偽記載と後援会幹部との“絶縁”」という特集を組み、三反園知事の反原発の姿勢は選挙向けで、本音は違っていたと追及している。

 『文春』によると、当初は共産党系で反原発グループの平良行雄(たいら・ゆきお)が立候補を予定していたが、告示前に三反園と政策合意ができたため平良が出馬を見送り、三反園支援に回ったことで三反園優勢の流れができたという。

 当選直後には二度にわたり、九州電力に対して川内原発の即時一時停止を求める強い姿勢を見せたが、九電が頑として受け入れないため、10月末の記者会見で「私がどう対応をとろうとも、九電は稼働させていくことになる」とトーンダウンしてしまったのだ。

 私も新聞で読んで、何というだらしない男だろうと、正直、ガッカリした。テレビ上がりは一見、威勢よく見えるが、シンがないから、大きなものには立ち向かえないのだろうと思っていた。

 だが、実はこれはポーズだけで、三反園はハナから原発再稼働容認だったのだと『文春』が証言を集め、断じている。

 「十月に入ると、自民党県議との非公式協議で三反園氏が『原発政策のめざす方向性は自民党と同じ』と発言したことが波紋を呼びました。将来的には原発に依存しない社会を目指すとはいえ、自民党は原発を重要なベースロード電源と位置付け、原発再稼働を推進していく方針です」(自民党鹿児島県連の関係者)

 さらに複数の元選挙スタッフを取材すると、「三反園氏は以前から有力支援者には『私は保守であり、反原発ではない』と明言していました」と口を揃えたそうだ。

 何のことはない「化けの皮が剥がれた」だけで、そもそも選挙民にはウソをついていたということになる。

 選挙中、後援してもらった会長をはじめ、支援者たちを当選後には遠ざけたそうだ。

 恩を仇で返したばかりでなく、選挙期間中、公職選挙法に抵触することが複数あったと『文春』は報じている。

 まず、選挙期間中に選挙事務所を4か所も設置していた(鹿児島県知事選の場合は2か所を超えて設置することはできない=鹿児島県選挙管理委員会)。

 選挙事務所に選挙スタッフを常駐させ、運転手やスケジュール管理をする秘書を手配したのは沖縄の実業家だそうである。

 秘書の給与は大阪の派遣会社が支払っていたという。

 実業家は選挙期間中合計100万円を運転手の個人口座に振り込んでいるが、選挙運動費用収支報告書には一切記載されていない。運転手はこの事実を認め、秘書を含む3人で分けたと話している。

 新しく三反園のブレーンになった参議院議員の元秘書は『文春』に対して、上限を超えて選挙事務所を設置するのはどこの選挙でもやっていること、収支報告書に記載していないという指摘はもっともだから、「素人集団だったね」とバカにして結構ですと、ふざけた返答をしている。

 さらに彼は、鹿児島市内で京セラや九電のグループ会社とともに太陽光事業を展開していて、「九電とのパイプ役として(利権の)色眼鏡で見られるのは仕方ないかもしれない」とも語っているのだ。
 『文春』を読む限り、鹿児島県民はひどい知事を選んでしまったものだと同情を禁じ得ない。

 それだけ原発利権に群がる勢力の力が強く、タレント知事など手もなくひねられてしまったのだろうが、原発がらみでもっとひどい話がある。

 『週刊現代』(12/24号、以下『現代』)が「総額4兆円をドブに捨てる21世紀の大バカ公共事業 巨大な赤字に!『第2もんじゅ』のずさんな計画書〈スッパ抜く〉」という特集を掲載したのである。

 高速増殖炉「もんじゅ」は、血税を総額1兆2000億円も注ぎ込んで、国民の大きな批判を受け今年9月に廃炉という方針が政府内で決定したはずだった。

 ところが『現代』によると、10月から3回行なわれた「高速炉開発会議」で延命策を書き連ねた「計画書」が文科省によって示され、

 「いつの間にか、『もんじゅの延命』『次世代の高速増殖炉=第2もんじゅの開発』という方針が既定路線とされたのだ。『廃炉決定』の報道は何だったのか」(『現代』)

 この会議は世耕弘成(せこう・ひろしげ)経済産業大臣が主催している。それに文科省大臣、日本原子力研究開発機構理事長の児玉敏雄、電気事業連合会会長で中部電力社長の勝野哲(さとる)、三菱重工社長の宮永俊一という5人で構成されているそうだ。

 何のことはない、原発推進、もんじゅ稼働賛成の人間ばかりではないか。これでは結論ありきの談合会議である。

 このとき配られた文科省の資料には、平成36年までに運転を再開、44年まで出力100%で運転を続けると書かれてあったという。

 建造してから30年あまりも経つのに、たった1か月ほどしか発電していない無駄の塊のようなものを、まだ動かすというのだから、この連中の頭の中を疑う。

 さらに今後稼働しても、売電収入はたった約270億円で、それにさらに5400億円以上を注ぎ込むというのだ。なのに誰からも「おかしい」という声が上がらなかったという。ふざけるな、である。

 いくら巨大プロジェクトでも、権益が複雑に絡み合っていても、無駄なものは無駄、即刻止めるべきだ。

 たびたび冷却材のナトリウム漏れの事故を起こし、東日本大震災直前の10年には、3.3トンの中継装置が炉内に落下して、担当の課長が自殺している。

 こんな大事なことを国民の目から隠して、たった5人、それも利害関係者ばかりで決めるなどあってはならないことだ。

 安倍政権の奢り以外の何ものでもない。だが大新聞はほとんど報じないのはなぜか。

 安倍よ、奢るな! そう叫びたくなる週刊誌の底力を見せた国民必読の記事である。

 経産省は福島第一原発事故を起こした東電に事故処理をさせているが、廃炉費用は膨らむばかりである。

 その経産省がこのほど、処理費21兆5000億円のうち15兆9000億円を東電に負担させる方針を出したが、残りを全国の電気利用者、つまり国民から集めると言いだしたのだ。「経産省幹部は『資本主義の原則を曲げたのはわかっているが、福島のためだ』と語っていた」(朝日新聞12月10日付より)

 東電を国有化して電力事業と事故処理の2社に分け、全額負担させるのが筋である。

 なぜそんなことができずに、国民へ負担ばかり押し付けるのか。

 国民の堪忍袋の緒が切れそうになっていることに、安倍首相は気付くべきである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 芸能界やスポーツ界の薬物汚染はとどまるところを知らない。若手俳優の成宮寛貴(なりみや・ひろき)がコカインを吸引している疑惑があると先週の『フライデー』が報じた。成宮側は「事実無根」だ、訴えると息巻いていたが、第2弾が出たとたん、芸能界を引退してしまった。
 自分で「クロ」だと認めたようなものだ。もちろん薬に溺れる人間が悪いのだが、簡単に薬物が手に入る現状を断ち切らないと、こうした「悲劇」はなくならない。「一度ぐらい」が命取りになる。どげんかせんといかん。

第1位 「【スクープ撮】共演後輩アナの自宅に泊まった男性アナ〈30代〉は記者に深々と頭を下げ… テレ朝“清純派アナ”田中萌(25)『グッド!モーニング』不倫」(『週刊文春』12/15号)
第2位 「成宮寛貴『コカイン要求』生々しい肉声データ」(『フライデー』12/23号)
第3位 「国会議員が『議員年金復活』を企んでいる」(『週刊ポスト』12/23号)

 第3位。『ポスト』の怒りの告発。
 安倍首相は年金法改正の必要性を「世代間の公平を図るのに必要だ」と言ったが、ならば、法案審議の最中に今国会で動き出した「議員年金」復活計画は、議員と国民の公平を図るのに必要なのかと『ポスト』は追及する。
 議員年金は「役得年金」との批判が多くあり、小泉政権下の06年に廃止された。
 地方議員の年金も、民主党政権下の11年に、全ての地方議員に特権年金があるのは世界でも日本だけ、国民生活と乖離した悪しき制度として、国会の全会一致で廃止が決まった。
 だが年金審議の最中に、全国都道府県議会議長会の連中が首相官邸や自民党本部を訪ねて、議員の年金加入を求める決議を渡した。
 議員年金がないと市町村議員へのなり手が少ないからというのが、その主旨だそうだ。
 年金がなくてなり手がいないのなら、そんな志の低い人間はいらないと思うのだが、そうではないらしい。
 日本の地方議会は、平均年80日程度しか開かれていないという。兼業も多く、フルタイムで働いてはいない。
 そんな連中に国民が年金保険料の5割を税金で負担して厚生年金に加入させる必要はないと思うが、タネを明かせば、地方に旗を振らせて国会議員も便乗して厚生年金に入れるようにしようという魂胆なのだそうだ。
 国民の年金を削って自分たちの年金は復活させようなんて、ふざけるなである。

 第2位。俳優・成宮寛貴のコカイン吸引疑惑の追及第2弾。『フライデー』だ。
 この情報は成宮のコカイン・パシリをやらされていた友人A氏が、これ以上付き合っていると、自分の身が危ないと考え、『フライデー』に持ち込んだものだ。
 A氏によれば、11月8日の夜9時頃、六本木にあるレストランの個室で食事をしている時、成宮からコカインを買ってきてくれと言われ、「店の外に出て、路上にたむろする外国人の売人からコカインを購入」(『フライデー』)したという。
 これほど簡単に手に入るというのか。買ってきたコカインを店の中で、慣れた手つきで砕き、吸い込んだそうだ。
 コカインは頭文字を取ってチャーリーという隠語で呼ばれるそうだ。
 『フライデー』は、成宮とA氏がチャーリーについてしたやりとりを「肉声データ」として持っていると言っている。
 本人はじめ所属事務所は、事実無根、法的手続きも辞さないと息巻いているようだが、『フライデー』は、まだそのような動きは何もないとしている。
 これだけの薬物疑惑を報じられた成宮が、身の潔白をどうやって証明するのか。できなければ、俳優人生に終止符を打つことになるかもしれない。
 そう思っていたら、早々に成宮は芸能界から身を引いてしまった。
 成宮はFAXをメディアに送り、自筆で「今後これ以上自分のプライバシーが人の悪意により世間に暴露され続けるとおもうと、自分にはもう耐えられそうにありません」と言い、「今すぐこの芸能界から消えてなくなりたい。今後芸能界の表舞台に立つ仕事を続けていき関係者や身内にこれ以上の迷惑をかける訳にはいかない。少しでも早く芸能界から去るしか方法はありません」として引退を決意したという。
 プライバシーとは、コカインだけではなく、同性愛を指すようだが、身の潔白を証明しないで早々に引退してしまうのでは、これから生きていくのは大変だと思う。

 第1位。流行語大賞のトップ10入りした「ゲス不倫」だが、ベッキーも本格的な芸能界復帰がままならず、「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音(かわたに・えのん)は、その後も『文春』に未成年アイドルとの交際&飲酒を報じられ、活動休止に追い込まれてしまった。
 不倫の代償は大きいが、それだけによけい燃えるのだろう。今週も『文春』のモノクログラビアを飾っているのは、テレビ朝日の朝の顔である人気女子アナと、同じ番組に出ている男性アナの不倫カップルである。
 田中萌アナ(25)は昨年、明治大学政治経済学部を卒業し、入社1年目で『グッド!モーニング』のサブMCに抜擢された局期待のホープだそうだ。

 「そのルックスと天然な発言からファンも多く、彼女の加入で視聴率も伸びたと言われています」(同局関係者)

 不倫相手は入社10年目の中堅アナ・加藤泰平(33)で、スポーツ実況に定評があるそうだ。朝、彼女のマンションから出てきて、マスクを外してタバコを咥えている写真が載っているが、なかなかのイケメンである。
 この2人のただならぬ関係は、周囲にはだいぶ前から知られていたという。
 『文春』が2人を目撃したのは11月25日、金曜日。1週間の放送を終えた番組スタッフ十数名が、午後7時から銀座で打ち上げをした後、店の外へ出てきたときだった。
 仲間と離れて加藤をジッと見つめる田中のウットリした顔がバッチリ撮られている。
 店を出た一行は二次会をやるため、文京区にある老舗割烹料理屋へ向かった。しかし、テレビ局って毎週、こんなに派手な打ち上げをやっているのかね。いらぬお節介だろうが、誰が払うんだろう。貧乏雑誌の編集者としては、こんなところがとても気になる。
 日付が変わる頃お開きとなり、各々家路についた。田中アナはタクシーを降りると、自宅マンションに入る前に周囲をぐるぐる巡回したそうだ。
 マンションに入っても渡り廊下から下をのぞき込む。
 一方の加藤アナも、仲間と別れ自宅マンションに向かうと見せて、タクシーに飛び乗り、田中アナのマンションへ向かった。
 『文春』のクルーは金曜日の夜が逢瀬の日と見て、いくつかの場所に別れて張っていたに違いない。目論見通りでさぞかし彼らはワクワクしていたことだろう。
 加藤が田中の部屋から姿を現したのは7時間以上経った翌朝の午前8時過ぎ。
 だが好事魔多し。1週間後の金曜日の深夜、田中アナは青山のファミレスで番組のチーフプロデューサーらの前で、涙目で俯いていた。
 『文春』が2人の件でこのプロデューサーに取材し、驚いた彼が田中を呼んで「事情聴取」したのだ。
 皮肉なことに、12月1日に2016年新語・流行語大賞の授賞式が行なわれ、『グッド!』から『文春』はインタビューされていたという。担当ディレクターはこんな質問もしたそうだ。

 「次の文春砲はいつですか?」

 『文春』が発売された朝の『グッド!』に2人の姿はなかった。2人は局を辞めざるを得ないかもしれない。やはり代償は大きかった。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   



 心ない者から不快な行動を受ける「ハラスメント」。「セクハラ」「パワハラ」はよく知られるところだ。最近の用法では、「スモハラ(スモークハラスメント、タバコに関したもの)」「ブラハラ(ブラッドタイプハラスメント、血液型で性格を決めつけられる)」など、これまであまり重くとられなかった対象もフォーカスするようになってきている。

 今回の「ヌーハラ」は何かといえば、ヌードルハラスメントのことだそう。これは昨今、日本を訪れる外国人観光客が急増していることと関係している。麺類には「すする」という文化があるが、これはわが国独特のもので、ふだん海外で暮らす者には「ズルズルッ」が不快だというのだ。では、今後気を遣って静かにラーメンを食べればいいのか? どうも極端な意見に感じられる。

 そもそも、すする音を気にしている外国人は、実際にどれくらいいるのだろう。海外では「食事中に音を立てる」ことはたしかにマナー違反だが、数ある国の中で日本に来るくらいだから、習慣も含めて日本の食文化を楽しむ余裕があるはずだろう。……などという議論が、2016年後半に活発化した。無下に否定するわけではないが、どうもこの件は、ツイッターなどで拡散したあやしい情報のようだ。外国人自身が積極的にヌーハラを訴えている例は、少なくともSNS上ではとんと見かけない。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 12月12日、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加している日本の陸上自衛隊に、新任務である「駆けつけ警護」の実施が可能になった。

 駆けつけ警護は、紛争地域に駐留する国連司令部の要請を受け、武装勢力に襲われた国連職員やNGO職員、他国軍兵士などを保護する任務。2015年9月19日未明に成立した安全保障関連法で、PKO協力法が改正され、紛争地での自衛隊の武器使用の拡大が認められたことで可能になった。

 紛争地で活動する自衛隊の武器使用について、自分自身や共に行動する仲間の身を守る正当防衛と緊急避難を超えるものは、憲法で禁止する武力行使にあたるとして、歴代政権では認めてこなかった。だが、昨年のPKO協力法改正で、防護する対象に「宿営地に所在する者」「保護しようとする活動関係者」が加えられ、任務を妨害する相手を排除する場合にも広げられた。

 そして、今年11月15日の閣議決定を受け、同月20日に新任務を付与された陸上自衛隊第9師団を中心とする派遣部隊が青森空港から南スーダンに出発したのだ。

 今回の駆けつけ警護は、首都ジュバ周辺に限定される予定で、(1)緊急の要請、(2)現地の治安当局や他国軍の歩兵部隊よりも速やかな対応ができる、(3)相手の規模や装備を踏まえ自衛隊で対応可能な範囲が出動要件だ。

 国は、派遣先のジュバの情勢が比較的安定していて、南スーダンでは停戦が成立していると国民には説明。11月15日の閣議後の記者会見で、安倍晋三首相は「自衛隊の安全を確保しつつ、有意義な活動を実施することが困難と判断する場合は、撤収を躊躇することはない」と発言した。

 一方で、南スーダンでは今年7月に大規模な衝突が発生し、停戦が崩壊しているという情報もある。

 PKOの筆頭任務は、現地の住民保護だ。戦闘が始まり、PKO基地に保護を求めてきた住民を守るためには、正当防衛ではなくても自衛隊も武器を取り、現地の政府軍や現地警察とも戦わざるを得なくなる可能性もある。その場合、他国との交戦を禁止している憲法9条に抵触してしまうのだ。

 さらに、PKOで起こった軍事的過失は、それぞれの国の軍法や軍事法廷で裁かれることになっているが、「軍」を持たない日本には、軍事的過失について裁く法律が存在しない。

 そのため、国の命令で参加した交戦であるにもかかわらず、自衛隊の過失は自衛隊員個人の犯罪として取り扱われるだけではなく、大きな国際問題に発展する可能性も大きい。

 つまり、駆けつけ警護は、国内的にも、国際的にも、まっとうな法的整備がされないまま、見切り発車されてしまったのだ。

 取り返しのつかない国際問題に発展させないためには、駆けつけ警護が抱える矛盾を、国民一人ひとりが理解し、原点に立ち返った議論をする必要があるのではないだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   



 村田沙耶香(むらた・さやか)の芥川賞受賞作『コンビニ人間』。近年は芥川賞が必ずしも売れ行きに直結しないが、本作は累計発行部数が50万部に至る堂々のベストセラーだ。もとより売れ行きは上々だったが、11月以降、さらに人気が加速した。そのブースター的役割を果たしたのが、トークバラエティ番組『アメトーーク!』(テレビ朝日系)である。11月10日に放送された「読書芸人」という企画の第三弾で、お笑い芸人たちがオススメの本を愛情を持って紹介したのだ。

 その影響力はすごい。番組中で取り上げられた平野啓一郎『マネチの終わりに』、尾崎世界観『祐介』、木下古栗(きのした・ふるくり)『グローバライズ』などが軒並み売れた。しかも、実際に読んでみるとたしかにおもしろかったとの評価が多いようだ。自身も作家であるピースの又吉直樹のみならず、出演者たちみんなの目利きぶりがうかがえる。

 これまでの放送がもたらした効果から、本のプロたる書店員たちも「読書芸人」に注目している。紹介された本は平積み(目立つように表紙を上にして重ねる)され、お墨付きのように芸人の名前が手書きポップにおどっている。番組では「本」だけでなく「書店の中を歩く楽しみ」も伝え、その意味でも不振にあえぐ出版業界にはありがたい存在である。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   



 中国は、2016年10月19日、中国人宇宙飛行士2人が搭乗した宇宙船「神舟11号」と、無人宇宙実験室「天宮2号」とのドッキングに成功した。

 中国・習近平政権が掲げるスローガンの一つ。宇宙開発を巡っては長らく米露がリードしてきたが、中国は2030年までに米露両国と並ぶ宇宙大国=宇宙強国になることを目指している。その意気込みは、今年から、毎年4月24日を「宇宙の日」に制定したことでもわかる。ちなみに1970年のその日、中国は初の人工衛星打ち上げに成功している。

 中国は「宇宙強国」のスローガンの下、今後も、人類初の月面裏側探査(2018年)、火星探査(2021年)、有人宇宙ステーション(2022年頃)など、数々の宇宙プロジェクトを推進する計画だ。また、独自の衛星測位システム「北斗」の全世界カバーも予定されているという。

 懸念されるのは、中国の宇宙開発が、平和利用だけでなく、軍事利用と深く関わっていることだ。

 例えば、前述の「北斗」は、軍の統合運用に不可欠なシステムである。そもそも中国の宇宙開発は軍の一部門が担当しているのだ。中国は2007年に自国の老朽化した気象衛星を弾道ミサイルで破壊する実験を行なったが、これは衛星攻撃兵器(ASAT)の軍事訓練にあたるとの見方が有力だ。

 米軍のシステムは、情報・偵察衛星はもちろん、全地球測位システム(GPS)、通信衛星など衛星に大きく依存している。中国がASATを実戦配備し、宇宙空間で衛星が次々と破壊すれば、米軍はお手上げ状態だ。アメリカの国防総省は中国の宇宙空間での軍事力増強に神経を尖らせているのはいうまでもない。

 日本は米国と同盟関係にある。中国を巡っては、南シナ海などでの「海洋進出」ばかりに関心が注がれているが、「宇宙進出」についても注意する必要がありそうだ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   



 都内にある某焼き鳥屋さんが、焼き鳥を串から外してシェアするお客に向け、「一生懸命一本一本刺しているんです、丁寧に焼き上げているんです」と苦言を呈したツイートをきっかけとし、急激に巻き起こった「串派?orシェア派?」論争のこと。

 このツイートが、串に刺したままの状態のほうが肉汁がこぼれにくい、肉が冷めにくい……などの具体的な“串のメリット”の説明がなかったということもあり、ツイート当初は「そんなの余計なお世話」的な意見が殺到し、炎上するかたちとなった。

 ちなみに、筆者の見立てによると、一番多かった(と思われる)論調は「基本的に串派だけど、大人数で焼き鳥を注文した場合は、全員に全種類が行きわたるよう、ついシェアしてしまう」といったもの。たしかに筆者も、たとえばせっかく一本だけ注文した大好物の砂肝を、他人にサクッと持って行かれたら内心イラッとするし、さらには「ハツもネギマもレバーもササミも食べたいなぁ……」みたいな欲も間違いなく湧き出てくるから、そういうシチュエーションにおける“シェア”は“最善”ではないけれど“次善の策”となってしまうのは、致し方なしかと考える。

 では「それでもお客さまには絶対に串のまま食べてもらいたい焼き鳥屋」はいったいどうすれば……? 答えは簡単。「盛り合わせ」というメニューをなくせばよい。「○○のヒトは手を挙げて」とマメにオーダーを聞けば、存分に自分の好きな一本を串のまま堪能する層も、ぐんと激増するはずだ。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


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