ポリオ(急性灰白髄炎)は、ポリオウィルスの感染によって発熱など風邪のような症状のあと、手や足に麻痺(まひ)が現れ、小児麻痺などの障害が残ることの多い病気だ。1960(昭和35)年に日本でも大流行したが、ワクチンの導入により下火となり、1981年以降、新しい患者は発生していない。ただし、アフリカやインドなどではいまでもポリオの感染が認められており、日本でもポリオワクチンは定期接種の対象となっている。
ただし、これまで日本で使われていたのは、ウィルスの病原性を弱めて作った生ワクチン(経口生ポリオワクチン)で、数百万件に1件の割合でポリオに感染した時と同様の健康被害が発生していた。先進諸国では、免疫を作るのに必要な成分だけを取り出し病原性をなくした不活化ワクチンの使用が標準なので、日本のワクチン行政は数十年遅れているといわれている。こうした状況を打開するために、市民団体や小児科医などが不活化ワクチンへの切り替えを望む運動を展開。その結果、日本でもこれまでの生ワクチンの予防接種は中止され、2012年9月から不活化ワクチンに切り替えられることになった。