中国副主席。11月に次期総書記に就くことが確実視されている。太子党といわれる共産党高級幹部子弟たちのグループに属し、共青団(中国共産主義青年団)と呼ばれるグループ出身の胡錦濤主席との間で熾烈(しれつ)な権力争いが繰り広げられていると、さまざまなメディアが報じている。
その証拠に、習の盟友であり次期常務委員入り確実と見られていた薄熙来重慶市党委員会書記が、妻・谷開来の英国人殺害と自身の不正蓄財の罪で失脚するという大事件が起こったが、これは胡と温家宝(首相)が仕掛けたのではないかと囁(ささや)かれている。
また、9月初旬から習が2週間にわたって表舞台から姿を消したことがさまざまな憶測を呼んだ。重病説まで流れたが、『週刊現代』(以下『現代』)の10/6号「日本人よ、戦いますか 中国が攻めてくる」では、習が校長を務める「中央党校」の始業式で胡時代を「失われた10年」と批判したために胡の怒りを買い、緊急常務委員会で「習近平はその場で自己批判を強要させられ、『当分の間の活動禁止処分』が下されたのだ」と報じている。
それに対して習側も黙ってはいなかった。全国的な「反日ムーブメント」を起こすことで、親日的な胡政権は誤りだったということを正当化し、胡一派を駆逐しようと目論んだと『現代』は見ている。
『現代』は10/20号「日本人よ、もう覚悟したほうがいい 中国は本気だ」のなかで、争いはさらにエスカレートしていると書く。胡が最後の手段を使って、総書記就任と同時に、習近平が中国人民解放軍を統轄する党中央軍事委員会主席のポストに就くのを阻止しようとしているというのである。
その手段とは中国共産党の憲法ともいうべき「中国共産党章程」の第18条(「18条規定」)の“非常事態”を適用することだと、政府の要人の居住区として名高い中南海に勤める官僚がこう語る。
「胡錦濤及びその一派としては、習近平後継を阻むには、もはやこの『18条規定』を適用するしか手段がないと考えているのだ。非常事態とはすなわち、“対日宣戦布告”に他ならない。当初、党大会は10月18日開催でほぼ決定していたのに、9月末になって胡総書記の鶴の一声で、20日間、先延ばししたのだ。これは非常事態へ持っていく時間を稼ぐためだろう」
軍を手放したくない胡が、反日に大転換してでも習に最終決戦を挑むと読むのだ。中国の権力争いのために対日戦争を仕掛けられてはたまったものではないが、江沢民前国家主席率いる上海派まで絡んだ中国内部の暗闘の行方は、中国経済以上に予断を許さない。