財政難から毎年、発行されている赤字国債だが、実は、わが国の財政法はその発行を認めていない。
そのため、政府は毎年、法律を新規に作って「1年間の特例」として赤字国債を発行している。2012年度一般会計予算では、約38兆円を赤字国債で賄(まかな)う算段だ。これは、歳入の約4割に相当する。
もっとも、12年度の特例公債法案は野党の反対により、通常国会では廃案になった。政府は、10月29日開会の臨時国会に特例公債法案を出し直す。財務省によれば、この法案が成立しない場合、「11月末には財源が枯渇する」という。
国の米びつが空っぽになる、というわけで、財布のひもも締めねばならない。政府は、9月から地方交付税の交付を一部延期するなど、予算執行の抑制措置(約5兆円)をとった。今後、法案成立が遅れると、医療費や生活保護費、治安面でも影響が出てくる可能性もある。
特例公債法案をめぐっては11年度予算でもひと騒動あった。当時の菅内閣退陣の取引材料に用いられたのだ。こうしたことから、野田佳彦(よしひこ)首相は、NHKテレビで「特例公債法案を毎年人質に取られ、内閣総辞職か解散を問われることを繰り返していたら、日本の首相は全部寿命が1年だ」とぼやいた。野田首相は、自民、公明両党に対し、特例公債法案と予算案の一体処理のルール作りを提唱しているが、そういう理由が背景にある。
与野党は、国民生活を優先してさっさと特例公債法案を成立させるべきだ。そうしないなら『責任政党』を標榜(ひょうぼう)しないでほしい。