白身魚や蒲鉾(かまぼこ)、海老(えび)、銀杏(ぎんなん)、茸(きのこ)などを器に盛り、そのうえにすり下ろした蕪(かぶ)をかけて蒸した後、別につくっておいた、くずあんやすまし汁をかけて食べる料理である。江戸時代の天保5(1834)年の『早見献立帳』(池田東籬亭(とうりてい)著)にはこのように書かれている。
 「かぶらむしは、かやくを入、うへへかぶらのおろしをたくさんに入てむし、くずあんをかけいだす。但しくずあんすこしからめにすべし」(『日本国語大辞典』より)
 京都のかぶら蒸しは、薄く塩を当てて湯通ししたぐじ(甘鯛)、穴子や鰻(うなぎ)の蒲(かば)焼き、百合根(ゆりね)、銀杏、椎茸(しいたけ)、生麩(なまふ)などを具に使う。蕪は4~5キログラムもある大きな聖護院(しょうごいん)蕪がよい。蕪は厚くむいておろし、つなぎのくず粉や卵白を混ぜ合わせるほうがおいしい。くずあんは、一番だしを醤油や塩でやや濃いめに味付けしてつくる。蕪と具を器に入れて蒸し上げたら、くずあんをかけ、仕上げに溶きわさびを添えてできあがり。寒い日にはなによりのごちそうである。


協力/割烹・和喜(やわらぎ、京都市左京区一乗寺)


   

京都の暮らしことば / 池仁太   


池仁太(いけ・じんた)
土曜日「京都の暮らしことば」担当。1967年福島県生まれ。ファッション誌編集者、新聞記者を経てフリーに。雑誌『サライ』『エスクァイア』などに執筆。現在は京都在住。民俗的な暮らしや継承技術の取材に力を入れている。
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