女優。広島生まれの27歳。デビュー当初はセクシーなグラビア・アイドルで売り出したが、2004年のTBS系ドラマ『世界の中心で、愛を叫ぶ』のヒロインに選ばれ、女優として注目を浴びた。
09年の映画『おっぱいバレー』の中学校臨時教師役で大ブレークする。やる気のない男子バレーボール部の顧問を引き受けた綾瀬は、部員たちを奮起させるために「試合に勝ったらなんでもする」と宣言。部員に「先生のおっぱいを見せてください」と約束させられてしまう。観客も固唾を呑んで彼女のおっぱい全開シーンを今か今かと待ち望んだが……。清楚な顔とFカップといわれるおっぱいの魅力で映画は大ヒットし、日本アカデミー賞優秀主演女優賞を獲得。
大阪城をお寺と勘違いしていたりする「天然ボケ」のところがあり、演技も「ダイコン」という評もあるが、私は『おっぱい』の前年に公開された『ICHI』での女座頭市の演技はなかなかのものだったと思っている。
12年11月に発表された「オリコン・スタイル」の調査で「女性が選ぶ“なりたい顔”ランキング」で1位を獲得。多くの雑誌の新年号の表紙やグラビアを飾り、主演するNHK大河ドラマ『八重の桜』も始まった。今年一番注目される女優である。
綾瀬が演じる山本八重(実物は男のようにガッシリした女性である)は幕末に福島県会津若松の砲術家に生まれる。会津藩は徳川幕府に最後まで忠誠を尽くし、戊辰戦争で薩摩・長州勢と戦って敗れる。
ドラマの冒頭、男装した八重が「ならぬことはならぬのです」といいながら向ける銃口の先には薩長がいる。幕末のジャンヌ・ダルクと称えられた八重は、戦の後、京へ移り住み、同志社大学の創設者新島襄(にいじま・じょう)と結婚する。夫の死後は日清・日露戦争に篤志看護婦として従軍し、今度は日本のナイチンゲールと呼ばれるようになるのである。
『女性セブン』(1/24号)は、綾瀬が「被災地(福島)の力になりたい」と強く思うのは、祖母から、彼女の姉が1945年8月6日に広島に投下された原爆で亡くなったと聞いたことが大きいと書いている。
続けて祖母は綾瀬にこう託したという。
「戦争なんか起こさんように、女性がしっかりせなダメなんよ。女性の力で戦争を起こさんいうことをせなダメよ」
頑固といわれる「会津っぽ」を主人公にした大河ドラマが、彼らがいまだに怨念を持っているといわれる長州人の末裔・安倍晋三が総理になった直後に始まったのは、NHKの先見の明か、歴史の皮肉だろうか。