GDP世界第3位を誇る経済大国の日本だが、その反面、貧困率も非常に高い。
ここでいう貧困率は、人間らしい衣食住の水準が保てない絶対的貧困ではない。世間では当たり前だと思われている人としての営み(親戚付き合いなど)が、お金がないためにできない生活水準にある相対的貧困だ。
1985年に12.0%だった日本の相対的貧困率は、小泉自民党政権で行なわれた構造改革や、リーマンショックなどによって年々上昇し、2009年は16.0%になっている。とくに、ひとり親家庭の貧困率は50.8%と高く、なかには生活保護基準以下の収入でギリギリの生活をしている人もいる。
しかし、「お金がなくて生活に困っている」ということは、友人などには相談しにくい。行政に頼ろうとしても、生活保護受給者への言われなきバッシングを見てもわかるように、日本では生活保護を受けることは制度的にも心理的にもハードルが高い。
その結果、本当に困っているのに誰にも相談できずに貧困に陥っていく「声なき貧困=サイレントプア」が増えている。
サイレントプアは女性に多いのが特徴で、相対的な所得の低さなどが影響している。その多くは、「頼れる親類がいない」「消費者金融などから借金をして多重債務に陥っている」「家族に病気の人がいる」など複数の問題を抱えている。また、夫からのDV(ドメスティック・バイオレンス)、教育、貧困の連鎖の問題も絡み合っている。貧困問題を解決するには、行政によるワンストップの支援体制の確立が必要なのは言うまでもないが、周囲の人の気づきも重要だ。貧困は他者に相談しにくい問題なので、「もしかして困っているのかも」と感じる人がいたら、周囲から手を差しのべる勇気をもちたいものだ。