今年2月、東京・杉並で認可保育所に入れなかった子どもの親たちが区役所前で抗議の「保活デモ」を行なった。
保活とは、保育所に子どもを入れるための活動。女性の社会進出や経済環境の悪化により、共働きをする家庭は増えている。しかし、都市部では認可保育所に入園を希望する子どもの数が定員を上回り、預けたくても預けられない待機児童問題が深刻だ。
子どもを預けられなければ、親は働くことができないため、早くから保育園に見学に行ったり、入園しやすいように引っ越したり、労働条件を変更するなどの保活が行なわれている。それでも、入園できない子どもは多く、全国で約2万5000人の待機児童がいるといわれている(認可外の保育施設を利用、保育園に入れず育休延長など、潜在的な待機児童は85万人に達するともいわれている)。
しかし、児童福祉法24条では、親が働いていたり、病気をしていて子どもの面倒を見られない場合は、保育所で預かることを市区町村に義務づけており、本来なら待機児童がいることが違法なのだ。
かつて非正規雇用やパートタイマーで働く人の多くは、夫に養われる妻だった。しかし、経済界の都合のよいように労働法制の変更を繰り返した結果、その対象は家計を支える男性にも広がっている。いまや全労働者の3分の1が非正規雇用という状態で、その74%が年収200万円以下となっている(平成23年有期労働契約に関する実態調査(個人調査))。
夫の収入で家族みんなが生活できて、妻は家事や子どもの面倒を見ていればいいという時代はとっくに終わっている。妻も働かなければ生活できなくなっているのに、待機児童問題はこれまで放置されてきたのだ。
保活デモは、行き場のない母親たちがやむにやまれずに行なった行動だ。その悲痛な叫びに、国や行政はいつまで「財政難」というまやかしの逃げ口上を繰り返すのだろうか。
いくら経済成長を唱えても、子どもを大切にしない国に未来はない。