本名は堀江貴文(たかふみ)(40)。ホリエモンは愛称。福岡県八女市(やめし)生まれで東大文学部中退。株式会社ライブドア元代表取締役社長。

 2004年に大阪近鉄バファローズを買収しようとして一躍注目を浴びる。2005年にはニッポン放送の最大株主となり、乗っ取りではないかと騒がれた。フジテレビがニッポン放送株を取得して防いだが、その際、フジテレビ側が支払った金額は1400億円といわれている。

 同年の総選挙で広島6区から無所属で出馬して落選。2006年に証券取引法違反容疑で逮捕され、懲役2年6か月の実刑判決を受け収監された。

 長野刑務所に服役中も『週刊朝日』(以下『朝日』)で「ホリエモンの獄中記」を連載。3月27日に仮釈放されたとき、96キロ近くあった体重が67キロ近くにまで痩せていたことで、『週刊新潮』(4/11号)が「『刑務所レシピ』大研究」なる特集を組んだ。

 そのなかで『ニッポンの刑務所30』の著者でフォト・ジャーナリストの外山ひとみさんは、いまの務所メシはいいと、こう話している。

 「かつてはクサい飯と言われた麦飯も、今では食物繊維が豊富な健康食とされるし、受刑者の高齢化を意識して減塩が進み、l日の塩分量が7.5グラムになるように気を使っている刑務所もあります。脂っこいメニューも減って、唐揚げもあまり見なくなりました。朝6時半ごろ起床し、食事時間は7時、12時、16時20分ごろと決められ、平日は朝食と夕食の間は、30分の運動時間を除いて刑務作業で、21時には就寝。メタボが解消するのもわかりますね」

 『朝日』(4/12号)のインタビューで、これからやりたいことは「宇宙事業。ロケット開発に全力で取り組みたい」と話している。

 彼のメルマガは月額840円で読者は1万人以上といわれるが、それでも年間1億円程度にしかならない。どこにそんなカネがあるのだろうか。

 また彼は「世の中で起こっていることを端的に解説する記事が載ったニュースサイトが必要なんです」といっている。ブログやツイッターを使って「世の中をよくするために必要な情報や意見を発信していくメディア」をつくりたいらしい。

 『朝日』は政治家・堀江への待望論があると煽(あお)りたてている。どこにそんなものがあるのかと私は思うが、本人はまんざらでもないようだ。

 ホリエモンは希代のトリックスターであろう。巨人軍独裁の旧態然としたプロ野球組織に楔(くさび)を打ち込み、楽天参入の道筋をつけたし、ニッポン放送買収劇は、既得権に安住していた日本のメディア界を震え上がらせた。

 私は、プロ野球買収のときと、メディアについてのシンポジウムの2度、彼と話している。長幼の序をわきまえた礼儀正しい好青年であった。

 ITバブルで稼いだアブク銭で大きく躓(つまづ)いたが、発想力、実行力はなかなかのものがあると、私は思っている。子どものなりたい職業で141位の政治家などに色気を出さず(ちなみに刺青師が140位だそうである)、日本のIT技術を高める分野でもう一仕事することが、“汚名”を晴らすことにもなるはずである。

 

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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