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 第88回NHK連続テレビ小説。脚本・宮藤官九郎(くどう・かんくろう)、主演・能年玲奈(のうねん・れな、19)。

 4月から始まった「あまちゃん」も6月末から後半の東京編がスタート。北三陸市で海女のアイドルになった天野アキ(能年)が、2009年夏日本各地のご当地アイドル代表が集まる「GMT(ジモトの意味)47」へ入るために上京して、奮闘する姿を描いている。

 かつてアイドルを目指したが挫折したため、アキの上京に強硬に反対する母親役に小泉今日子を配したことも、このドラマを骨太にしている。

 クドカン(宮藤の通称)の脚本が素晴らしい。北三陸市は架空の都市で、岩手県久慈市が舞台。小袖海岸の「北限の海女」や三陸鉄道北リアス線にまめぶ汁、80年代のアイドルソングにいまが盛りの「AKB48」をもじった「GMT47」を登場させるなど、現実の社会現象をドラマに取り込み、アキが成長していく姿を、切れのいいテンポで見せる。

 番組の中でアキが発する「じぇじぇじぇ」という言葉が流行語にもなっているが、小袖地区の海女たちが驚いたとき実際に使っている言葉だそうだ。

 主役の能年はいま時珍しい素朴さを感じさせる美少女。東北弁をうまく操るが『週刊新潮』(6/20号)によれば、彼女が生まれたのは兵庫県の中ほど、城で名高い姫路から電車で1時間弱の神崎郡神河町で、美しい川と清涼な水田が印象的な、民家もまばらな山間の地である。能年の母親が娘のことをこう語っている。

 「自分の好きなことをやってくれたらええと思ってきました。悪いことはしないとか、朝出かけるときはみんなに挨拶するとか、基本的なことは教えてきましたけど、全然厳しくなかったと思います。ただ貧しいから、欲しいからって与えられへん。“ピアノを習いたい”とか言ってたけど、それは“ごめんなさい”って。勉強はノータッチでしたけど、6年生のとき義務教育のシステムがわかってなくて、“中学校に上がられへん”と言って猛勉強したときもありました。服は好きで、2、3歳ごろから試着するのも嫌がらなくて、ファッションとか華やかなことには、元々興味があったんやろうなと思います」 

 温かな家庭でのびのび育ってきたことが窺える。

 私事だが、朝の連ドラ(私たちの世代はこういっていた)を見るのは何十年ぶりだろう。一番覚えているのは1964年の「うず潮」(主演・林美智子)と1966年の「おはなはん」(主演・樫山文枝)である。

 その頃は1年通しでやっていた。学校に遅れるわよと母親に怒られながら、終わると同時に家を飛び出したことを懐かしく覚えている。

 「うず潮」は作家・林芙美子の小説を題材に、「おはなはん」は作家・林謙一の母がモデルで、苦難に耐え、明るくたくましく生きていく女性の生涯を描いたものである。

 「うず潮」は平均視聴率30.2%、最高視聴率は47.8%であった。

 もっとすごいのが1983年の「おしん」(脚本・橋田壽賀子、主演・小林綾子)。平均視聴率52.6%、最高視聴率62.9%。テレビドラマの最高視聴率を記録し「オシンドローム」といわれる社会現象を巻き起こした。

 そうした怪物番組ほどではないが「あまちゃん」は、視聴率20%超えを連発、久しぶりのヒットである。『現代』ではほぼ毎週「あまちゃん」が登場、『ポスト』は後半ネタバレ特集を組み、『文春』『新潮』も出演者の記事をピックアップするなど、週刊誌上でも熱い話題となっている。

 ドラマのクライマックスは2011年の東日本大震災になるそうだ。アキや北三陸の人たちがどうなるのかも、大きな注目点だ。

 『週刊現代』(7/6号)で、このドラマの音楽担当の作曲家・大友良英(よしひで)氏がこう話す。

 「宮藤さんは宮城県の生まれ。私は福島の人間で、3・11以後は震災の被害や、原発事故問題に向き合って来ました。(中略)でも人間、どんな辛いことがあっても、前を向いて幸せに生きていきたいじゃないですか。『朝ドラ』は夢の世界。その15分の間は、幸せな時間を過ごして欲しいですね」

 高度成長期やバブルが弾ける前は、どんなに苦しくても耐える女性のドラマが受ける。いまは現実が厳しいから、夢と笑いのあるドラマが受けるのかもしれない。

 

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読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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