2013年7月21日(日曜日)に投票が行なわれた参議院選挙。投票率は前回よりも5.31ポイント下がって52.61%、「戦後3番目」に低い投票率だった。
自民党が65議席(選挙区47議席、比例区18議席)を獲得して第一党に返り咲き、公明党の11議席(選挙区4議席、比例区7議席)と合わせて過半数を上回る135となり、参議院における“ねじれ”が解消した。民主党は結党以来最少となる17議席(選挙区10議席、比例区7議席)と惨敗。日本維新の会・みんなの党も議席は伸びず、共産党は5議席増の8議席と躍進した。
両院で圧倒的多数を占めた安倍晋三首相の動向に注目が集まっている。来年の消費税5%引き上げはあるのか。8月15日の靖国公式参拝はするのか。憲法96条を改正して憲法9条を含めた全面的な憲法改正に踏み込むのか。尖閣諸島問題で話し合いさえできない中国との関係はどうなるのか。
『週刊文春』(8/1号、以下『文春』)で、安倍首相の経済ブレーンである浜田宏一エール大学名誉教授と本田悦朗静岡県立大学教授は、共に「一気にプラス三%となる増税は慎重にすべき」だとし、本田教授は「いま、アベノミクスで希望が見えつつありますが、本当に一気にプラス三%となる増税に耐えられるのかは疑問です。まだ、駆け込み需要も含めた見せかけの数字に過ぎない。
日本は財政再建を真剣にやっているんだと内外に示しつつ、良くなりつつある景気の中折れを防ぐには、消費税を一%ずつ、五年間かけて上げていくというのが一番現実的です」と語っている。
だが、もしこれをやるとなると「新法」を制定しなくてはならない。去年苦労して三党合意をまとめた谷垣禎一(さだかず)総裁(当時)をはじめとする派閥領袖クラスがこぞって猛反発することが予想され、ことはそう簡単ではないという。
靖国神社参拝はどうか。『文春』は「参拝の時期に関しては総理自らが適切に判断されるでしょう」(安倍側近の衛藤晟一首相補佐官)と、判断を保留。『週刊新潮』(8/1号、以下『新潮』)も、さる官邸関係者に「彼は、2016年夏の衆参ダブル選挙で勝利した上での長期政権を目指しています。したがって、一歩間違えば命取りになりかねない『歴史問題』には、16年まで本格的に手を付けるつもりはありません」と言わせている。
だが、第1次政権時代、靖国参拝できなかったことは「痛恨の極み」と常々いっている安倍首相だから、政治ジャーナリストの山村明義氏のように「ラストチャンスは、10月17日から20日までの秋の例大祭です」と見る向きもある。
「真夏の選挙戦を制した安倍総理だが、靖国参拝に腐心し、身悶える、寝苦しい夏の夜はまだ続きそうだ」(『新潮』)
憲法改正については、公明党が慎重である。『新潮』で政治評論家の浅川博忠氏がこう解説する。
「創価学会の中でも、憲法九条の改正を絶対許さないという立場を取っているのが『婦人部』です。公明党は、護憲ではなく“加憲”という立場ですが、その中身は環境やプライバシーに関するものばかり」
安倍自民は公明党が改憲に賛同しない場合は、改憲に前向きな維新やみんなの党と手を組めばいいから、公明党は苦しい立場に追い込まれるかもしれないと『新潮』は見ている。『ニューズウィーク日本版』(7/30号)は、安倍首相が03年に歴史学者の中西輝政氏との対談で、地元山口出身の吉田松陰を尊敬し、「『これは正しい』という信念さえもっていれば、世の中から袋叩きになって、長い政治生命を保ちえないとしても、それを貫きとおさないとならない」と述べた言葉を引用し、参院選後から安倍の“本性”が現れると読む。
8月15日靖国公式参拝、消費税3%アップ、憲法改正の3つは安倍首相が正しいと信じていることである。だが、その彼の信念が中国や韓国関係をより悪化させ、アメリカとの同盟関係にもヒビが入るかもしれないのだ。安倍首相の政治家としての器がどれ程のものか、試されるのはこれからである。