厨房の冷蔵庫に入る、アイスケースの中で寝そべる、食材を粗末にして遊ぶ……。インターネット上に、バイト中の自分の悪ふざけを軽々にさらしてしまう行為、またはそれによる炎上事件を「バイトテロ」と呼ぶ(おそらく、細菌兵器を用いた「バイオテロ」から来ているのだろう)。清潔を是とする日本では、店舗の休店・閉店といった事態を招き、オーナーにとってはまさに「テロ行為」に近い。
現在のツイッターのスローガンは、「What's Happening?(何が起きてる?)」だが、かつては「What are you doing?(何してる?)」だった。いつどこにいても状況を発信して、仲間とつながり続けるためのツールゆえに、バイトテロは、もともと想定された使い方に沿ったものである。しかし、スローガンの変更が示す通り、ツイッターは実際にはオープンなネットワークだ。悪ふざけは見出され、アップされた写真をヒントに、名前などの個人情報が興味本位に暴かれる。バイト先を解雇になるだけでは終わらない。損害賠償の請求がありうるし、退学という事態は実際によく起こっている。
なぜ若者たちは悲劇的な結果を想像できなかったのか? 理由は簡単だ。「つぶやき」が「世の中に向けて開かれている」という認識がないのだ。ネットは見ても、興味のないニュースの見出しはクリックしない、これは別段珍しい人間ではない。見知らぬ世間様が、自分を「クリックする」とは想像できないわけだ。なんとなく友だちに「ウケたい」という意識がなければ、まじめにバイトをしていた可能性すらある。ツイッターは「バカッター」「バカ発見器」とも揶揄(やゆ)されるが、潜在的な「バカ」の表層化を「誘う」装置であるかもしれないのだ。