雑誌などで目にする「女子力アップ」というのも、話は案外複雑だ。「美人ならばモテる」のかというと、本人にどうにもモテようとする気概がなく、「残念な美人」も多い。そもそも「モテる」ことが「うざい」、恋に興味がないわけではないが、面倒なのもイヤ、というタイプも少なくない。逆に、モテたいのに「スキがない」ので、どんどん縁遠くなっているタイプもいる。十人十色な彼女たちだが、共通するのは、モテている女子を尻目に、「どうして自分はアレじゃないの」という不満足感だ。
ルックスどうこうではない、「女子力」としか言いようのない能力がこの世にはあるらしい。「かわいくしたり」「甘えたり」することがなぜうまくできないのか。女性であるにもかかわらず「女子」というスキルを発揮できない自分とは何なのか……。そうしたさまよえるアイデンティティーに悩む「こじらせ女子」が話題だ。ライター・雨宮(あまみや)まみ氏の著書『女子をこじらせて』(ポット出版)をきっかけにクローズアップされるようになった。
「こじらせる」という言葉は、近年、「童貞をこじらせる」のように、いまいち脱皮できない男性について(多少なりとも情をもって)使われる機会が多かった。女性も「こじらせる」というのは、若い男性には驚きであったろうし、少なからぬ女性たちには「自分だけじゃない」という安堵の気持ちを与えただろう。マスコミで多用される「おたくタイプ」「腐女子」などのわかりやすい記号だけでは、現代人を読み解けないことがよくわかる。