経済協力開発機構(OECD)が、2013年10月8日に発表した「国際成人力調査」(PIAAC: Programme for the International Assessment of Adult Competencies)で、日本は国別平均のトップになった。
本調査は、2011年8月~2012年2月にかけて、OECDに加盟する24か国・地域の16歳以上65歳以下の男女(約16万人)を対象に今回初めて行なったもので、「読解力」、「数的思考力」、「ITを活用した問題解決能力」の3項目の習熟度を測定した。
その結果、読解力と数的思考力で、日本はOECD平均を大きく上回って1位を獲得。ITを活用した問題解決力はOECD加盟国中10位だったが、総合では日本の成人が社会の適応能力がもっとも高いという評価を受けた。
参加国全体にいえる傾向として、読解力も、数的思考力も学歴が高いほど能力が高いが、日本、オーストラリアなどの中卒者の能力はアメリカやドイツの高卒者よりも高いという結果が出ている。それは、若いころの学業期間がかぎられていても、その後の訓練しだいで社会で必要とする能力を身につけられることを物語っている。
また、アメリカ、イギリス、ドイツなどでは、親の教育水準が低い子どもの読解力は、親の教育水準が高い子どもよりもはるかに低い。だが、日本、オーストラリア、スウェーデンなどでは、その差が小さく、教育政策しだいで能力の開発に大きな違いが出ることが証明されている。
OECDがこうした調査を行なった背景には、先進国の中で、経済成長を促すためには労働者の能力を高める必要があるという認識が広まっているからだ。雇用され、高い賃金を得るためには、こうした能力を身に着けることが不可欠だ。しかし、OECDの事務総長アンヘル・グリア氏が「あまりにも多くの人が取り残されている」と指摘するように、効果的な教育と生涯学習の機会が与えられていないのが世界の実情だ。
今回の調査でトップをとった日本も、諸外国に比べると教育費にかける公的支出は少ない。家庭の負担が重く、大学や大学院進学への家計支出は、OECD平均が30%なのに対して、日本は64.7%とワースト4位だ(OECD「図表でみる教育2012」)。親の経済力によって受けられる教育に差がつく今の状態が続けば、国際成人力調査のトップから転げ落ちるのは時間の問題だ。
日本政府は、今回の調査結果に満足することなく、他国の状況を分析し、他山の石として、今後の教育政策や生涯学習のあり方に生かす必要があるだろう。