『週刊ポスト』(1/1・10号)恒例の年末年始企画。フランス文化省から芸術文化勲章最高章「コマンドゥール」を受賞し“世界のキタノ”といわれているビートたけしが審査委員長。といっても彼一人だけで選んでいるのだが、“品格”はないが週刊誌の企画としては秀逸である。
昨年は「AVネーミング大賞」の歴代ナンバーワンを決定したが、腹を抱えるおかしなネーミングがあった。
たとえば、実録ヤクザ映画不朽の名作を元にした『前戯なき戦い』、巨大ホオジロザメが襲ってくるパニック映画の金字塔のオマージュ『床ジョーズ』、ベストセラー『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』をヒントにした『サオだけではなぜ満足しないのか?』など。
歴代ベストワンには『あしたのニョー』が輝いた。たけし自ら「あの名シーンが蘇るよ。『勃て、勃つんだ、ニョー!』ってね。前立腺も涙腺も崩壊する感動巨編」だと絶賛していた。
では今年はどうか。今回は頭に「妄想」とつけている点がこれまでと違う。
まずは今年の流行語になった滝川クリステルの「お・も・て・な・し」、予備校講師林修の「今でしょ!」、TBSドラマ『半沢直樹』の決めゼリフ「倍返し」、「じぇじぇじぇ」という能年玲奈の驚いたときの表現が流行語になったNHK朝のドラマ『あまちゃん』からお題を頂戴してAVのネーミングをつくっている。カッコ内はたけしの言葉。
「絶世の美女・滝川クリ●リスさんがあの手この手を使って男性委員を口説き落とす『クリちゃんのお・も・て・な・し』。(中略)“おもてなし(表無し)”ってぐらいだから、そうとうハードコアな裏ビデオのはずだぜ」
「現代文のスペシャリストが言葉責めでオンナをとろけさせる『イクなら今でしょ!』」
「視聴率40%超えの『半勃ち直樹』の『パイ返し』。(中略)オッパイ型の『パイ返し饅頭』なんて便乗商品がヒットしそうだね」
NHK朝ドラからは『ナマちゃん』が登場。「作品のクライマックスでは、“挿入歌”の『潮吹きのメモリー』が流れるはずだってね。“寄せては返す波のように~♪ 激しく~♪”ってか」
女性が乗っていた自転車のサドルばかりを200個盗んだ変態犯が8月に捕まり、35歳の無職男が「女性の匂いを嗅ぎたかった。盗んだサドルを家に持ち帰り匂いを嗅いだり舐めていた」と自供した事件を取り上げ、「エロのトレンドはドンドン細分化していかなきゃダメなんだよ」とたけしがいいながら『サドルを舐めたい』というネーミングをノミネート。
時事ネタからは猪瀬直樹都知事辞任のきっかけになった徳洲会からの5000万円借り入れをネタに、『イノセクンの5000マンお借りします』。(中略)人妻を一晩お借りして5000人斬りを達成する実録ドキュメントってことでさ。(中略)後で不貞を追及されると、“奥さんを貸してくれるなんて親切な人だと思った”という名ゼリフを吐くというオチなんだよ」
宮崎駿監督最後の長編作品『風立ちぬ』も俎上にあげられる。「シンプルに『カリ勃ちぬ』でいいんじゃない」。アニメで大ヒットした『進撃の巨人』からは「『進撃の巨チン』だって? そりゃあ迫力ありそうだな~。過去の名作『20センチ少年』を超える大器かも」
話題になったフジテレビの番組『ほこ×たて』からは「今年はやっぱりアレだな。放送中止になった問題番組『ソコ×勃て』だよ」
結局、たけし審査委員長の「第一回妄想AVネーミング大賞受賞作」は『サドルを舐めたい』に決定!
こうした“毒”のあるものをやらせるとたけしはうまい。
元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
上の「妄想AVネーミング大賞」もそうだが、今週は『ポスト』に見るべき記事が多かったので、同誌からベスト3を選んでみた。
第1位 「現役100人に聞いたヤクザ世論調査」
こうした企画は週刊誌でなくては出てこない。中でも安倍首相の評価を65歳の中国地方のヤクザがしている。「目が死んでる。線が細すぎる。死ぬ気でやってるとは思えない。本気で喧嘩が出来るようにも見えない」といっているのは的を射ている。
第2位 「この国を支配する知られざる≪公的差別≫の正体」
「なぜ4月に70歳を迎える人から医療費自己負担が2倍なのか? なぜ『男女平等』の世で年金支給は男65歳、女60歳なのか? なぜ災害見舞金は公務員が民間の3倍なのか?」と問う姿勢がいい。
第3位 「佐野眞一特別寄稿『猪瀬直樹君への手紙』」
20代の時から一緒に仕事をしてきた“戦友”が、自分の不徳を振り返りながら、猪瀬氏に「辞任せよ」(これが書かれたのは辞任前)と諭す。